本棚『ハワイ、蘭嶼[旅の手帖]』管 啓次郎 著(左右社、1700円+税)



本書はハワイと蘭嶼の二つの島を訪れた筆者の旅の記録である。

筆者は島について記された書物を携え、島を旅する。島の神話を紹介する書物は、眼前の地形に神話の出来事を思い起こさせ、島を舞台とする小説は、筆者が旅先で味わう食べ物や音楽、人々の遊びや衣服の模様に響き合う。筆者が旅する現在と書物に記される過去との往還を通じ、かつて海を越えて移り住んだ人々が多言語多文化を形作ってきたという島の記憶が掘り起こされる。

日常生活から空間的、時間的に切り離される「島旅」は、気晴らし以上の変化を人の心にもたらすと言う。海を渡る飛行機の中から眼前に迫る島を鳥瞰し、人は複雑な海岸線が形作られた途方もない時間の経過を目の当たりにする。近視眼的な日常の時間感覚を遥かに凌ぐ長大な時間を経てきた土地やその土地に住む人々の営みの変化を想像し、さらに土地の未来を思い遣る力を得ることが、「島旅」がもたらす心の変化なのだろう。

本書の表紙に描かれる世界地図の中程には、大陸と呼ばれる複数の大きな「島」に囲まれるようにして、日本という小さな「島」がある。この島の未来を想像する旅の導き手ともなる本である。

内藤まりこ・情報コミュニケーション学部講師
(著者は理工学部教授)

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