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本棚「アジアの企業間競争」佐々木 聡ほか 編著(文眞堂、2,800円+税)



本書は国際関係経営史と応用経営史の視点からアジアの企業間競争を論じたものである。国際関係経営史とは同一時点における複数国の産業間ないし企業間の相互作用を決定的に重視した経営史であり、応用経営史とは過去の事実を解析することを通じて現代の問題の核心と解決策を示し未来への展望を切り開く経営史である。この視点から日本とアジア諸国の複層的ビジネスモデル移転を数多くの産業・企業を取り上げることで浮き彫りにしている。日本のコンビニや二輪車産業などのアジア移転や台湾PC産業や韓国電子産業などの日本企業への移転、さらにはアセアンのLCC(低コスト航空会社)や韓国のエンターテインメント企業の日本市場への逆上陸などが分析されている。とりわけ佐々木聡著の青函地域における二つの中小企業の事例(第三章)は、地方の中小企業が独自な技術に依拠しながら積極的に海外市場を開拓していったビジネスモデルの移転例として興味深いだけでなく、今日の日本の企業生き残り策への重要な示唆となっている。

大石芳裕・経営学部教授(編著者も経営学部教授)