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本棚「なぜ疑似科学が社会を動かすのか—ヒトはあやしげな理論に騙されたがる」

石川 幹人 著(PHP研究所、800円+税)



本書を読むと、「疑似科学」をどのように見分ければよいのかがわかる。「疑似科学」は、科学的な説明のようであるが、科学ではない。これが、モノを買わせようとしたり、何らかの決定に従わせようとしたりし、あるいは、世の中の注目を集めようとしたりして使われることがある。多くの人が大学で学び始めた頃、「科学とは何か」という問題に接しているだろう。しかし、教室を離れると、「科学とは何か」を気にすることもなく、「科学的なもの」を科学であるかのように理解しているかもしれない。科学の理論には、論理性、体系性、普遍性がなければならず、そのデータには、再現性と客観性があり、理論とデータの相互作用には、妥当性、予測性がある。社会的営みとしての科学には、公共性、歴史性、応用性がなければならない。これらが科学の条件である。本書は、現在、大学で科学を学んでいる者に読んでもらいたい良書であるばかりでなく、仕事の中で科学に触れている者に自分の仕事の正当性を確認させる書物である。

出見世信之・商学部教授(著者は情報コミュニケーション学部教授)