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「次世代を育てる環境整備を」理事長 柳谷 孝

このたび、学校法人明治大学の理事長を拝命いたしました。理事長就任後、駿河台、和泉、生田、中野、八幡山等の大学施設を視察し、教育・研究活動の最前線に立つ教職員から本学の課題を聞いてまいりました。同時に、希望に満ち溢れたキャンパスライフを送る学生を目にし、将来有望な若者を世界で活躍できる人間に育てなくてはならないと、誓いを新たにした次第です。

さて、明治大学は、10年連続で一般入学試験志願者数が10万人を超えたことに象徴されるように、各分野で大きく飛躍を遂げました。18歳人口の減少とグローバル社会の到来を見据え、中野キャンパス開校、国際日本学部及び総合数理学部の設置、付属高等学校・中学校の調布移転と共学化、創立130周年記念施設整備計画の推進、スーパーグローバル大学創成支援事業の採択と、この10年あまり、ハード・ソフトの両面から改革を進めてまいりました。これらの政策は、2011年に掲げた学校法人明治大学長期ビジョン、そして長期ビジョンに基づく中期計画を策定し、法人の将来構想の実現に向け、関係機関が努力を積み上げてきた成果だと受け止めています。

しかし、本学の取り組みのスピードを上回る勢いで、社会環境は変化しています。2015年末に「国内601種類の職業について、人工知能やロボットに代替される確率を試算したところ、10~20年後に日本の労働人口の約49%が就いている職業において、それらに代替することが可能との推計結果が得られた」と、野村総合研究所とオックスフォード大学教員の共同調査が発表されました。この調査結果は、本学が創立150周年を迎える2031年に、現存の職業の半分がなくなる可能性を示唆しています。このような急速な環境の変化は、社会が求める人間像にも影響を及ぼし、人間の成長に必要な「学び」のルールに変化をもたらしています。答えが一つとは限らない、未来予測が困難な時代。私たち人類は、歴史の転換期を迎えています。

私は、このような時期に校友会、父母会をはじめ、学内外で多くの方々にお会いし、本学への大きな期待、すなわち明治大学が、自然や人類の共通課題を解決するために、社会に貢献する人間を輩出する大学であってほしいとの願いを強く実感しました。環境が変わり「学び」のルールが変わる以上、大学経営や教育・研究も時代の要請に応えていかなくてはなりません。

価値観が多様化した現代、大学は、言語や文化、宗教などの多様性を許容し、人類の発展に資する教育・研究活動を展開する必要があります。アクティブラーニングに象徴される学生の主体性を育む教育や先端研究等、次世代を育てるための環境整備の更なる充実が求められています。その一方で本学は、入学定員管理の厳格化に伴う学費収入の減少、老朽化した施設設備の修繕など、教育・研究活動の基盤となる財政に大きな影響を及ぼす課題を抱えています。私は、明治大学全体を俯瞰し、優先順位を見極めながら限られた経営資源をメリハリをつけて投資し、山積した諸課題の解決に全力で取り組む所存です。

明治大学がこれからも強く輝く大学であり続けるために、皆さまのご協力の程、よろしくお願いいたします。