駿風

暑い夏を迎えるといつも母の言葉を思い出す。その言葉とは「私たちは実験に使われたんだね。人間扱いじゃなかったんだね」である。母は被爆者である。

勤労奉仕先に向かう途中で被爆したそうである。幸い、建物の影にいて吹っ飛ばされただけで無事であった。母の家族は皆助かったが、体中に多数のガラス片が刺さったり建物の下敷きになったりと悲惨な経験をしている。

さらに、戦後になると郊外では「放射能をもった人」と差別されたそうである。そのため、家族で広島を離れ、長い間被爆手帳も申請せず、広島にいたことも家族以外にはあまり話さなかった。

戦争は、一般市民のささやかな暮らしをあっさりと無にしてしまう。風評による差別までも生み出す。非常に恐ろしい事実である。

今年、オバマ米国大統領が広島に来た。彼の平和への願いと、相反する現状への悩みを考えると非常に悲しい。

ところで、日本で戦争があったこと、米国が敵国であったこと、また、現代史をしっかり理解している人が今どれだけいるのだろうか。長い夏、つい数十年前にあった出来事に思いを馳せてみよう。

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