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本棚「社会凝集力の日中比較社会学—祖国・伝統・言語・権威—」鍾 家新 著(ミネルヴァ書房、3,500円+税)



我々同僚の中では手相・顔相を観てくれる“占い師”として知られている鍾先生だが、中国では風水師として著名で、そうした占いは過去の膨大なデータ分析と観察が重要だとご本人から聞いたことがある。

そうした一面を持つ著者による本書は実に興味深い。日中両国の歴史と現在を分析したものだが、広く、アジアの政治や文化にも言及されている。久々に多くの線を引き、たくさんの書き込みをした。中国の実態が記されているだけでなく、その行動・組織原理が日本の歴史に引き合わせて説明されていて、日本社会の理解も深まる。「ヘェ~」と驚かされる事実が多く紹介されており、本質を捉えた指摘が端的で明快なために、「そうだよね!」と強く肯くところも多い。また、紹介されているインタビューはすぐれたルポルタージュを、ところどころに散りばめられた総括文は珠玉のエッセイを読んでいる気分にさせてくれる。本書は社会学の本ではあるが、著者が観察した「社会相」を丹念に解説した労作である。

小西德應・政治経済学部教授    (著者も政治経済学部教授)