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学内での連携、社会との連携

副学長(社会連携担当)竹本 田持

「社会連携」や「地域連携」などの言葉を聞く機会が多くなり、社会連携本部や地域連携センターといった組織を有する大学が増えている。「連携」とは「目的を同じくするもの同士が、連絡し協力しあって何かをすること」(新明解国語辞典)であるから、大学が社会(地域)と繋がりをもち、“タコツボ”に閉じこもらず、社会に貢献する開かれた存在となることを目指した取り組みといえよう。本学では、生涯学習機会の提供を行う「リバティアカデミー」、各地域との連携や貢献を担う「地域連携推進センター」、そして本年度から所管が社会連携事務室に移った「震災復興支援センター」の活動を軸に社会連携を推進している。

教育と研究を使命とする大学が、活動領域を社会に広げ、アピールすることは大切である。とはいえ、社会連携を教育・研究と並列的に位置づけ、独立したものとすることは難しい。私たち教員は、一方で現役の学部生や大学院生に対する教育者、他方で研究テーマを持つ研究者、さらに学内外における教育・研究と関連する活動(学内や学会の役務、自身の研究と直結する学外委員等)を加えれば、二足どころかそれ以上の「草鞋」を履いており、それらの多くが社会との接点を有している。教育とは人を育てることであるし、実学であるか否かに関わらず、どのような学問も直接・間接に社会と関係しているからである。つまり、大学における社会連携とは教育・研究と不可分ではなく、教育・研究と連携、あるいはそれを基礎・基盤とする取り組みという形をとる。

こうした性格から、留意すべきことがある。誤解を怖れずに述べるなら、社会連携の取り組みが、「便利屋」として使われたり、「何でも屋」になったりする可能性である。教育(科目)として扱うべき内容や明らかな研究活動、学生主体の課外活動、さらには個人的な人脈や縁故を充実するための活動…などのうち、他では取り扱いが難しいとか予算がとりにくいもの、曖昧なことを“とりあえず”社会連携に関連付けてしまうのである。現状でも、社会連携機構が扱っている事項には、教務部や学生部、研究・知財戦略機構などが扱う方が適当だと思われるものが含まれている。

一方で、校友会や父母会など、いわゆるステークホルダーの皆さんに支えてられている本学が、こうした人々のニーズに対応することは重要である。また、社会人とともに学ぶ、語学や自分の専門分野とは別のことを学ぶ、社会(地域)で実践的な活動をするといった現役学生のニーズを満たすことも必要である。そして何より、私たちの対岸には、解決すべき様々な問題を抱えている社会(地域)が存在している。

本学の社会連携機構は、設立して満5年が経過した。機構の基本的な使命と機能を再点検し、各分野で活躍する卒業生、退職者を含めた教職員などとも協力し、伝統ある総合大学の特徴を生かした連携のあり方を構築することが求められている。そこでは、3万2000人の学生を念頭に置きながら、「学内組織との連携を図りつつ、社会との連携を考える」という姿勢が大切となるだろう。

(農学部教授)