Go Forward

「常に新しいことに挑戦し革新する」学長 土屋 恵一郎



私は世阿弥の「風姿花伝」に関する本を書いています。世阿弥は伝統芸術の能楽の祖でありますが、自身の劇団の存続のために、様々な革新を起こしています。その世阿弥が残している言葉の中に「住する所なきを、まず花と知るべし」という言葉があります。住する所なきというのは、そこに留まらないということ、要は安住しないことこそ花であると世阿弥は言っているのです。人は成功すると守りに入り、安定を目指してしまうことがあります。しかし、その成功に縋り、変化を恐れていると、必ず衰退してしまうのです。「珍しきが花」、つまり変化の中で新しさを作っていくことが、人気を保つ秘訣であると世阿弥は言っています。

これは大学も一緒です。明治大学は今年で135周年を迎えました。150周年に向けて、本学は今後も一定のポジションを保つことはできるでしょう。しかし、先進的大学として存続していくためには、常に新しいことに挑戦し変化していくことが必要なのです。この変化と革新なくして本学が学生たちのプライドとなるトップスクールになることは不可能です。

その一つとして、2008年に国際日本学部、13年に総合数理学部を設立しました。いずれも新キャンパスである中野で先進的な教育研究を展開しています。総合数理学部は今年度、一期生が卒業しますが、就職状況も大変良いと聞いています。同学部は実は日本で初めての数学系学部です。歴史と伝統を持つ本学が、日本初の学部を作るというのは、大きなインパクトがありました。

こうした先進的研究を支え、さらに大学全体の教育研究環境を大規模に革新していくためには、多くの資金が必要です。かつて文学部の教授であった小野二郎さんは、芸術が国の援助に頼ることなく自立した活力を持つためには、芸術を支える支援集団が必要であると言ったことがあります。大学も同じです。大学を支える支援集団があってこそ、国に頼ることなく、活力ある研究を進めることができます。その集団こそ校友会です。大学が前進していくためには、校友との緊密な関係が不可欠です。例えば、アメリカの大学の多くが実施している「レガシー入学制度」といった校友子弟の推薦入学制度を、日本でも可能な方法を検討して導入したいと考えています。自立した財政基盤を確立するため、校友からの支援を受けとめる新たな方法を検討していきます。

本学は、これからもフロンティアであり続けるために、そしてアジアのリーディング・ユニバーシティとなるべく、変化を恐れず前進し続けます。この前進を支える支援集団こそ、皆さんなのです。