本棚「秩禄処分 明治維新と武家の解体」落合 弘樹 著(講談社学術文庫、900円+税)



1999年に中央公論新社より刊行された『秩禄処分—明治維新と武士のリストラ』の講談社学術文庫版(2015年刊)である。まえがきにあるように、秩禄処分とは現在に例えるならば「公務員をいったん全員解雇して退職金も国債での支給とし、そのうえで必要最小限の人員で公職を再編するというような措置」である。想像するだけで恐ろしい。学制・徴兵令・地租改正のいわゆる三大改革の陰にこれだけの大改革があったことを、一般にあらためて知らしめた書である。この大改革の中心人物である大久保利通や井上馨らが、木戸孝允をはじめとする政権内部からの反対・慎重論にあいながらも断行してゆく経緯や、それ以前の近世武士の俸禄、それ以後の士族の行方なども含めて、諸史料や著者自身および他研究者の研究成果を縦横に駆使しつつ詳細に明らかにされている。

評者の専門に引き寄せてみても、現在の剣道の原型とされる撃剣興行開催の背景には秩禄処分があり、近代につくられた諸制度や文化の生成過程に秩禄処分は少なからず影響を与えている。是非一読をお薦めする。

長尾進・国際日本学部教授(著者は文学部教授)

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