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博物館・商学研究科 公開特別講義「工芸のサービスデザイン」

会場には多くの来場者が詰めかけ、注目の高さをうかがわせた

明治大学博物館と大学院商学研究科は11月25日、公開特別講義「工芸のサービスデザイン:アイデアの創造と編集」を駿河台キャンパス・リバティタワーで開催した(後援:商学部)。

商学部教員による資料室から発展した博物館の商品部門では、教員と共同で伝統的工芸品の製造・流通・販売に関する調査・研究を行っている。その成果報告会として、こうした特別講義を他研究科・学部の学生や一般社会人に門戸を開いた形で毎年開催している。

本年度は、東京都内で手工芸による陶器を主力商品とする工芸品店の経営に着目し、「工藝 器と道具 SML」でディレクターを務める宇野昇平氏と、同店とコラボレートして商品開発やPR活動をおこなっている出西窯(島根県出雲市)の経営者・多々納真氏を講師に迎えた。

近年、手工芸による陶磁器の流通においては、メーカーと小売の直接取引の傾向やSNSの発達に伴うコミュニケーション環境の向上などから、「作り手・売り手・使い手」三者の関係のあり方が急速に変化しつつある。今回の講義では、商品の企画から製造、PR、販売までの一連の動きをサービスデザインの観点から検証した。

ディスカッションの中では、商品というモノを動かすことだけではなく、人と人との顔が見えるコミュニケーションを大切にすることがキーポイントとして指摘された。そして、売る側が作る側の強みを理解して積極的に企画を提案したり、SNSは通販ではなく店舗に買い手を誘う手段として活用し、手に取って感触を確かめることはもちろん、料理を試食させるなどして器を体感してもらうと同時に、器が作り出された背景としての作り手や産地の気候風土など、器を取り巻く「スタイル」を商品の価値として提示する事例が紹介された。
(博物館事務室)