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本棚「地域に根ざす民衆文化の創造 「常民大学」の総合的研究」北田 耕也 監修・地域文化研究会 編(藤原書店、8,800円+税)



本学名誉教授である北田耕也氏によって監修された、「常民大学」についての社会教育史からの総合的研究である。「常民大学」というのは、1970年代に、本学の政治経済学部教授であった後藤総一郎氏によってはじめられた、地域に根ざした生活者たちの共学の場であり、思想的自立のための運動である。郷里の長野県飯田市遠山からはじまり、遠州、鎌倉、立川等へと続いていく「常民大学」の軌跡については、本書の第二部で参加者たちによって詳しく論じられている。私は、その前身の東京・高田馬場にあった「寺子屋教室」で柳田国男研究の講師を担当されていた後藤氏と出会い、折々に「学問」についての考え方を教えられてきた。その後は明治大学教員の先輩として、大学改革の先導者としての姿をみることになった。1980年代終わりからの学内情勢の厳しい時代であった。教育者としての後藤氏のなかには、つねに社会教育の視線があって、現在のリバティアカデミーや大学出版会なども、後藤氏の提言にもとづいている。

山泉 進・法学部教授(監修者は本学名誉教授)