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論壇「大学スポーツ 変化の時」

副学長(スポーツ振興担当) 柳沢 敏勝

体育会運動部を中心としたスポーツ振興策の立案実行が私の任務である。周知のように、本学体育会には46部が所属しているが、そのうち創部100年を超えるものが既に10部に及んでいる。長い歴史と伝統を紡いでこられたのも、多くの先人諸氏のご尽力のおかげである。

しかしながら昨今、大学スポーツを取り巻く環境が大きく変わり始めている。少子化が進むにつれ、大学スポーツを競争優位確保のための重要な経営資源と捉えるところが増えてきた。このため、従来、正課教育と並んで二本柱とされてきた課外活動の中の体育会とは異なる位置づけを大学スポーツに与えるようにもなっている。

とはいえ、いわば単なる宣伝広告塔として大学スポーツを捉えることには異を唱える必要があろう。教育の場でもあるからだ。例えば、土屋恵一郎学長は2016年度入学式の告辞で次のように語っている。「古代ローマ以来、その自由とは、生まれた場所の習慣や言語から自由になって、世界市民コスモポリタンになることを意味していました。(中略)日常の惰性になった身体から自由になって、自分の身体のもう一つの可能性を見つめるのが体育です」。

他方、課外活動として体育会を捉え、学生の自主性に委ねるというあり方でいいのかという見直しも始まっている。体育会を課外活動の一環とする大学も依然として多いが、本学では10年ほど前から正課外教育だとする考えをとってきている。司法試験対策などを正課外教育の場と考えて整備してきたのと同じ位置づけであり、世界を相手にトップアスリートとして活躍する学生を輩出するうえで、専門能力育成の場が必要だとの認識である。

また、大学スポーツがユニバーシティー・アイデンティティー(UI)に大きく寄与することに異議をはさむ者も少ないであろう。とりわけ、メディアへの露出度が高い競技ほどこの傾向が強い。本学のプレゼンスを高め、UIを維持するうえで体育会の果たす役割は実に大きい。

そのような中にあって、国は現在、スポーツ立国を成長戦略の一つと考え大学スポーツに注目し始めている。第2期スポーツ基本計画「中間報告(案)」(2016年12月)では、「大学が持つスポーツ資源を人材輩出、経済活性化、地域貢献等に十分活用するとともに、大学スポーツ振興に向けた国内体制の構築を目指す」と述べている。そして、その方策として専門部局の設置や資金調達力の強化、デュアルキャリア支援、地域貢献、日本版NCAAの創設などを挙げている。今後、大学スポーツを大きく変化させる要因となろう。

この変化に呼応した動きも出始めている。関東関西など、主だった地域に横断的に、大学スポーツ振興のための検討組織が立ち上げられつつある。緒に就いたばかりとはいえ、競技連盟間の連携強化が進めば新たな局面を切り拓くことにもつながるであろう。
(商学部教授)