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自動運転の法的インフラに関する模擬裁判を明大で実施

中山教授(中央)自ら原告に扮し、現役弁護士の協力を得るなど本格的な裁判を演出した

AI(人工知能)を搭載した完全自動運転車が交通事故を起こした場合、誰が責任を取るのか。自動運転への社会的関心が高まる中、法科大学院の中山幸二教授(民事訴訟法)は、教え子の弁護士や各分野の専門家とともに「自動運転・法的インフラ研究会」を立ち上げ、こうした問題について研究を行っている。1月20日には、経済産業省の委託事業の一環として、自動走行の民事上の責任および社会的受容性に関する研究を目的とした模擬裁判を、駿河台キャンパスの法廷教室で実施した。

これは、想定される具体的な2つの事故事例について模擬裁判を行い、法的判断の一例を提示し、現行法上でどのような課題があるかを抽出するとともに、消費者・社会から理解を得られるかを検証しようとするもの。

一つ目の事例では、最近、各自動車メーカーが次々と導入している自動ブレーキ、追随走行に関する事故が取り上げられた。高齢者の運転する車が高速道路を走行中、自動ブレーキが作動すると信じた結果、前方の車に追突してしまうというもの。原告は、「ぶつからない車」といった広告や、購入時の説明など、自動車メーカー側に製造物責任法上の「欠陥」があったとして、争った。

二つ目は、10年後の未来を想定し、完全自動運転車が起こした事故に対し、保険会社と自動車メーカーの責任に関わる事例を検証。突然飛び出してきた自転車を避けるために完全自動運転車は車線変更をするものの、その後ろを走行していたトラックが追突を回避し、電柱に激突。その結果、運転手が死亡するというもので、突発的な回避行動や安全性などが争点となった。

中山教授は今回の模擬裁判について、「自動運転によって事故は激減するが、ゼロにはならない」とした上で、「こうした具体的事例を提供することで、技術者と法律家の対話、消費者と専門家の意見交換を通して、社会的受容性を広げるための土壌を形成していきたい」と法整備の重要性を訴えた。