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本棚「WORT WIRD BILD」ヨーゼフ・リンシンガー、須永 恒雄 共著(ビブリオテーク・デア・プロヴィンツ社、15ユーロ)



ヴィジュアル・ポエトリーの第一人者ヨーゼフ・リンシンガーは、オーストリア・グムンデンで長く日本の文字システムとアルファベットを関連付けた作品に取り組んできた。『WORT【語】はBILD【画】(になる)』と題された今作ではさらに漢字へと踏み込む。諺や詩、慣用表現などから対となるべく選び出されたアルファベット4文字のドイツ語が60組。見開きの左右に一語ずつ、それぞれ4文字が重ね合わされ、灰色に塗られた正方形の仮想ボディへ圧縮される。こうして生まれたモノグラムは、まさに漢字がそうであるように、黒い直線と曲線が縦横に絡み合う「画」となる。「語の画」の下には、「語」の意味に適合するよう著者が選定した漢字が据えられる。漢字の左隣には字訓が平仮名で、右隣には字音が片仮名で寄り添う。さらに巻末には英語・仏語との対応表も付され、異なる文化の交流が不断の翻訳の実践によって立ち現れる様が示される。この小さな本は、FREI【恣】でFROH【嬉】な体験を読む者に与えてくれる。

相原剣・法学部兼任講師(著者は法学部教授)