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本棚「価値と資本—資本主義の理論的基盤」飯田 和人 著(桜井書店 3,000円+税)



本書のタイトルは、『価値と資本』である。同名タイトルとしては、J.R.ヒックスのそれがよく知られている。本書は、マルクス経済学の方法論にしたがって労働価値論の立場から価値を、価値増殖する価値の運動体という規定性から資本を「徹底的に分析し解明する」ことをテーマとしている。

『資本論』刊行から150年、本書は「マルクス経済学のバージョン・アップを企図して、価値および資本概念の現代化に挑」んだ意欲作である。マルクスの体化労働価値説に代わるものとして抽象的労働説を提示し、それによってはじめてこれまでマルクス経済学に付着してきた難点が払拭できること、さらに今日の国民所得論との整合的理解が可能になること、加えてグローバル資本主義の時代の支配的資本をグローバル資本と規定することによって現代資本主義を新たな段階設定の下で捉え返す道が開かれることを説得的に示す。その道は、ヒトがモノとモノとの関係を制御する社会へと続いている。著者渾身の一冊である。ご一読あれ。
高橋輝好・政治経済学部教授
(著者も政治経済学部教授)