Go Forward

本棚「三木武夫秘書回顧録—— 三角大福中時代を語る」岩野 美代治 著 (吉田書店、4,000円+税)



政治学の手法としてのオーラルヒストリー(口述史)は、歴史資料あるいは意思決定過程に関する資料として、一定の市民権を持つようになっている。しかしながら、政治家当人がすでに故人となっている場合、もちろん当人にインタビューをすることは不可能である。そこで、議員の側近であった秘書にインタビューをするという方法が浮上するが、政治キャリアの長い有力政治家は、のべにすると相当の数の秘書経験者がおり、インタビュー対象として適切な人物を選定することは簡単ではない。また、政治家の右腕となった有力秘書は、極秘事項までをも知っているが、それは決して口外せず、墓場まで持っていくのが“秘書道”であったりする。竹内桂氏は、長期にわたって秘書として三木武夫氏と歩みを共にした明大OBの岩野美代治氏という適切な人物に交渉し、全22回にもわたるインタビュー調査を行うことに成功した。本書は、編者のインタビュアーとしての資質の賜物でもあると同時に、明大コネクションならではの研究成果である。
井田 正道・政治経済学部教授
(編者は政治経済学部兼任講師)