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本棚「現代貨幣論——電子マネーや仮想通貨は貨幣とよべるか」金子 邦彦 著(洋書房、2,200円+税)



本書は「貨幣とは何か」という本源的命題に迫る、まさに貨幣論の本格的な研究書である。現代マネタリズムのフリードマン、ブルンナー=メルツァー、オーストリア学派のハイエク、ポストケインジアンに至るまで、金融自由化、情報社会、貨幣発行モデルなど様々な切り口から様々な学派の貨幣論を論じる意欲的な著作でもある。

著者は現代経済学が貨幣論を正当に組み入れていないとして、市場の不完全性が貨幣を必要とするなか、「過度の抽象化」を避け現代経済理論を構築するのが貨幣論であると強調する。今後一層進展するとみられる情報化やグローバル化は金融の形を大きく変えていき、その時には「貨幣とは何か」が益々問われていくだろう。

本書は、著者の長年の教育・研究における明治大学での大きな貢献が伺い知れる優れた研究書であり、同時に金融理論の明治大学の系譜も知ることのできる貴重な文献である。デジタル通貨の時代にこそ、著者が指摘するように、貨幣を経済理論に正当かつ十分に位置づけていくことが益々重要になるだろう。

勝 悦子・政治経済学部教授
(著者は情報コミュニケーション学部教授)