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本棚「インドの代理母たち」ギーター・アラヴァムダン 著 鳥居 千代香 訳(柘植書房新社、2,300円+税)



本書は『焼かれる花嫁』や『ダウリーと闘い続けて』、『インド 姿を消す娘たちを探して』等、今や経済大国となったインド社会に根ざす女性問題に光を当ててきた鳥居氏の最新翻訳本である。近年日本でも話題となる代理母であるが、商業的代理母を禁止する法律がないインドでは、費用も安く医療技術も高いことから、一大ビジネスとなっている。そのビジネスに関わる女性たち、つまり依頼する女性、引き受ける女性、そして誕生する子供たち等の生の姿を描いたのが本書である。それぞれの女性たちの希望や苦悩、喜びと絶望の中でこのビジネスが行われている。これは独りインドだけの問題ではない。最近インドでは法的規制が強くなり、その中心が移ったというものの、ここに登場する顧客は日本、アメリカ、オーストラリア等世界に及んでいる。さらに、この技術が進む先には、何が待っているのであろうか。人間にとってタブーとされてきた生命の人工的生産の領域に足を踏み入れる、まさにそのとば口に我々が立っていることを、思い知らされるのである。

吉田 恵子・元情報コミュニケーション学部教授
(訳者は政治経済学部兼任講師)