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本棚『ゲームする人類 新しいゲーム学の射程』中沢 新一 共著 明治大学出版会 2,000円+税



本書は、日本ではいまだメジャーな学問領域として確立しているとは言い難い「ゲーム学」の様相について、三人の論者が対談・鼎談を通じ迫ったものである。

焦点となっているのは、日本におけるこれまでのゲーム批評のあり方、また世界市場から見た日本発ゲームの独自性についてである。かつてはゲーム先進国と言われつつ、近年では海外市場の発展に遅れをとりつつあり、またゲーム学の立ち上げでも欧米に遅れをとってしまった現状が取り上げられている。この点、文芸批評・ゲーム制作・ゲーム史研究と、それぞれの分野で存在感ある三人の論者は、この問題を論じる上で適役といってよい。

様々な視点が俎上にあげられており、論点を知るためには貴重な情報源となっている。しかし肝心の「日本の独自性」についての議論は、三者で一致した見解はまだなく、議論もぎこちない。これはしかし、まさしく日本の「ゲーム学」がこれから立ち上がっていく過程を私達は目の当たりにしていることの顕れに他ならないだろう。

福地 健太郎・総合数理学部教授
(共著者は研究・知財戦略機構特任教授)