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本棚『田園のイングランド 歴史と文学でめぐる四八景』宇野 毅 編著 彩流社、2,000円+税



まず何より特筆すべき本書の魅力は、本書がイギリスを研究対象とする識者たち(32人)によって書かれたものであるということ。識者ならではの文学的解説、歴史的検証が田園の魅力をいっそう深化させ、輝かせている。いわゆる一般のガイドブックとは一線を画し、本書は歴史的景観に刻まれた相剋、時代の文脈から紐解かれる心象風景をも描出している。

本書の構成は、ロンドン近郊も含めたイングランド南東部、南西部、東部、中部、北部の五章からなり、48カ所にもおよぶ名所旧跡について、著者の実体験も交えながら詳述する。その中には日本でもおなじみの映画、テレビ・ドラマのロケ地なども多数含まれる。たとえばピーター・ラビット生誕の地、ハリー・ポッターの魔法学校、『ダウントン・アビー』のハイクレア・カースルなどなど、実に枚挙に暇がない。魅力満載だ。田園探訪の際の何よりの道しるべとなろう。

田園をはじめて巡る者はもとより、イギリス通を自称する諸兄にあってなお本書は、新たな知識の宝庫、必携の書となろう。
相馬 美明・文学部兼任講師
(編著者は経営学部教授)