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理工学部・江口兼任講師が筆頭著者の論文がNature姉妹誌「Scientific Reports」に掲載

2015年06月02日
明治大学 広報課

磁性抗がん化合物Fe(Salen)の結晶構造 a)Fe(Salen)の化学構造式、b)大型放射光施設(SPring-8)で同定した結晶構造、c)Fe(Salen)中の鉄原子d軌道の局所電子状態密度[出典:Scientific Reports  5, Article number: 9194 doi:10.1038/srep09194]磁性抗がん化合物Fe(Salen)の結晶構造 a)Fe(Salen)の化学構造式、b)大型放射光施設(SPring-8)で同定した結晶構造、c)Fe(Salen)中の鉄原子d軌道の局所電子状態密度[出典:Scientific Reports 5, Article number: 9194 doi:10.1038/srep09194]

 理工学部の江口晴樹兼任講師(1985年工学部卒業、2000年理工学研究科博士後期課程修了、圓谷和雄研究室出身)が、筆頭著者(first author)かつ共同責任編集者(corresponding authors)を務めた医学論文がこのほど、世界で最も権威ある科学雑誌Nature(ネイチャー)の姉妹誌である「Scientific Reports」に掲載されました。本学教員の筆頭著者論文が「Scientific Reports」に掲載されるのは初の快挙となります。

論文は、江口兼任講師が所属する株式会社IHIと横浜市立大学の共同研究によるもので、同大学大学院医学研究科の石川義弘教授(循環制御医学)らが共著者に名を連ねています。論文タイトルは「A magnetic anti-cancer compound for magnet-guided delivery and magnetic resonance imaging(磁気誘導輸送と核磁気共鳴画像法(MRI)のための磁性抗がん化合物)」。

がんの化学療法における研究では、患者の体内のがん細胞を目がけて抗がん剤を届ける「ドラッグ・デリバリ・システム(DDS)」という技術が注目されており、江口兼任講師らのグループは今回、鉄-サレン「Fe(Salen)」という物質をコンピュータ解析で見出し、その合成、構造、さらには磁性発現メカニズムの研究を行いました。

その結果、この物質をがん細胞に投与すると、細胞のDNAにダメージを与え活性酸素の産生を通じてアポトーシス(細胞の自殺)に追い込むことや、さらに物質の磁性を利用することで、がん患部への集約やMRI造影剤としての利用も可能であることが判明しました。

江口兼任講師は今回の研究成果や論文掲載について、「論文に記載の化合物は、量子力学に基づき物質の性質を予測する『第一原理解析』を用いて見出した。この解析手法の礎は、理工学研究科博士後期課程在学中に築きあげた成果であり、指導教官の圓谷和雄先生には深く感謝している。また後輩の皆さんには本研究を超えるような研究テーマで、『世界と時代に対峙し、未来へ挑戦』できる明大生を目指してほしいと思う」と述べています。