神経細胞の情報伝達効率の調節機構を計算科学で追跡-小脳の運動制御・運動学習メカニズムの多様性を解明-

2016年03月02日
明治大学

神経細胞の情報伝達効率の調節機構を計算科学で追跡
-小脳の運動制御・運動学習メカニズムの多様性を解明- 
 明治大学理工学部電気電子生命学科の小野弓絵准教授は、日本医科大学(薬理学)の齋藤文仁准教授、徳島文理大学香川薬学部の小西史朗教授らの研究グループと共同で、これまで知られていた2種類の小脳ニューロンの神経情報伝達効率の変化が、ニューロンの受容体の数と質を変化させるという異なるメカニズムで実現されていることを、細胞膜電流の揺らぎに基づく計算科学的手法により明らかにしました。

脳の一部である小脳は、眼や耳からの感覚情報や身体の平衡状態の情報を処理して、円滑な運動の実行や運動の学習に必要な指令を送る調節器官として働いています。全身へ送られる運動調節の指令は、小脳からの出力を担うプルキンエ細胞の活動のパターンで決定されています。このプルキンエ細胞の情報伝達効率は、刺激依存性に増強する現象が知られていて、これまで2種類の条件、つまり脱分極依存性増強(Rebound potentiation: RP)とプリン受容体刺激依存性長期増強(purinoceptor-mediated long-term potentiation: PM-LTP)が報告されていましたが、それぞれの増強プロセスを仲介する分子メカニズムは不明でした。

研究グループは幼若ラット小脳から作製した脳スライスのプルキンエ細胞膜から記録した電流応答の揺らぎから、ニューロン間で情報伝達を行っている神経伝達物質GABAの受容体の数と、受容体に流れる電流を推定する非定常ノイズ解析を用いてRPとPM-LTPにおけるプルキンエ細胞の応答性の変化を調査しました。

その結果、RPでは受容体の数を増やし、PM-LTPでは受容体に電流を通しやすくすることにより細胞の情報伝達効率を増加させていることが明らかになりました。また、細胞内情報伝達物質(セカンドメッセンジャー)の働きを阻害した検証実験からも、これらの2つの細胞応答増強が異なる細胞内信号経路によって制御されている可能性が示されました。
この成果をきっかけに、小脳の運動制御や運動学習の多様なメカニズムがさらに研究されることで、運動失調などの小脳疾患機構の解明につながることが期待されます。

本研究は、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(代表:徳島文理大神経科学研究所・小西史朗教授)の一環として行われ、米国科学雑誌『PLOS ONE』のオンライン版(アメリカ東部標準時間3月1日付け)に掲載されました。

掲載紙情報 Ono Y, Saitow F, Konishi S. (2016) Differential modulation of GABAA receptors underlies postsynaptic depolarization- and purinoceptor-mediated enhancement of cerebellar inhibitory transmission: a nonstationary fluctuation analysis study. PLOS ONE 11(3): e0150636. doi:10.1371/journal.pone.0150636



問い合わせ先

<研究内容に関するお問い合わせ>
明治大学理工学部 電気電子生命学科 健康医工学研究室
准教授 小野 弓絵(おの ゆみえ)
電話:044-934-7302
FAX:044-934-7883
<大学窓口>
明治大学 広報課
電話:03-3296-4330
E-mail:koho@mics.meiji.ac.jp

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