コラム

COLUMN/知的財産

知的財産立国を支える気概のある法曹を育成したい
産業技術の発明や文化作品の保護は、欧州の中世に始まります。アメリカでは建国の際の憲法に、発明の保護がうたわれています。アメリカはモノづくりの製造業がかつての力を失い、他方、特許権や著作権に守られる権利が、中国等に侵害されて模倣品が横行することに危機感を高め、ここ20年来プロパテント(特許権保護強化)政策を産・官・学の共同戦略として展開しています。特許権の他に、映画の著作権期間の50年から70年への延長の例にみられるように著作権の保護・強化にも力を入れています。さらに不正競争防止法でトレードシークレット(営業秘密など)の保護や経済スパイ法制定にみられるように、財産的価値のある情報をひろく知的財産として強い保護を与えようと各般の政策を打ち出しています。
インターネット・デジタル技術による高度情報化社会の進展は、プログラム特許の拡大や特許権出願と権利侵害の国際化を促しています。

わが国では、平成15年に知的財産基本法が施行され、不正競争防止法の営業秘密への刑事罰の導入が伴われ、政府の知的財産戦略本部から特許審査と知的財産に係る裁判の迅速化を図る重要な施策が提案されています。また、企業サイドでも、知的財産部門を経営の重要な柱として位置づける動きが顕著になっています。
アメリカでは、知的財産専門分野で約700人の裁判官、約17,000人の弁護士が存在します。わが国はそうした人材が極めて希薄です。こうしたなか、明治では、将来の知的財産専門の法曹家や企業法務家の育成に力を入れて参ります。特許事務所では弁護士や弁理士の指導の下に特許出願の中心である明細書の作成などを学び特許庁の審査・審判実務を研修し、また審決事例を学習します。さらに知的財産に係る重要な判例研究を行います。知的財産の国際的展開に対応できる国際交渉力を身につけるべく、将来的には海外のロースクールなどとの単位交換など連携を深めていくことも考慮しています。 

COLUMN/人権

生活に密着した人権意識を持ち続けたい
人権を問題にする時、私たちの関心はかなり大きな問題に向かいます。社会に根強く残る差別、人種差別、性差別、貧富の差別と、こうした問題群は社会的注目度も高く大事な問題です。しかし、これらの問題へと向かう心の働きのうちに、もう少し直接的で強い感情があるに違いないのです。
たとえば医者になりたいと思う人たちが、近親者や愛する者の死と病気に直面して自分が無力であった悔しさをその動機にあげることがあります。法律家になろうとする人々のうちにも、こうした直接的な動機を持つ人たちがきっといることでしょう。無力なままでいる者たちの傍らに共に立っていたいという動機です。法科大学院が法律家になろうとする人々を迎えるとき、こうした動機こそとても大切にしたいのです。行政や司法の救済と支援から放置された人々や社会のうちで犠牲になっている人々を、法律の力によって支える本当の意味での市民の側に立った法律家がいてほしいのです。

今日、広範な分野で女性が社会に参画し社会の流動性を加速しています。社会のうちにこの流動性を当然のこととして迎える準備がなければ、企業やあるいは様々な組織のうちで、女性の権利をめぐる問題が起きます。
社会的流動性には、将来の外国人労働者の問題や難民の問題もきっと入ってくるでしょう。
法律が問題が起こることに先駆けて動くことはまずありません。しかし、法律は動かなくてもそれに先んじて法律家は動くことができます。それこそ法律家の役割です。

社会の流動性に法律が追いつかない事態が生まれるとき、様々な人権上の問題が生まれます。そうしたとき、この事態を座視することなく一歩前へ進んで彼らの傍らに行く勇気が法律家にはきっと必要です。キャリアアップやエリートになる手段としてのみ法曹を捉えることなく、社会のうちに生き、社会の問題に常に関ろうとする法律家を育てたい。それが法科大学院の生命線と言えるかもしれません。 

COLUMN/環境

将来世代へ引き継ぐ環境に責任を持てる法曹を育成したい
環境法は、ヒトの生命・健康や財産のほか、動植物、生態系等を含めた環境自体に法的価値を認め、より豊かな国民生活とより高い水準の質の環境を両立させることを目的として、法的な観点からアプローチする学問です。このような目的を達成するには、我々のライフスタイルを改め、社会・経済構造自体を変革するための法制度の在り方を模索することが求められます。たとえば、持続可能な発展を可能とする国際的・国内的な法制度、資源、エネルギー、土地等の効率的利用を目指す循環型社会・経済への変革を可能とする法制度、事業アセス、戦略アセス等の将来展望型社会の構築に向けた法制度、環境負荷に起因する損害ないしリスクの未然予防・最小化を実現するための法制度等々の在り方を研究対象とし、研究を通じて、将来世代を含めた人々により豊かな社会・経済像を描き、かつ、実現するための基礎的な法的素養を蓄積することを目指します。その一方で、環境負荷による損害が発生するおそれが生じ、または実際に生じた場合の措置の在り方についても研究します。

環境法の領域では、法律学以外の学問分野について基礎的な知識を求められます。たとえば、環境保全の目標を設定するうえでは環境負荷とヒトの健康あるいは環境に対する影響ないしリスクとの関係について、また、事後的な被害者救済を図るうえでは環境負荷と損害との因果関係について、その時点における科学の到達点を踏まえたうえでの政策判断、法的判断が求められます。それ以外に、現代の環境法は、国際的な環境保全戦略あるいは国際競争力の強化といった国家戦略と関連づけてとらえることが不可避ですから、このような学問分野におけるものの考え方を理解することも不可欠で、これらのことは、環境法研究を通じて行政における環境政策決定の場、企業における環境保全の領域を目指す場合に限らず、法曹界を目指す場合も例外ではありません。

COLUMN/医事・生命倫理

新しい医療社会に対応できる法曹を育成したい
医療は、いまやヒトの誕生から死までのすべてに関わりをもっていると言っても過言ではありません。医療がヒトの生命や心身の健康を支配しているとも言えます。
そして医療には危険性も潜んでおり、医療事故や薬害が日常的な出来事と化し、ヒトの生命や健康を脅かしています。

また、医療には人間の尊厳にかかわる倫理的問題も潜んでいます。ヒトの生活様式のみならず人間社会のあり様を変え、種の存続すら危うくすることも可能なのかも知れません。
故・中川米造(大阪大学名誉教授、医学概論)は、現代医療を「化け物」と称しました。曰く、“頭でっかちで、眼は単眼で極度の近視、足はとてつもなく速い”。慎重な経験や複眼的で未来への見通しをもっと重視すべきとの警告と受けとめるべきでしょう。

これまで医療のことは主として医師に委ねられてきました。しかし、学際的検討や法の支配が重要視されるようになりました。このような状況をうけて、これからの専門実務法曹のあり方にも変革が求められているように思われます。裁判実務中心主義からの脱却です。

従来、医療事故や医薬品被害をめぐって数多くの損害賠償訴訟が提起され、紛争解決に努力してきました。これらの損害賠償訴訟をより公正なものに変えてゆくことも役割の1つですが、これらの被害を医薬品行政も含めた医療安全システムづくりや裁判外紛争解決システムづくりに役立たせることも必要です。また医療被害をめぐる刑事責任や行政処分のあり方も再検討の時期にきています。医療現場にも積極的な関わりが求められています。例えば、医療事故調査委員会や病院・医学部倫理委員会の外部委員、医療安全管理研修の講師、医療関係職種の卒前教育や医療政策形成過程への関与等々です。活動領域は実務、研究、教育、運動、公共政策と広範です。

好むと好まざるにかかわらず、ヒトの生命・健康に重大な関わりをもつ医療システムに、患者の権利の確立や法の支配を実現すべく、専門法曹の役割が求められているのです。 

COLUMN/国際

アジア諸国の法整備支援も視野に入れた教育
弁護士業務の国際化には二方向があります。その一つは、日本国内で生活する外国人に対する法的サービスです。具体的には、法の不備や知識の無さから正当な権利を行使しかねている人々に、援助の手を差し伸べる等の業務です。難民認定、不法滞在、強制退去等の単語がテレビ、新聞等で頻発する今日、この問題は社会の大きな課題となっています。他の一つは、いわゆる海外において諸外国を相手とする業務です。日本は欧米を始め世界各国にさまざまな形で人と企業が進出しています。それぞれが安定した活動をするためには、法的援助が欠かせません。顧問弁護団を抱える大企業はさしたる問題もないでしょうが、その関連で進出する中小企業は異なる法制度の下で操業が危ぶまれる事態に追い込まれることも無いとは言えません。進出した企業を補佐する日本人弁護士の活躍の場がここにあります。また、現地で取引先会社から正当な対価を得られるよう支援するなど、健全な企業を育てることも期待されます。国内であれ海外であれ、国際業務を行う際に留意しなければならないことは、相手方の社会を理解し文化を尊重し法制度を知ることです。さらには、法は弱者の権利を保護するシステムであることを念頭に、その側に立ち続けることを旨とし、機械的公式的な法の適用で事物を解決することなく、自分の頭で考えて援助を求める人の心情をも汲み取って結論を出すような法律家になって欲しいと思います。

21世紀はアジアの時代と言われていますが、それらの国々の中には残念ながら法的整備が十分になされているとは言い難い国もあります。法整備支援をも視野に入れてそれらの国の法を研究する科目を設け、将来それらの国で活躍する本校出身の弁護士をバックアップしたいと考えています。また、それらの国から本学への留学を積極的に促し、人的交流を深めることにも貢献したいと考えています。特に、通商法関係の問題解決には人脈の有無が大いに関与する現状もあり、この点は重要と思います。 

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