第4期 R001
三原順表紙担当雑誌等

第4期 R002
『はみだしっ子』単行本花とゆめコミックス 全13巻

第4期 R003
愛蔵版『はみだしっ子』他『はみだしっ子』関連

第4期 R004
『ルーとソロモン』関連

第4期 R005
『ムーン・ライティング』『Sons』単行本

第4期 R006
『XDay』『ビリーの森ジョディの樹』などその他の単行本

第4期 R007
白泉社文庫新旧カバーバージョン

第4期 R008
イラスト集レコード類等

  右:『チェリッシュギャラリー 三原順 自選複製原画集』
     (1979年4月20日/白泉社)
 左表:『チェリッシュギャラリー 2 三原順 自選複製原画集 2』  
    (1984年4月25日/白泉社)
  奥:『かくれちゃったの だぁれだ』
    (1984年7月25日/白泉社)
右手前:『サウンド・コミック・シリーズ はみだしっ子』
    (1983年2月21日/キャニオン・レコード)
 左裏:『ハッシャバイ ねんねんころりよ』
    (1977年7月25日/白泉社)

第4期 R009
「Die Energie 5.2☆11.8」 特集

「Die Energie 5.2☆11.8」は、原発問題を扱っている。原発反対の立場、電力会社に勤める者の立場の両方を見据えて描かれた深みのある作品。2011年東日本大震災時、この中央のページが短文投稿サイトTwitterに投稿され、わずか2・3ヶ月のうちに三十数万回閲覧された。1982年に少女マンガ誌で描かれたとは思えない重厚さで描かれており、その先見性により2011年当時の三原順再評価につながった。現在の閲覧数は四十五万回に達している。
 正面:「Die Energie 5.2☆11.8」本文原画
    (1982年『LaLa』6月号)
  右:「Die Energie 5.2☆11.8」扉原画
    (1982年『LaLa』7月号)
  左:「Die Energie 5.2☆11.8」予告カット原画
    (1982年『LaLa』6月号)
手前右:「Die Energie 5.2☆11.8」予告カット原画
    (1982年『LaLa』5月号)
手前左:「Die Energie 5.2☆11.8」予告カット原画
    (1982年『LaLa』7月号)

第4期 R010
「X Day」 特集

「X Day」は、小さな放射性物質が起こす大きな悲劇を扱った物語である。「Die Energie 5.2☆11.8」に続き核を扱った作品であることに注目されがちだが、アメリカ社会の抱える問題をいくつも重ね合わせて描かれた274ページの力作。初出時は未完のまま31ページのみ雑誌に掲載された。約2年半後、大幅な描きおろしページが加えられ完結した。ケース右は、三原順作品に典型的なセリフばかりのページの例。左は物語終盤、ダドリーとルドルフが、ピアニストに次々にリクエストするシーン。中央のとても長ったらしい曲名は、実際あるデューク・エリントンの曲である。「You're Just An Old Antidisestablishmentarianismist」は、「お前なんか、ただの、古くさい国教制廃止主義反対主義者だ」といったような意味になるとのこと。
すべて:単行本ジェッツコミックス
    「X Day」本文原画
    1985年5月27日

第4期 R011
「セルフ・マーダーシリーズ」特集

セルフ・マーダー・シリーズ関連の原稿を展示している。この短編シリーズは、自殺を扱っており、全部で4作描かれている。三原順後期の作品は、すべて、他の作家では描かないような三原順ならではの作品ぞろいだが、その中にあってこのシリーズはさらに異色中の異色である。ケース中央はシリーズ4作目「夕暮れの旅」より。「夕暮れの旅」は、自殺コンサルタントを主人公にした、まさかの傑作ブラック・コメディ。
 正面:「夕暮れの旅」本文原画
    1983年『花とゆめ』23号
  右:単行本花とゆめコミックス
    「夕暮れの旅」総扉原画
    (1984年4月24日)
  左:「夕暮れの旅」予告カット原画
    (1983年『花とゆめ』22号)
手前左:「あなたのための子守唄」予告カット原画
    (1983年『LaLa』3月号)

第4期 R012
「ベンジャミンを追って」「彼女に翼を」 特集

中央は三原順が、初めて主婦と生活社で描いた読み切り作品「ベンジャミンを追って」よりの1枚である。三原順は「Sons」終了後、白泉社で作品を発表しながら主婦と生活社の女性誌でも発表するようになっていた。中央の原画は、村で厄介者扱いされていた主人公のベンジャミンが、姿を隠して占い師をしていたことがバレ、占いを信じへつらっていた人々が、事実を知り驚き怒るまでを4コマで端的に描いている。左右は「彼女に翼を」の予告カットと扉絵。この作品は、ニコニコ顔の主人公が、だんだん怖い人間と感じられるようになっていく様が見ものの短編。左の扉の天使にも注目して欲しい。このようなアングルで描かれた天使は珍しいのではないか。

中央:「ベンジャミンを追って」本文原画
   (1991年『ROMANTIC BONTON』5月3日号)
 右:「彼女に翼を」予告カット原画
   (1991年『セリエミステリー』8月号)
 左:「彼女に翼を」扉原画
   (1991年『花曜日』8月10日夏の号)
手前:「ベンジャミンを追って」予告カット原画
   (1991年『BONTON』5月号)

第4期 R013
「夢の中 悪夢の中」 特集

「夢の中 悪夢の中」は、母と娘の関係性について描かれている。母と娘のままならない関係を考えることは、昨今注目すべきテーマとして、取り上げられることが多くなっている。1991年発表の本作は、その先駆け的作品であるといえる。
正面:「夢の中 悪夢の中」本文原画
   (1992年『BONTON』1月号)
 右:「夢の中 悪夢の中」本文原画
   (1991年『BONTON』12月号)
 左:「夢の中 悪夢の中」本文原画
   (1992年『BONTON』1月号)

第4期 R014
「私のアベルへ」「帽子物語」 特集

「帽子物語」は、短編としては亡くなる2作前、「私のアベルへ」は最後に発表された短編である。「私のアベルへ」は、1992年に発表された後長らく目にすることができず、ファンの間では幻の作品であった。2003年、豪華本『LOST AND FOUND』にようやく収録され、本展示中に刊行された文庫『三原順作品集 LAST PIECE』にも収録された。女同士の友情を描いた、コメディながら考えさせ、深い共感も呼ぶ作品。「帽子物語」に関してはR028に扉原画が展示されているので、そちらも注目されたい。
 正面:「私のアベルへ」本文原画
    (1992年『セリエミステリー』9月号)
  右:「帽子物語」本文原画
    (1992年『花曜日』2月10日冬の号)
  左:「私のアベルへ」予告カット原画
    (1992年『セリエミステリー』8月号)
手前右:「帽子物語」予告カット原画
    (1992年『LaLa』2月号)
    (1992年『セリエミステリー』2月号)
手前左:「私のアベルへ」予告カット原画
    (1992年『セリエミステリー』8月号)

第4期 R015
「ビリーの森ジョディの樹」 特集

遺作「ビリーの森ジョディの樹」より、森と樹の描写が中心の、印象的なページから3ページ分抜粋した。正面原画の、雨を実線では描かずに表現する手法や、濡れたコートの質感のすばらしさをはじめ、その画面の魅力は圧倒的である。
正面:「ビリーの森ジョディの樹」本文原画
   (1993年『別冊花とゆめ』12月号)
 右:「ビリーの森ジョディの樹」本文原画
   (1993年『別冊花とゆめ』10月号)
 左:「ジョディの海ビリーの樹 2」本文原画
   (単行本ミッシイコミックスDX
   『ビリーの森ジョディの樹』2巻1995年9月10日)
手前:「ビリーの森ジョディの樹」予告カット原画
   (1993年『花とゆめ』19号)

第4期 R016
「ビリーの森ジョディの樹」 特集

このケースには、海の描写のある印象的なシーンを選んだ。ビリーとジョディのシリーズには、タイトルが「ジョディの海ビリーの樹」となっている話が2話分ある。海も本シリーズの重要なモチーフなのである。
左のページには、ジョディとビリーがおでこをくっつけているシーンが描かれるが、二人は幼い頃より、なぜか多くの言葉を発さなくても、おでこを寄せ合えば心が通い合う同士として描かれている。幼い頃の同様のシーンの原画が壁に展示してあるので、そちらとあわせて鑑賞して欲しい。この原画の裏にある、ビリーのカラーイラストもお見逃しなく。
正面・右:「ビリーの森ジョディの樹」本文原画
     (1993年『別冊花とゆめ』12月号)
   左:「ジョディの海ビリーの樹」本文原画
     (単行本ミッシイコミックスDX
     『ビリーの森ジョディの樹』2巻1995年9月10日)
  左裏:「ビリーの森ジョディの樹」予告カット原画
     (1993年『花とゆめ』19号)

第4期 R017
マックス特集

「はみだしっ子」
グレアム、アンジー、サーニン、マックスの4人の少年が、各々の事情で肉親の保護を受けることなく生活することとなる。ストーリーは、4人一緒の放浪生活を描く序盤(PartⅠ「われらはみだしっ子」~PartⅨ「そして門の鍵」)、グレアムとアンジーがある大きな秘密を抱え、かつ4人離れ離れに生活せざるを得なくなる中盤(PartⅩ(山の上に吹く風は」~PartⅩⅡ「裏切り者」)、再び4人一緒に生活することになり、さらに申し分のない保護者が見つかりもするが、かつて抱えた問題の大きさや、新しく発生した事件などに翻弄され立ち向かう終盤(PartⅩⅢ「窓のとおく」~PartⅩⅨ「つれて行って」)に分けることができる。

マックス
本名はマックス・レイナー。「はみだしっ子」の中では最年少。酒乱の父に虐待のうえ殺されかけ、逃げ出したところをグレアムたちに拾われて、一緒に旅を続けることになる。でっぱった広くかわいいおでこが特徴。年少らしく泣き虫で甘えん坊な面が目立つが、実はリーダーシップのある性格であることが、成長するうちにみられるようになる。また、マックスは、三原順が高校時代に書いていた「はみだしっ子」の前身的小説の中では一貫して主人公だったキャラクターでもある。原画は、マックスについて描かれた番外編「M」の扉絵。各キャラクターの名前の頭文字を取って描かれた番外編が4人全員分ある。
正面:はみだしっ子シリーズ番外編「M」扉原画
   (1976年『花とゆめ』23号)

第4期 R018
マックス特集

 正面:はみだしっ子 partⅥ
    「レッツ・ダンス・オン!」扉原画
    (1976年『花とゆめ』13号)
  右:はみだしっ子カレンダー原画
    (1979年『花とゆめ』2号)
  左:はみだしっ子 partⅥ
    「レッツ・ダンス・オン!」予告カット原画
    (1976年『花とゆめ』12号)
手前右:はみだしっ子partⅦ
    「夢をごらん」後編予告カット原画
    (1976年『花とゆめ』15号)
手前左:はみだしっ子partⅡ
    「動物園のオリの中」予告カット原画
    (1975年『花とゆめ』12号)

第4期 R019
マックス特集

右のカットは、イースターエッグでお手玉をするマックス。タマゴに足が生え、ひよこを思わせかわいい。今回の展示タイトルにも用いた「復活祭」のイースターエッグは、三原順によって度々描かれるモチーフである。壁に展示した単行本『夢の中悪夢の中』表紙のカラーイラストにも描かれているので探して欲しい。
  正面:はみだしっ子 partⅩ
     「山の上に吹く風は」扉原画
     (1977年『花とゆめ』7号)
   右:はみだしっ子 partⅩⅢ
     「窓のとおく」予告カット原画
     (1978年『花とゆめ』7号)
   左:単行本花とゆめコミックス
     『はみだしっ子』2巻 総扉
     (1976年9月20日)
手前左右:はみだしっ子番外編
     「ボクも友達」予告カット原画
     (1976年『花とゆめ』17号)

第4期 R020
マックス特集

「はみだしっ子」PartⅩ「山の上に吹く風は」より1ページ。マックスが雪山の中殺されそうになり、発砲して人を殺めてしまうシーン。この事件を隠そうとするグレアムとアンジーの心の葛藤が、この後の本編の重要なテーマとなってゆく。
正面:はみだしっ子 partⅩ
   「山の上に吹く風は」第3回本文原画
   (1977年『花とゆめ』8号)

第4期 R021
マックス特集

イラスト詩集『ハッシャ バイ』より3枚。中央イラストは、7匹の子ひつじの中にマックスが紛れている。くしくも今年はひつじ(未)年。壁にもひつじのイラストを展示しているが、そちらは、36年前の1979年、ひつじ(未)年のカレンダー用に描かれた1枚である。
正面:『ハッシャ バイ』箱カバーイラスト原画
   (1977年7月25日)
左右:『ハッシャ バイ』イラスト原画
   (1977年7月25日)
手前:『ハッシャ バイ』
   (1977年7月25日)

第4期 R022
マックス特集

左は番外編「長い夜」の扉絵。例えば壁の中段右端や、R019のイラストなどにも見られるように、マックスは月とともに描かれることが多い。
正面:はみだしっ子 partⅩⅢ
   「窓のとおく」前編 扉原画
   (1978年『花とゆめ』8号)
 右:はみだしっ子 partⅩⅠ
   「奴らが消えた夜」予告カット原画
   (1977年『花とゆめ』15号)
 左:はみだしっ子番外編
   「長い夜」扉原画
   (1977年『花とゆめ』14号)

第4期 R023
マックス特集

さまざまな大人との出会いと別れを繰り返したのち、申し分のない家庭の養子となったはみだしっ子の4人。養父母と4人が、お互いの距離を模索していた頃、マックスが養母パムに、母ができたことの嬉しさを表したシーン。
正面:はみだしっ子 partⅩⅧ
   「ブルーカラー」本文原画
   (1979年『花とゆめ』14号)

第4期 R024
マックス特集

物語終盤、4人は事件に巻き込まれ裁判沙汰に陥ってしまう。その渦中、養父ジャックがマックスに平等についての話をするシーン。本年1月27日、@bowwowolf氏がこのシーンを引用して、短文投稿サイトTwitterに投稿して話題を呼んだ。現在2万リツイートを超え、今なおリツイートが伸び続けている。該当ツイートは以下である。
"最近「平等という建前で弱者も強者も老若男女構わず全員平等にぶん殴ってたら弱い奴から倒れるだろ」(大意)という意見を読んで、三原順「はみだしっ子」の「橋の下の例え話」を思い出した。こういうことなんだよな(白泉社文庫版5巻261頁)" 2015-01-27 22:10:56
bowwowolf氏は、このツイートの後さらに、
"この「橋の下の例え話」は、実は作中では主人公たちの敵側の弁護士の手法を指しています。しかし現実の我々には強烈に印象に残るものでしょう。ぜひ実際に作品を読んでほしいと思っています。" 2015-01-29 23:42:23
と続けている。
この「橋の下」の論理は正論だが、使い方次第で弱者を装う者をも救ってしまうということなどが、「はみだしっ子」作中では指摘される。弱者とは、それを助けるとはどういうことか、三原作品はそうしたことを深く考えさせてくれるのである。
正面:はみだしっ子 partⅩⅨ 「つれて行って」本文原画
   (1980年『花とゆめ』10号)
 右:はみだしっ子 partⅩⅨ 「つれて行って」予告カット原画
   (1980年『花とゆめ』20号)

第4期 R025
デビューまで

手前右は、三原順のペンネームが誕生した瞬間を示すメモ帳。"三原綱木"は、彼女が当時好きだった元ブルー・コメッツのギタリストの名前であり、「じゅん」の字も色々模索した上で、結局本名の順子から取ることにしたことがわかる。展示してあるLPは三原順の遺品の中にあったブルー・コメッツのもの。奥左は、「はみだしっ子」の原型小説「Day Tripper」が書かれた高校時代のノートの束。奥右はデビューしてからのものだが、「はみだしっ子」の掲載開始前に何度も描き直されたといわれるボツネーム用のノートである。

中央:「はみだしっ子」原型小説ノート11冊
 奥:「はみだしっ子」ボツネーム帳
手前:亜土ちゃんミニノート 3冊
 左:『ヨーロッパのブルー・コメッツ』
   (ブルー・コメッツ/1968年)

第4期 R026
デビューまで

正面原画は『別冊マーガレット』72年9月号の「第51回別マまんがスクール」で佳作をとった「マッド・ベイビィ」の扉。この回のスクールは、受賞者ページに名香智子、くらもちふさこ、倉持知子と、後にプロとして大活躍するメンバーが名を連ねていた。黒を基調に四角のコマを並べたデザイン性の高いこの扉は、その中にあってもひときわ目をひくものであった。第56回、「ぼくらのお見合い」で金賞をとってデビュー。それまでの評では、「とにかくストーリーがわかりにくく、ひとりよがりである」という注意が多かったが、徹底してわかりやすくしたことで金賞受賞となった。白泉社文庫『三原順傑作選'70s』の和田慎二による解説にこういう一節がある。
「…だが彼女の投稿作を目にする機会に恵まれた常連投稿者にとっては、いやおうなしに意識せざるを得ない作家であった。この時期にファンと敵(ライバル)を作っていったことを彼女自身は知るまい」。
iPadでは、三原順の投稿作への講評が読める。左の雑誌はデビュー作掲載の『別冊マーガレット』73年3月号(前月の2月号にて、第56回別マまんがスクール金賞受賞)。

正面:「マッドベイビィ」扉原画
   (1973年『別冊マーガレット』9月号)
 右:『別冊マーガレット』1973年3月号

第4期 R027
三原順の本棚 1

[左]
『The Dangerous Journey』【遺品】
(Tove Jansson 著
/Ernest Benn 刊行/1978年)
[中央]
はみだしっ子 PartⅩⅠ
「奴らが消えた夜」本文より【原画】
(初出:1977年『花とゆめ』21号)
「はみだしっ子」PartⅩⅠ「奴らが消えた夜」より。雪山事件以来離れ離れになったマックスが、偶然ムーミンパークで発見されるシーン。
遺品の洋書は、トーベ=ヤンソンのムーミン絵本の英語版である。この絵本の日本語版は1980年刊『ムーミン谷へのふしぎな旅』で、三原順はこのシリーズを翻訳出版以前に洋書版で楽しんでいたものと思われる。ただし、ここでのムーミンパークのムーミンは、あだながムーミンだった親しい友人からの発想であった可能性が高い。

第4期 R028
三原順の本棚 2

[手前]
『イエペは帽子が大好き』【遺品】
(石亀泰郎 写真/文化出版局編集部 著/1978年)
[中央]
「帽子物語」扉より【原画】
(初出:1992年『花曜日』2月10日 冬の号)
1992年に描かれた「帽子物語」は、24ページの中に三原順の魅力が詰まった珠玉の短編。恋多き母親に育てられ、次々と変わる家族と生活環境の中で、帽子を砦に他人を締め出して自分を守り続けた少年が、本当は誰かに自分の帽子を脱がせて欲しいと願い続けているという話である。珍しくハッピーエンドであり、優しく切ない読後感に包まれる。
遺品の写真絵本は、帽子好きの少年の話。著者の石亀氏がデンマークの公園で出会った、100の帽子を持つという子供をモデルにしている。三原順が「帽子物語」の着想を得た絵本なのであろう。ストーリーには「帽子物語」と似たところはなく、元気な少年のお話である。

第4期 R029
三原順の本棚 3

[手前]
『殺人百科 陰の隣人としての犯罪者たち』【遺品】
(佐木隆三/徳間書店/1977年)
[中央]
はみだしっ子partⅩⅨ
「つれて行って」本文より【原画】
(初出:1980年『花とゆめ』1号)
「はみだしっ子」PartⅩⅨ「つれて行って」で、マックスがけんか相手のリッチーに臆病者と言われるのがいやで階段をのぼってしまうシーン。この後の乱闘で、グレアムはリッチーに腹を刺され、後に裁判へと発展していく事件となる。
このシーンが『殺人百科』にヒントを得ていることは、「はみだしっ子」の名言で構成された『はみだしっ子語録』の中で、三原順自身により記されている。『殺人百科』は、「復讐するは我にあり」などで知られるノンフィクション作家の佐木隆三が、徳間書店『問題小説』に1976年2月号から連載した14話を単行本にまとめたもの。いずれも実際の殺人事件への取材をもとに書かれており、第1話「醒めた友情」に、度胸を試され階段をのぼってしまった男の事件がある。

第4期 R030
三原順と音楽 1

[左]
『Ⅳ』【遺品】
(レッド・ツェッペリン/1971年)
[中央]
はみだしっ子partⅤ
「階段のむこうには…」本文より【原画】
(初出:1976年『花とゆめ』8号)
「はみだしっ子」PartⅤ「階段のむこうには…」で、グレアムのことを、母を殺した人殺しだと言うエイダに、本当の人殺しを教えてやろうか?とアンジーがナイフを振り上げる鮮烈なシーン。階段の上で煌くまぶしい光のイメージは、本作で繰り返し使われている。
また、隣のR029もそうだが、階段が登場する印象的なシーンが三原作品には時々登場する。三原順と階段といえば、「天国への階段」である。展示した遺品のレコードにも収録されているこの曲は、彼女が創作中に繰り返し聴いていたことで知られている(「特別対談 三原順v.s.くらもちふさこ」『はみだしっ子全コレクション』より)。「階段のむこうには…」では、グレアムの自殺した叔母のことを「おばちゃまは自殺によって天国への階段を踏み外した」と描かれており、このPart全体を通して、この曲のイメージが色濃く感じられる。
ケース内右の遺品のノートには、「天国への階段」の訳詩が書かれている。三原自身が翻訳を試みたものと思われる。

第4期 R031
三原順と音楽 2

[手前]
『ひとりぼっちの野原/つれていって』【遺品】
(ザ・キャッツ/1971年)
[中央]
「ラスト・ショー」本文より【原画】
(初出:1974年『別冊マーガレット』12月号)
「つれて行って」は「はみだしっ子」最終編のタイトルで知られるが、三原作品の中で繰り返し使われる象徴的なフレーズ。ザ・キャッツ『ひとりぼっちの野原/つれていって』 は1971年の曲。小鳥に向かって、「つれて行ってよ、空の上に」と語りかけるような静かなナンバー。鳥もまた、三原作品でしばしば象徴的に使われるイメージである。
原画は「はみだしっ子」が始まる直前の1974年に発表された「ラスト・ショー」で、少年がサーカス団の先輩に何故ショーをするのか?と尋ねた後のシーン。背景に「TAKE ME WITH YOU」とともに「OCTOPUS'S GARDEN」の文字が小さく描かれている。1982年「はみだしっ子」完結後の番外編のタイトルは「オクトパス・ガーデン」であった。「つれて行って」と「オクトパス・ガーデン」のイメージが、作品が始まる前にすでにあったことは興味深い。少なくとも8年の間、三原が抱き続けたイメージであったのである。

第4期 R032
三原順と音楽 3

[右]
『天使の歌声/エンジェル・クレア』【遺品】
(アート・ガーファンクル/1973年)
[中央]
はみだしっ子partⅩ
「山の上に吹く風は」本文より【原画】
(初出:1977年『花とゆめ』7号)
「はみだしっ子」partⅩ「山の上に吹く風は」で、銀行強盗をして逃走中の犯人ジョイが雪山で拳銃自殺をした後、マックスがジョイの死体を思うシーン。
遺品のレコードは、サイモン&ガーファンクルのアート・ガーファンクルの1stソロアルバム。この中の「魂は何処へ」に「宇宙飛行士は月に向かう死者の魂を通り過ぎるかい?」 というフレーズがあり、本シーンのマックスのセリフのヒントになっていると思われる。なお、同アルバムの「木の葉は落ちて(FEUILLES-OH)」という曲が、初期短編「赤い風船のささやき」のイメージになっていることは、鈴木光明著『続・少女まんが入門』の中で紹介されている。
三原の遺品レコードで同じものが3枚確認できたのは、このアルバムと、「天国への階段」が入ったレッド・ツェッペリン『IV』 の2点である。いずれも相当に聴き込んだのであろう。