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●第1章 すべてはヴェネチアから始まった
場所を、米沢嘉博記念図書館となるビルに移して、話は本題へと進んでいきます―――
森川 まずは、どういういきさつでこの図書館の設立へ向けた話が始まったのかということを、私の視点から振り返ってみたいと思います。私にとって、それは、米沢さんと最初に出会い、そして協働させて頂くことになった、一つの展覧会の仕事から始まっています。
  私が明治大学の教員になる5年近く前のことですが、2003年の夏に国際交流基金から依頼があり、私はイタリアで翌年開かれるヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の、日本館展示のコミッショナーをすることになりました。通常はそのコミッショナーが、実力のある建築家を何人か選んで、「日本代表」の形でその作品展を構成するわけです。そんな強力な役職に、当時まだ32歳で、「秋葉原の研究」などという建築の中枢からかけ離れたことをやっていた私がいきなり指名されたのは、ある種の政治空白によるアクシデントみたいなものでした。だからこそ、かなり自由にやってもよいだろうと踏んだわけですが。

そこでテーマを『おたく』にして、建築家の代わりにおたく業界の方々を出展者として招き、おたくの空間や「場」を再現的に展示する、という企画を組み立てました。当然、おたくの「場」としてもっとも独特かつ重要なものの一つがコミックマーケットであり、これを展示するとしたら、その出展者はコミックマーケット準備会以外考えられません。これは、企画の初期の段階からはっきりしていました。ただ当時の私は、コミケに一般参加はしていたものの、米沢さんを始めとする準備会の方々とは全く面識がありませんでした。なので、なんとかツテをたどって米沢さんの連絡先を手に入れて、いきなり「はじめまして」で始まる「国際建築展出展のお願い」を送るという、われながら怪しいアプローチをせざるを得ませんでした。結果、お目にかかることになったのが2003年の11月で、それが米沢さん、英子さん、安田さんとの初顔合わせとなりました。

初会合に臨むにあたって、私は非常に不安でした。国際建築展で「おたく」をテーマにするということ自体、かなり突飛なことですし、たとえ理屈の部分でわかって頂けたとしても、何をどう展示するかという具体的なイメージが湧かなければ、承諾しにくいだろうと思ったからです。そこで、一つ一つの机をサークルカットで表現する形で、コミックマーケットの巨大な会場模型を作るという展示案を、あらかじめ絵にして持って行きました。すると米沢さんが「私も同じことを考えていた」とおっしゃって、最初から具体的な次元で話が進み出したのです。そのことが強く印象に残っています。そしてその場で出展を引き受けて下さったので、びっくりしました。現場が海外ですし、まずは「少し考えさせてくれ」と言われると思っていましたから。
安田 最初は建築展でコミケットに何ができるのか? という疑問は正直ありました。コミケットみたいなその時だけの催しと建築展に何の接点があるのかと。米沢は、一番遠いからこそ何かができるのではないか、みたいなことをそのとき言っていたのですが、私は、最初は「また、無茶なことを」と思いました(苦笑)。
森川 現地で、作った展示を見て、どう思われましたか?
(ビエンナーレのコミケットの展示)
安田 5.4mの本棚を作って、そこに米沢と里見が選んだ初期から今までの同人誌を並べて見せたときは、花が咲いたような感じになり、コミケットの歴史を思い出させてくれるようなものになりました。
  それまでどうなることやらと思っていたのですが、これと「コミケの箱庭」を組み合わせて、やっと実感がわいたというか、空間を構成できたという意味では、これもひとつの建築なのかなと、改めて認識できました。そして、日本館の展示がとてもコミケット的に凝縮されていていたのが印象的でした。コミケットはとても貧乏性で、空いているところには何かを置かないと気が済まないところがあるのですけど、同じ感覚が展示全体に出ていましたね。あの濃度はよそでは真似のできない日本ならではの展示なんじゃないかと。
市川 私は、本業でイタリアには行けなかったので、写真でしか見ていないのですが、何だか曼荼羅のような作りであり、非常にポップな印象を受けました。「場」を作る、「空間」を作るという意味では、コミケと建築はそれほど遠いことではないとは思います。米沢も実際に行ってみて、そう思ったのではないでしょうか? 
森川 ポップな印象と言えば、あの展示でこだわった要素の一つに、蛍光灯の光があります。ヨーロッパの商業空間ではあまり蛍光灯は使わないのですが、それを意識して、敢えて蛍光灯の光で展示室を満たしたのです。おかげで、「まるで日本にいるみたいだ」という反応をけっこうもらいました。
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