明治大学 平成17年度現代的教育ニーズ取組支援プログラム
広域連携支援プログラム-千代田区=首都圏ECM-
本プログラムは、文部科学省が公募する、平成17年度「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)に採択されました。」
現代GP採択関連講座
市区長・教育長リレー講座「子供と地域の街づくり」―街づくりにおける広域連携の枠組みつくリ―
[報告書]  PDFPDF版
開催日時:平成17年11月2日(水) 参加人数:参加人数32人
講師:岐阜県美濃市長石川道政 テーマ:国際レベルの教育と文化の向上
 私はもともと行政出身ではなく、100年続く美濃和紙の紙商の3 代目で息子が4 代目になります。33歳のときに教育委員になりました。この町のために役に立つ人間にならなければならないと思い、50 代になったら仕事のすべてを社員に任せてボランティアをしようと決意しました。1991年に議員になり、95年に市長となり、現在3期目になります。元気のよい町を作るためには教育面に力を入れ人間力を向上させていくことが大事であります。そのためには女性のパワーをどのように活用していくかが当初の課題でした。今、市の色々な役職の34%が女性です。そして、町づくりの主役は市民であることを第一とし、「街のよさを再認識する」「市民参加の環境づくり」「街の特性を最大限に生かす」の3つをテーマにし「住みたい町、訪れたい町、美濃市」づくりを目指しております。
美濃市
 美濃市は日本の真ん中に位置し、市の中心には清流長良川が流れ、東海北陸自動車道と東海環状自動車道の結接点でもあります。2万4千人が住む小さな街です。町の中心にあるうだつの町並みは9.3ヘクタールの電線の地中化も終り、平成16 年度に都市景観大賞「美しいまちなみ大賞」を受賞しました。また、町並み案内など、市民は多くの活動にボランティアとして、無償で参加しています。美濃の特性を生かし、スローライフを四季を通じて楽しめる町づくりを市民とともに進めています。平成9年からは「美濃・紙の芸術村事業」がスタートしました。美濃和紙と交わった作品を作るということで海外から様々なジャンルのアーティストを招聘します。市が支給するのは旅費と月5万円の生活費のみです。滞在される3ヶ月のホームステイの世話は全部市民がします。アーティストと美濃市をつなぐのは市民なのです。この事業は平成15 年度国際交流基金地域交流振興賞を受賞しました。9年間で25カ国56人を招聘しました。アーティストとの交流から生まれた和紙にまつわる創作市民ミュージカルは毎年開催されています。
 また、ビックイベントとして「美濃和紙あかりアート展」があります。このイベントはうだつの町並みを会場に和紙によるあかりのオブジェの作品を展示しますが、国内はもとより、海外からも作品が出展され、規模は年々大きくなっています。2日間開催し、1日当たり5万人が訪れます。開催時期には美濃市近辺のホテルはすべて一杯となるくらい大盛況です。そして、このイベントは平成14 年にはふるさとイベント大賞を受賞しました。又、「あかりアート」は今年の愛知万博に無料で招聘され、展示期間120日間で600人の市民がボランティアで参加しました。市からは昼夜の2000円のお弁当代のみを支給しただけでした。このような活動を通じ、多くの著名人が美濃市のファンになってくださり、いろいろな活動に無償で協力してくれています。「あかりアート展」は市で開催すれば5000 万円かかるかもしれませんが、市からは市民が組織した実行委員会に800 万円の補助金のみ出し、全部市民が運営しています。このように市民パワーで町には賑わいがうまれています。
美濃市の教育
 次に美濃市の教育についてお話をします。教育とは「体験とふれあい、人と文化と交流作り」と思っています。(1)「心豊かでたくましい人材の育成」(2)「スローライフの時代にふさわしい自己実現」(3)「地域の活力を高める」(4)「支えあう町づくり」の4つをテーマに21 世紀の多様性のある社会の中で自然や文化、伝統に根ざした豊かな社会に住む人づくりを進めています。小中学生には基礎・基本を学ぶ教育環境が必要です。
 まず第1に学校再編成をしました。バランスのよい教育環境を作るということで、平成12年度から市民への説明会を行い、平成15年度にまず11小学校を8小学校に、さらに平成16年度には8小学校から6小学校に、すべて複式を解消しながら、概ね30人学級を実現しました。
 第2に少人数学習指導を模索しました。平成13年度アンケートを取り、平成15年度から複数教師による授業、少人数による授業を理解度に応じて、どちらも行っています。
 第3にIT 時代には豊かな感性・判断力を育てることが大事であると考え、図書館教育の充実を図りました。
 平成15年度より、すべての小中学校に専門の司書職員を配置し、始めたころより30倍の図書の利用に増えたところもあります。
 第4には英語教育の充実です。小学校1 年生から6 年生まで、年間22 時間以上、中学校では週1時間、すべての学校にAET並びに民間の英会話が出来るような嘱託職員を配置しました。
 第5に国際理解、文化・芸術など、幅広い分野に対応できる子どもたちをとの願いで小学6年生全員に北海道士幌町とのフレンドシップ交流事業を行いました。色々な体験をさせるため、船で行き、全行程6日間のうち、2日間ホームスティさせていただき、また、全員違う学校のグループ構成で農業体験他をさせたりします。親離れ、子離れ、自立のため本当によい経験で保護者の方には大好評です。
 美濃市独自の学校教育としては、伝統文化の継承、体験活動を学校づくりに生かそうと、4年生全員には紙漉き体験、小学校6年生、中学校3年生全員は自分の卒業証書を自分で漉いています。農産物の生産、販売を体験する学校、500年以上続くヒンココ祭りをする学校。150年続く仁輪加(にわか)をする学校。これは美濃弁で行う風刺劇で必ず「おち」がなければいけません。水難事故防止を祈願する地蔵流しなど、各校競って、地区にまつわる伝統ある行事や地区の特長を取り入れながらの特色ある学校づくりをしています。また、子供たちは、学習成果を地域社会で活かすボランティア活動をしています。あかりアート展の手伝いを高校生や中学生が、小学生は障害者や高齢者の買い物ボランティアをしています。高齢者からは個人のご指名があったりしてとても好評です。またジュニアリーダー研修会も行っています。そして、広い視野を持ち、町のよさを知るため、サイクリングで市内を回るわくわくチャレンジなど体験活動も重視しています。
 美濃市は、子供から大人まで、一市民・一芸一スポーツ一ボランティアを合言葉に月一回のボランティアを市民が実践しています。又、安心して市民に活動してもらおうと平成14年から5人以上のグループなら誰でも加入でき、指導者、参加者共に補償される美濃いきいき保険を作りました。市民全員が対象です。市民のパワーあふれる街ですので、ぜひ皆さんも来ていただいて楽しんでいってください。
【主な質疑応答を抜粋
Q: 市長さんになって10年で人口は増えましたか?
A: 1200人減っています。結婚しない若者が増えていて子供が増えないのです。保育園の待機児は0です。無理に人口を増やすことはないと思っています。美濃市の高齢化率は24%です。現在、行政コストは市民1人当たり36万円。あと、6万円減らせば合併しなくてもやっていけます。私が市長になってからすべての面でコストダウンを図ってきました。約120億円あった支出を88億円に減らし、余計な支出はしないで、経費を削減するだけでなく、私がマネーメイキングを頑張ろうと特別交付税、国土交通省のまちづくり交付金事業など、国や県の金を沢山活用していろいろやっています。
Q: 市民ボランティアの協力を得るためのご苦労は?
A: 女性職員を登用しました。また当初、教育委員、市のPTA、民生委員など市の役職の殆どが男性だったのですが、女性の登用目標50%を目指し、女性にもどんどん役職をお願いしてきました。庁内にいきいき女性室を設置し、いろいろな活動で輝く女性を称えました。女性の役職登用割合は34%、ボランティア団体は一気に60団体できました。
Q: 小さい町を選ぶメリットまた思いを聞かせてください
A: 市長の顔が見える、市民一人ひとりがわかるといった直接民主主義ができるのは2 万人から3 万人が限界です。外国で言うコミュニティとは教会の鐘が届く範囲のことです。美濃は117平方kmで、85%が山、15%が住宅地です。行政もものすごい合理化を推し進めていて、たとえば、市民に「公園を造るのに、機材だけ貸すからやってくれ」とお願いする。いわゆる道普請です。市が施行したら、1億円かかる工事も美濃市では2,000万円で出来ます。これは5〜10万人になったらできないことです。
Q: 美濃市のHPなどを見ても市長さんの名前は一つも出てきませんが。
A: 市民が主役なのです。職員には市民に相談されたら「市民の立場にたって話せ」と言っています。いろんな賞はすべて市民がもらっています。それを見て喜ぶのが職員だと思います。結局、市民の協力を得ることができるので得なのです。
Q: IターンUターンなどありますが、若い人を取り込む政策はされていますか?
A: うちは中々帰ってきません。少子高齢化が進みます。しかし団塊の世代がお金を持って戻ってくるのを期待しています。有能な人たち向けにうだつ基金というのを作りまして、うだつをあげたい会社や人のため、無担保、無保証で出資には5000万円、貸し付けは300万円という制度を作りました。成功すればよいと思って います。


前のページに戻る チェーンプロジェクト概要GPニューストップページ │ このページのトップへ
明治大学トップへ 商学部トップへ 生涯学習・学校教育 文部科学省
Copyright (C) 2005 Meiji University, All rights reserved.