学生・POLARIS【ポラリス】・大学 — 若者は先端科学を超えるか —

13:00~14:30
アカデミーコモン2F ROOM-B(A6会議室)
コーディネーター:勝田 忠広

市民社会と科学技術政策研究所(POLARIS)による、現代の科学技術が社会に及ぼす課題について「見て、触れて、考える」を重視した実践的試みを報告します。第1部では、現在取り組んでいる2つの挑戦的な研究を、はじめて一般に紹介します。第2部では、現役の大学生を交えて、先端科学技術とその政策に関する「共通認識」のあり方を参加者の皆さんと探ります。

第1部 先端科学技術に翻弄される社会 —研究中間報告—

1) 機械・深層学習を用いた科学的根拠に基づくエネルギー・原子力政策の手法の確立

一般的には、2011年3月の福島第一原子力発電所事故について「直接的原因は地震である」とされています。その結果、原発の安全対策や政府の安全規制は新しくはなりましたが、エネルギー・原子力政策について根本的な改善はされていません。本当にそれで十分なのでしょうか?本研究では、事故の「根本的・間接的原因は政策にある」という独自の視点で、将来の望ましいエネルギー政策のあり方を科学的・定量的に求めます。現在の第1ステップでは、福島事故以前に行われていた、原子力政策を決定するための政府の審議会を対象に、その大量の議事録をデータ化して定量的な分析を行っています。その結果、政府や利害関係者による無責任な議論の姿が見えてきました (明治大学2019年度重点研究助成)。

2) 人工知能の軍事技術への導入に関する調査:市民社会と科学技術政策からの分析

市民生活と同様に軍事技術へ導入され始めているAI(人工知能)技術。すでに国連では、直接的な兵器への導入を念頭に、人間の関与なしに攻撃を行うと予想されている「自律型致死兵器システム(LAWS)」の議論が行われています。また報道機関や市民団体などはこの技術を「殺人ロボット」「AI兵器」と名付け、重大で深刻な問題だと主張しています。一体、この技術の何が怖いのでしょうか?また、その怖さは技術的に正しいのでしょうか?本研究では、この本質的な課題を明らかにし、技術的知見に基づく独立した立場から、望ましい政策や制度を求める事を目的としています。現在、技術への理解や価値観などの利害関係者への意識調査、またLAWSの技術的課題や将来の実現性の調査を行っており、新しい技術に対峙する社会のあり方を示唆する興味深い結果が集まりつつあります(新技術振興渡辺記念会2019年度調査研究助成)。

第2部 学生と大学、科学技術と政策

2018年度に開催した公開連続講座「市民社会は最新の科学技術に追いついているのか?」では、ロボット、ドローン、AI、サイバーセキュリティをテーマに、大学生と企業の実務者や研究者、さらに実機を使ったデモを使い、実践的な勉強会を行いました(セコム科学技術振興財団2018年度助成)。今回は、公開講座に参加した明治大学の現役大学生を交え「最新の科学技術」に関するトークセッションを行います。これからの時代に必要な「科学技術に対する共通認識」について、文系の学生や大学の役割や可能性を議論します。

勝田 忠広
勝田 忠広(法学部 専任教授)

専門は原子力工学・原子力政策。原子力エネルギーに関する工学的、社会的、政策的課題を研究している。原子力規制委員会の原子炉安全専門審査会、新規制基準の検討チーム等の委員。明治大学「市民社会と科学技術政策研究所」代表として、先端科学の社会的影響等に関する研究や公開講座を行っている。

他参加予定者
勝田 忠広(明治大学法学部専任教授)、平田 知義(市民社会と科学技術政策研究所客員研究員)、明治大学学生(現役大学生2名)
その他の情報
明治大学特定課題研究ユニット「市民社会と科学技術政策研究所」(POLARIS)