大学院特別公開講座(理工学研究科)
持続可能性を求めて
〜環境を考える。資源・エネルギーを考える〜
主宰講師:藤井 石根(明治大学理工学部教授)
10月〜11月 土曜日 13:00〜14:30 全7回

月〜11月 土曜日 13:00〜14:30 14,000円(全7回)

講座趣旨:
 一昨年、京都で開催された「地球温暖化防止に関する国際会議,略称COP3」でわが国は1990年比で6%のCO2排出削減を公約した。しかし、既にその実現は難しいとの見方からCO2排出枠の購入や外国に自然エネルギー利用拡大もしくは植林等に手を貸すことで、この公約を果たそうとしている。そもそもCOP3で決まったCO2の排出削減量は、たとえ各国がこれを守ったとしても地球温暖化が防止できると言った類のものではない。大気中のCO2濃度をこれ以上にしない為には同排出量を60%もカットしなければならないとする見方もあり,このままでは我々の将来は無いとする厳しい意見もある。
 そこで本講座では,表題の問題は他人任せでは済まされない一人一人の問題との観点から講師、受講者共々当事者的立場で当該テーマについての知見や情報の一方的な提供に止まらず,意見交換の場をつくることも大きな目的の一つとしている。そのため、とかく大学の講義に有り勝ちな極限られた領域を受講者は概して受動的な立場で受講すると言ったスタイルを脱して当該テーマを多角的に捉えるべく,この分野に造詣の深い多彩な講師をお迎えして種々な内容の話のご提供を願うと共に,質問や意見交換の時間をより多く設けることにしている。無論、多くの人達の受講を期待しているが、特に21世紀を担うであろう若い人達の積極的な参加を切望している。

講義内容:
第1講: 持続可能な社会をどう構築するか 〜その背景と将来の課題〜 (10月7日)

      持続可能な社会は「人と環境の両方に優しい社会」で,こうした社会を21世紀にできるだけ速やかに実現するこ
     とが我々にとって大きな課題である。本講では21世紀に目指す社会像、持続可能な社会をどう実現して行くか
     日本とスエーデンの事例を検証しつつ,その概略を明らかにする。(小沢 徳太郎)

第2講:環境マネジメントと企業経営 (10月14日)

      1996年9月,国際標準化機構(ISO)からISO14000シリーズ「環境マネジメントシステム」が発行された。
     これは環境のパスポートと一般に言われ、その認証取得数は我が国が世界有数と言われている。この講義では、
     その内容を紹介すると共に,地球環境問題と関連させつつ,企業経営にどうこれを生かすかについて論ずる。(大滝 厚) 

第3講:21世紀は資源、エネルギー,そして環境の時代〜その対応をドイツに学ぶ〜(10月21日)

      ドイツは先進諸国の中でも,特に環境意識が高く,環境対策も進んでいる。しかも,省資源,省エネルギーの点
     で大きく寄与するリサイクル,リユースの政策は進んでいる。しからばなぜこのように環境先進国として世界で注目
     される国になったのか,その歴史的な背景を明らかにすると共に環境対策の現状,リサイクルの現状,企業の動など
     について述べ,ドイツに真似できる事とできない事などについても触れる。(織田 正雄)

第4講:「地球生命主義」に基づくゼロ・エミッションシステムの構築 (10月28日)

      地球の森林,農業資源を高付加価値に活用した産業,技術を創出し,ゼロエミッションを目指したコミュニティ
     デザインを実践する国内外の自治体,企業の事例を取り上げる。更に,分散型エネルギー時代に於ける燃料電池の
     可能性についても言及する。(赤池 学)

第5講:環的中日本主義の勧め 〜日本型リサイクル社会の構築に向けて〜(11月11日)

     環境意識については日本にもかなり高いものがかつては存在していた。しかし,現況は衆知の通りで,我々は21
    世紀に向けて多くの難題に直面している。そこで,本講では,第一次産業の復活を基軸として,どう環境保全型循環型
    の社会を構築していくかを論じる。(篠原 孝)

第6講:エネルギー・環境・自動車からみる21世紀 〜21世紀に人類は生き残れるか〜 (11月18日)

      20世紀は,石油などの化石燃料をふんだんに使い,驚異的な経済発展を遂げた世紀であったが来たる21世紀は
     化石燃料の枯渇,深刻な環境問題(地球温暖化などの)が現実のものとなり,人類の生存が危ぶまれる状況が到来
     する。21世紀に人類が生き延びる方途の具体策を論じる。(齋藤 武雄) 

第7講:〈総括〉現況にみる持続可能へのシナリオ (11月25日)

      地球の大きさ,我々の取り巻く環境は我々の勝手気ままの振る舞いを許すに足るものであると考えていた。
     しかし,自然を支配している循環系なるものの中に我々の行為,振る舞いがそぐわない限り,持続の可能性は保障
     されないことが判ってきた。そうした観点から昨今の我々の生活,社会システム,巨大技術,それにハイテク技術
     なるものがかの循環系にどう係わりが持てるのか,この辺を切り口に今後の有り得る姿を模索してみる。(藤井 石根)

講師紹介:

  小沢 徳太郎(おざわ とくたろう)
   環境問題スペシャリスト。前スエーデン大使館科学技術部環境保護オブザーバー(エネルギー・環境問題担当)。
  著書に「いま,環境・エネルギー問題を考える」,「21世紀も人間は動物である」等。  大滝 厚(おおたき あつし)   明治大学理工学部教授,工学博士。早稲田大学理工学研究科修了,明治大学助手,助教授を経て現職,デミング賞選考委員会委員,   東京都環境影響評価審議会委員,環境管理規格審議会委員等を務める。著書に「統計的品質管理」,「BASIC統計解析」,「品質管理   のための実験計画法テスト」等多数。
 織田 正雄(おだ まさお)   劾WRジャポン代表取締役社長,慶應義塾大学経済学部卒業,ベルリン工科大学及びベルリン自由大学へ留学,東京銀行入行,
  ラインランド技術検査協会東京事務所長,東銀リサーチセンターナショナル主任研究員,同事務第三部長等を経た後,現職。   日独協会常務理事。著書に「ドイツビジネスガイド」,「ベルリンの壁はこわれた」等。
 赤池 学(あかいけ まなぶ)   潟ニバーサルデザイン総合研究所,代表取締役所長,中国対外経済貿易大学客員教授,ジャーナリスト,筑波大学生物学類卒業。
  製造業技術・科学哲学分野を中心とした執筆・評論を行う。地方自治体の地域資源データベース構築事業にも参画。
  著書に「「温まり」の選択」,「株式会社ダーウィン商事」,「世界でいちばん住みたい家」等多数。
 篠原 孝(しのはら たかし)
   農林水産省農業総合研究所研究調整官,京都大学法学部卒業,農林水産省入賞,米国ワシントン大学海洋総合研究所
  及びカンザス州立大学農業経済学部留学,農水省大臣官房企画室企画官,OECD代表部参事官,水産庁企画課長などを経て,現職。
  著書に「第一次産業の復活」,「農的小日本主義の勧め」,「食と農を問い直す」等多数。
 齋藤 武雄(さいとう たけお)
   東北大学大学院教授,工学博士。東北大学大学院博士課程修了,相模工業大学助教授,東北大学工学部助教授,   米国コロラド州立大学客員研究員を経て現職。早くから都市温暖化現象に注目し,熱工学の分野で活躍。著書に「数値電熱学」,   「地球と都市の温暖化」,「移動境界伝熱学」等多数。国際エネルギー財団地域代表,日本機械学会など各学協会で重要ポストを務める。  藤井 石根(ふじい いわね)    明治大学理工学部教授,工学博士。東京工業大学理工学研究科修士課程修了,東京工業大学文部教官助手,明治大学工学部助教授,
  同教授を経て現職。蓄エネルギー,エネルギー変換,太陽エネルギーを中心とした熱工学分野の研究に従事。著書「蓄熱・増熱技術」,   「From Solar Energy to Mechanical Power」,「太陽エネルギー利用技術」等。日本太陽エネルギー学会前会長。

大学院特別公開講座(農学研究科)
農学とバイオテクノロジー
主宰講師:魚住 武司(明治大学農学部教授)
10月〜11月 土曜日 13:00〜14:30 10,000円(全5回)
会場:明治大学駿河台校舎(JR御茶ノ水駅より徒歩3分)
 

講座趣旨:
 「バイオテクノロジー」というのは、「生物を利用する科学技術」を意味する言葉であり、広い意味で農学が永年かかわって来たものですが、最近では、分子生物学、遺伝子工学、細胞工学などの手法が、農学の研究にも必要不可欠のものになっています。この講座では、動物、植物、微生物を人類の永続的な生存に役立てるための研究が、これらの最新手法を用い  てどのように展開されつつあるかを、幾つかの例を挙げて解説します。
 大学院修士課程レベルの内容を、一般の方々に理解して頂けるように、出来るだけ易しい  言葉でお伝えいたします。

 

講義内容: 第1講  窒素固定微生物の活用による化学肥料の節約(10月7日)

        窒素は、総ての生物の蛋白質や核酸を作るために必要な成分であり、農作物の
       生産に窒素肥料が必要なのもそのためです。窒素ガス(N2)は空気中に無尽蔵に
       ありますが、動植物はこれを直接利用することができません。根粒菌などの窒素
       固定菌を用いて空中窒素を固定し肥料を節約するための研究について解説します。(魚住武司)

第2講  遺伝子はどのように発現するか(10月14日)

        遺伝子からすべてが始まる? DNAはたった4種類のヌクレオチドが30億個
       も並んだ分子です。その並び方によって、約10万種類の情報が書き込まれています。
       情報の発現を操る仕組みは、意外と単純でもありますが、それなりに巧妙です。
        こうした情報操作を理解しながら生命の営みに思いをはせてみます。(加藤幸雄)

第3講  動物クローニングの本当の意義(10月21日)

         動物クローニングの技術内容の正しい理解をベースに、生物学的意義と産業的応
        用のメリットについて解説します。さらに、ヒトの生殖・移植医療への応用とそれ
        に伴う倫理的問題を考察し、クローン人間誕生の可能性を探ります。(長嶋比呂志)

第4講  DNA鑑定による動物の配偶システムの解析(10月28日)

        DNAフィンガープリント法による動物の親子鑑定で得られた新しい知見を中心
        に、様々な生物種が、自らの子孫(遺伝子)をより多く残すために、どのような配
        偶システム(婚姻制度)を選択しているかを考察します。(太田昭彦)

第5講  種子の眠り(11月 4日)

         種子の眠り(休眠)は、植物自身の生存に必要不可欠であるとともに、食糧生産
        にとっても大変重要です。種子の休眠について概説し、バイオテクノロジーを利用
        した近年の基礎研究とその利用について議論します。(川上直人) 

講師紹介:

  魚住 武司(うおずみ たけし)
   明治大学農学部教授・東京大学名誉教授。1939(昭和14)年兵庫県生まれ。
  東京大学大学院博士課 程修了(農学博士)。鐘淵化学工業(株)発酵研究室員、東京大学農学部助手、助教授、
  教授を経て、現職。微生物の有用酵素と遺伝子を研究。著書「遺伝子工学概論」(コロナ社)など。

  加藤 幸雄(かとう ゆきお)
   明治大学農学部教授。1947(昭和22)年神奈川県生まれ。都立大学大学院理学研究科修士修了、群馬大学大学院
  博士課程修了(医学博士)。群馬大学内分泌研究所(現生体調節研究所)助手、助教授を経て、現職。主に、ホルモン
  遺伝子の発現に関する分子生物学的研究。
  編・共著「ホルモンの分子生物学 全8巻」(学会出版センター)、共訳「基礎生化学」(東京化学同人)など。

  長嶋 比呂志(ながしま ひろし)
   明治大学農学部助教授。1955(昭和30)年兵庫県生まれ。
  東京大学大学院農学系研究科博士課程修了(農学博士)。
  専攻は発生工学、生殖生物学。日清製粉(株)中央研究所、BresaGen Ltd.(オーストラリア)、大阪大学医学部を経て現職。
  著書に「動物の人工生殖」(裳華房)など。

  太田 昭彦(おおた あきひこ)
   明治大学農学部専任講師。1957(昭和32)年神奈川県生まれ。東京大学大学院博士課程修了(農学博士)。
  帝京大学医学部助手、明治大学農学部助手を経て現職。専攻は動物生理学。

  川上 直人(かわかみ なおと)
   明治大学農学部助教授。1961(昭和36)年栃木県生まれ。名古屋大学大学院農学研究科博士課程修了。
  横浜市立大学木原生物学研究所を経て現職。専門は植物生理学。研究テーマは、種子発芽調節のしくみを解明すること。
 

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明治大学リバティ・アカデミー事務局
(千代田区神田駿河台1−1 明治大学12号館3階)

Tel 03−3296−4423
受付時間:(平日)10時〜17時(土曜)10時〜12時
日曜・祭日は休み
2000年度秋期講座10月より約50講座を開講します。
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