今年度の学生懸賞論文には、学生諸君から合わせて79本の応募がありました。そのなかから、2本の優秀論文と5本の佳作論文とが厳密な審査を経て選ばれました。今年度の審査に当たっても、昨年と同様に、2段階方式が踏襲されています。つまり、投稿論文は一次審査を経て79本から22本に絞り込まれ、絞り込まれた22本のなかから、2本の優秀論文と5本の佳作論文とが選抜されました。
審査基準でありますが、第1次審査では、論文の形式的側面である注と参考文献の明記方法に力点をおいて審査しました。第2次審査では、論文の実質的側面である論理展開、自己主張性、独創性に力点をおいて審査しました。
投稿論文には共同論文の形式を採るものが多かったのですが、個人論文の形式を採ったものも少なくありませんでした。
さて、それら投稿論文の全体を見て感じるのは、実に多くの学生諸君が、21世紀初頭の今日の時代に正面から取り組んでいるということです。今日の時代は、グローバル時代、自然環境保護、市場経済といったキーワードで括られるでしょう。今日、戦争、貧困、差別、失業、社会不安が万延しつつあります。出口の見えてこない厳しい不安な時代です。そのような時代であるからこそ、今日の学問は、それらの問題に対する真の解決策を求められているのです。学生諸君の投稿論文のなかに現代という時代を意識した論文が多かったことは、とても素晴らしいことです。
最後に、苦言を呈しておきたいと思います。第1は、投稿論文の多くがWEBサイトを利用し、インターネットによる検索で情報収集を行っていますが、これらの情報の信頼性を吟味して欲しいということです。WEB上に流れる膨大な情報の入手は容易です。論文執筆に当たってこれを利用しない手はありません。しかし、学生諸君には「インターネットに載せることのできる情報だけが載っているのだ」というように考えて欲しいと思います。これら情報を盲信するのではなくて、自分の目、自分の頭、自分の脚でもって事実の確認をすべきです。
第2は、投稿論文をまとめる場合、ペンを握った本人の立脚点を見つめて欲しいということです。どのような論文であっても、原則的には一人の個人が書くものです。しかし、果たしてこの個人は単なる1人の個人なのでしょうか。個人が個人に立脚しながらも、1個人の枠を超えた時、本当の意味での個人の視点を得ることが出来るではないでしょうか。そのような意味における個人としての立脚点を確認して欲しかったと思います。
グローバル時代、自然環境保護、市場経済が抱えている深刻な問題、これは人類が直面している危機と呼んでも良いでしょう。これらにチャレンジしようとする時、学生諸君には、自分自身の目、頭、脚を使いながら、1人の個人を超えた広い個人の視点を大切にして欲しい。これが「来年度には是非投稿してみたい」と思っている学生諸君に対する審査委員長の要望です。
学生時代にひとつの大きな仕事を成し遂げることは、学生諸君にとって長い人生の中の1つの金字塔であり、金メダルとなるはずのものです。
今後とも、学生諸君には自分自身と世界の動向をしっかりと見つめながら、悔いの残らない大学生活を送って欲しいと思います。
懸賞論文委員会 委員長 平沼 高 教授
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