「明治大学広報」
 
第544号(2004年9月1日発行)
論 壇:明治大学の21世紀グランドデザイン策定へ
     学長室専門員長 針谷 敏夫

 本年4月から国立大学が法人化され、日本における大学教育が新しい時代に突入した。各国立大学は法人化により義務づけられた中期計画書を文部科学省へ提出し、新しい大学像を確立するために動き出している。時を同じくして明治大学も納谷廣美新総長兼学長のもと新しい「外部評価に耐えうる」明治大学の創造に向けて動き出している。

 1991年の大学設置基準の大綱化以降、大学の環境はめまぐるしく変化し、18歳人口の減少と進学率の頭打ちに伴い、2007年には進学希望者全入の時代を迎え、大学も学生を選ぶ時代から受験生に選ばれる時代に移ってきた。この間大学設置基準の緩和政策とともに、大学の新設は事前審査から事後評価に変わり、第三者による認証評価も義務づけられ、否応なく私立大学も自己責任、競争原理による教育改革を迫られてきている。

 2003年7月に文科省より「教育の構造改革 画一と受身から自立と創造へ」(注1)が公表され、高等教育をも巻き込んだ人材育成の新たな指針が示された。今年度になると、文科省科学技術・学術審議会人材委員会では「科学技術と社会という視点に立った人材養成を目指して」と題した第三次提言(注2)をまとめ、社会に貢献する人材、社会還元を担う人材の養成に重点を置き、来年度の政策に反映しようとしている。

 また、中央教育審議会の大学分科会においては「21世紀日本の高等教育の将来構想(グランドデザイン)」が議論されており、さらに大学改革の推進が図られようとしている。その構成案では、(1)誰もがいつでも学べる高等教育(ユニバーサル・アクセスの実現)(2)誰もが信頼して学べる高等教育(大学の質保証)(3)世界最高水準の高等教育‥大学院段階(4)「21世紀型市民」の学習需要に応える質の高い高等教育‥学部段階(5)競争的環境の中で国公私それぞれの特色ある発展、の5つの方向性が示されている。特に(5)の項目に関して、「国公私の穏やかな役割分担と適切な競争条件の確保を目指す」とし、「私学助成は傾斜配分の考え方をより徹底しつつ、特別補助や高度化推進経費を中心に拡充する必要がある」としている。このように競争的環境を強め、さらに大学の選別化を図る政策が展開される中、明治大学の進むべき方向は何か、改めて考えなくてはならない。

 本学においても4月から新学部が誕生し、さらに法科大学院をはじめとして3高度専門職業人養成型大学院も発足し、来年度開設の会計大学院も含め新たな顔を見せはじめた。しかし、まだまだ古い体質に依存し、旧来のぬるま湯的体質から抜けきれていないのではないだろうか。大学の教育内容はもとより、教員の質、将来構想、研究、そしてこれからは社会貢献も重要な柱として評価の対象となり、これまでの認識を大転換しなければならない時がきている。常に改革を継続し、これまでの明治大学の殻をうちやぶりグローバルスタンダードへ飛躍するために、早急に明治大学の21世紀グランドデザインを策定しなければならない。

(農学部教授)
 
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