明治大学社会連携促進知財本部(本部長=山元洋理工学部教授)は、文部科学省が2003年7月に公募した「大学知的財産本部整備事業」のモデル校の一つとして採択され、設置から1年が経過した。
この事業の主な目的は、大学の研究成果としての特許をはじめとする知的財産の創出・取得・管理・活用を戦略的に実施するための全学的な体制を構築することに置かれている。
明大では、まず11月に事業を進めるにあたって必要な「社会連携促進知財本部規程」と「同運営委員会規程」を制定した。同時に、本部長のブレインとなる本部員4名(森下正政治経済学部助教授、菊池雅史理工学部教授、長嶋比呂志農学部教授、鈴木研一経営学部教授)の選任とともに、知的財産に関する専門知識と経験を有する8名(現在は10名)を知的財産マネジャーとして契約を結び、本格的なスタートを切った。
なお、この事業を推進するため文部科学省から、前述の知的財産マネジャーの人件費等を含め、2003年度4000万円、2年目となる今年度は昨年度の実績が評価されて500万円増の4500万円が委託事業費として配分を受けることになっている。
知財本部の具体的な活動は、昨年度は2004年3月9日に「都心型産業創造と産官学のコラボレーション」をメインテーマにした開設記念シンポジウムを開催したほか、専任教員の「知的財産に関するアンケート調査」の実施、産官学連携に必要なルール、手続方法、契約書の様式・書式等を掲載した『産官学連携ガイドブック』の作成・発刊などを行なった。
明大の特長と強みを活かした活動として注目を集めているのが、『御知創(ごちそう)会議』と地域地場産業機関・商工会議所・校友会などと連携して開催する『研究・技術交流会』である。
『御知創会議』は、そのユニークなネーミングとこれまでの教員の一方的な特許や研究成果の発表ではなく、企業等の参加者と一緒にブレーンストーミング方式で、ビジネスアイデアに集約していくことで好評を博している。既に、第1回目を本年3月15日、第2回目は7月2日に実施。いずれも定員の50名を超える参加者があり、共同研究の締結や国の公募助成金の申請などに発展している。次回の開催は、来年3月に予定している。
『研究・技術交流会』は、第1回目を名古屋商工会議所の共催および明大校友会愛知県支部の後援によって、本年1月20日に名古屋市で食品・食材をテーマにして開催した。7月27日には、長野県飯田市で環境と精密機械をテーマとして、飯伊地域地場産業振興センターと共催で第2回目を開催した。今回の開催にあたっても、地元長野県校友会の温かい支援を受け、大変盛況であった。第3回目は、新潟県燕・三条市での開催を予定している。
今年度精力的に取り組んでいる活動は、知的財産ポリシーおよび利益相反ポリシーなど基本ポリシーの策定と大学発ベンチャーの創出である。前者に関しては、社会連携促進知財本部および知的資産センターの両運営委員会、理事会の議を経て年内の制定を目指している。後者に関しては、駿河台校舎アカデミーコモン7階に設置されたインキュベーション施設を核に取り組んでいる。第1次利用者募集では、書類選考・プレゼンテーション選考を通過した5グループが6月からこの施設の利用を開始した。なかには、近々会社設立を目指す利用者があり、早くもマスコミ等の注目を集めている
今や、産官学連携による社会への貢献は、教育と研究にならぶ大学の第3の使命として定着し、かつ大学評価の新たな基準となっている。このことから、社会連携知的財産本部では、明大の産官学連携の窓口として、知的財産に関わるワンストップサービスの実現を目指して取り組んでいる。 |