論 壇:変革への試金石 産学連携4つの提言 理事 宗近博邦 |
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いよいよ、大学の生き残りをかけた大競争時代が本格化する。時代の変化や社会要請に適った変革を怠ると大学といえども淘汰される。今や大学の第3の使命、“社会貢献”への真摯な取り組みが喫緊の課題であり、その変革の鍵は産学連携を媒体とした大学イノベーションにあろう。
明治変革も内なる改革だけで十分といえるのか、良い意味での外圧=産学連携をビルトインしてこそ“外に開かれた大学”としてその使命達成が可能となるのではないか。大学人としては新人の身でいささか僭越ではあるが、長年、実業界に身を置いた者として、“産学連携4つの提言”を申し上げたい
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第1は、知財権の商業化や企業間のコーディネート能力に富んだ優秀な民間人材の確保である。これは産学連携が、教育・研究という2大使命とややアプローチを異にする点に起因する。不慣れな産学連携を実り豊かなものにするためには、かかる外部からの人材に対する適切な処遇や身分を教職員制度とは別の専門員の制度として整備・用意する必要があるのではないか。
第2は、企業との双方向的アクセスを可能にするリエゾン組織の機能強化。米国の大学では、必ず企業に対する窓口として強力なリエゾンオフィスの存在がある。TLOひとつをとっても、1教官からの技術移転ではなく大学と企業が組織対組織で協働していく。大学全体として知財を統制管理運用する総合センターを礎に、企業に組織的、能動的に接する機能が重要となる。また企業から直接生きたR&Dニーズを取り込み、共同研究等を推進することも不可欠となろう。
第3に、こうした研究推進方法を裏打ちする教員の評価のあり方を再考し、一層の意識改革を進めることも忘れてはならない。政府が検討中の大学評価ルール対応策としても教官の評価は教育と研究を最重要視しつつ、これらに技術の商業利用、特許の取得、共同研究契約、起業活動等の対外成果を合理的に加味していく工夫が必要なのではないか。中国では、論文の産業化率に応じた研究費配分を国が行なっているし、米国では、教員は自己の研究費以外の研究費を外部調達で賄うのが通常となっているとも聞く。
第4に、学外における産学連携推進の支援組織のネットワーク化である。経産省によると、大学発ベンチャーは前3月末で799社に達しているのに明治発は残念ながらわずか2社にとどまる。インキュベーションやファンド運営等起業支援機能には最もビジネス寄りの知識と経験が必要になる。民間からの直接間接のサポート獲得が必須となる所以であろう。わが明治40万校友は最大の経営リソース。2万人の中小企業経営者、1500人の上場法人役員、連合駿台会等、校友を核に支援の大団円を有機的にネットワーク化するための「仕掛け」についてさらに知恵を絞っていきたい。
明治は今後ますます第3の柱とのリンケージについての研究開発力が問われることになろう。この点、抜本的研究体制強化再構築に向け、今学内で大きく舵が切られようとしているのは誠に正鵠を射たもので喜ばしい限りである。
明治100年の計、新しい使命に向けての全学一層の取り組みを期待している。 |
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