◆平成16年度文部科学省
「法科大学院等専門職大学院形成支援」に採択の
「『プロセス』学業評価システム」について
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明治大学は、文部科学省の平成16年度「法科大学院等専門職大学院の形成支援」で、法科大学院が申請した「『プロセス』学業評価システム」が採択された(本紙545号既報)。その詳細について紹介する。
文部科学省が優れた大学教育改革の取り組みに重点的に財政支援を行う、平成16年度「法科大学院等専門職大学院形成支援」の審査結果が9月15日発表され、明治大学法科大学院が応募した教育プロジェクト「『プロセス』学業評価システム」が、法科大学院等専門職大学院形成支援事業選定委員会で採択された。今年度の「法科大学院等専門職大学院形成支援」は、教育の高度化による制度の発展を目的とした特色ある教育プロジェクトを募集する「教育高度化推進プログラム」と、実践的な教育の推進を目的とした特色ある教育プロジェクトを募集する「実践的教育推進プログラム」が設定されたが、明治大学が採択されたのは、法科大学院を対象とした「実践的教育推進プログラム」であり、10月7日付で通知された今年度の補助金額は960万余円である。
「『プロセス』学業評価システム」の目的は、第1に、履修途中段階の習熟度を踏まえた客観的で透明な成績評価を行うこと、第2に、最終的な成績評価とともにプロセス情報や教育指導上有益な個人情報から構成される「学生学習ファイル」をコンピュータ上に作成して、学生の自主学習や科目間の有機的関連性を踏まえた総合的指導に活用することである。
第1点については、複数教員の担当する科目でも、統一試験問題による定期試験を実施するが、定期試験の結果だけでなく、履修過程における出欠状況、授業中の発言、レポート、小テスト、期末試験などのすべての要素を総合的に勘案する客観的な成績評価基準を明確にして、履修途中段階の習熟度を踏まえた客観的で透明な成績評価を行おうというものである。
第2点については、まず各学生の履修する法律基本科目(憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法)について、学生毎に、最終的な成績評価だけでなく、LANを利用した学習システム(e―ラーニング)による自主学習状況、出欠状況、課題提出による理解度状況、小テストの成績による当該科目の習熟度状況などのプロセス情報、および教育指導に有益と思われる個人情報をコンピュータに入力して「学習支援カルテ」を作成する。そして「学習支援カルテ」に入力されたデータは当該学生に交付され、より効果的な自学自習のために活用されることがねらいであるが、それとともに科目担当教員は、科目間の有機的な相関関係を踏まえて、関連する各科目の成績等に基づく総合的指導を行い、さらに教員の指示のもとに教育補助講師が個別学習指導を行う。
この一連のプロセスは教員の授業改善などにも役立つ。課題提出などのプロセス情報や授業運営には、文部科学省の「特色ある大学教育支援プログラム(COL)」に採択された学内の「ネットワークを用いた教育学習支援システム『Oh―o! Meijiシステム』」も活用する。
このように「『プロセス』学業評価システム」は科目相互間の有機的な関連性を前提として、各科目における成績評価自体が法科大学院における一連の教育過程の一環であるととらえ、さらにその後の教育に活用しようとするところに特色がある。法科大学院における少人数教育の特長を生かし、各学生に対して、学習支援カルテに入力されたデータに基づく効果的な教育指導を行い、法律学を総合的に理解した幅広い視野をもった法曹の養成に役立てようというものである。なお学習支援カルテに入力されるのは、(1)最終的な成績評価(2)プロセス情報(3)教育指導に有益と思われる個人情報であり、個人情報保護の観点から、それぞれの情報の収集、入力および管理について厳正な取扱いが必要である。
従来の法学部および大学院法学研究科における授業では、各科目について担当者が個別に指導および成績評価を行なっており、法領域の相互の関連性や法律学全般の体系についての学生の理解度を把握することはほとんど不可能である。また1回だけの定期試験で、科目で扱う幅広い領域全般の理解度を測ることも困難であり、効果的な指導はできにくい。「『プロセス』学業評価システム」と「学生学習ファイル」は、特定の科目や最終的な成績結果だけでなく、法律基本科目全般における各学生の習熟度を把握するのがねらいである。これによって実体法と手続法、一般法と特別法といった学問体系に縛られずに、多様な要素を含む複合的な事案にも的確に対応できる複眼的視野をもった法曹の養成が可能になり、法科大学院の教育に大いに効果があろう。
(河内隆史・法科大学院教授) |
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