「明治大学広報」
 
第547号(2004年11月1日発行)
 農学部長に就任して 
農学部長 米山勝美

 このたび、58年の歴史と伝統を有する農学部長の職を拝命いたしました。光栄であるとともに日ごとにその責任の重さを実感しているところです。

 ところで、21世紀は生物学の時代といわれています。すなわち生物を対象とする農学の時代でもあります。農学は生物の生命機能の解析、その機能を有効に活用した食糧や食品の生産、および人間の心の安らぎや精神的癒しを与える緑豊かな生活環境や自然環境の維持・創生など、人間が心身ともに健康で豊かな生活を送るための基盤を支える学問です。つまり農学は人間の食と心を支える学問です。農学部の学生にはこの農学の役割と魅力を理解し、誇りと興味をもって世界を担う技術と人間性を身につけて国際社会で活躍できる人間に成長してくれることを願っています。

 日本社会を見ても現在、食に対する不安や環境破壊・汚染問題、社会変革による価値観の違いや新制度への対応から生じる精神的ストレスの問題、老齢化社会における老化や痴呆の予防問題など、解決されるべき多くの課題を抱えています。これらの課題の解決には食糧・生命・環境をテーマとする農学研究の貢献に期待される面が多大です。農学部はこれら社会的ニーズに対処できる優秀な学生を輩出するよう教育・研究システムの一層の改革に努めているところです。農学部の教員の規模からしてすべての分野を広くカバーすることはできませんが、社会の多様な期待に応えられるような教育・研究体制の確立、先端技術や情報化社会に対応できる教育カリキュラムの編成など、社会のニーズにあった特色ある魅力的な農学部の構築を目指したいと考えています。

 最後になりましたが、農学部ではこれまで千葉県と山梨県に分散しておりました農場を統合化して、生田キャンパス近くの川崎市黒川に新農場を設置する運びとなりました。3年後を目途に完成を予定しています。新農場では経営を含めた都市型農業の実施、地域社会との農業交流などを計画しており、学生の先端農業の習得や社会的意識の向上に大いに役立つものと期待しています。今後とも農学部に対するご協力をよろしくお願い申し上げます。
 
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