論 壇: I−MAST構想 〜我等に燃ゆる希望あり〜
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理工学部長 向殿政男 |
夢を持ち、明るく元気に、勇敢に、未来に向かって進んで行きたいものである。過去にばかり目を向けていては、悔いと言い訳と自慢は蓄積しても、時代に希望をもたらすような新しいものは創れない。崇高な理念の下、夢のある構想を持って奮起し、戦略・戦術を駆使して闘わない限り、未来は開けないはずである。
おかげさまで、理工学部は今年創設60周年を迎えた。工学部から理工学部に改組してからは、15年目にあたる。満を持して目下、理工学部と大学院理工学研究科では、I―MAST構想(注)という遠大な構想を展開しつつある。創設100年を迎える40年後には、世界に冠たる学術拠点のひとつになろうという計画である。ひとつの帆柱(MAST)に全員が集結し、大海原を自由に走る快速船をイメージしている。英語の先生には発音が違うとしばしば注意されるのだが、実はI MUST sail for the futureという意気込みを込めてもいる。我々には燃える希望があるのである。
I―MAST構想の第一歩は、大学院にシフトして、研究に重点をおいた研究教育型大学を実現することにある。当面の課題として、大学院と学部を一体的に運営しよう、研究を通した教育という視点から研究体制を整備しよう、厳しい外部評価に耐えることができ世界に通用する実りある教育を実現しよう、駿河台地区に文理融合型の新しい大学院(専攻)を設置しよう等を掲げている。実際、教育面では、理工系の教育期間としては6年間が必要であるという観点から、6年一貫教育を実践し、JABEE(日本技術者教育認定機構)の受診準備も進めている。運営面でも、研究科委員長と学部長、専攻主任と学科長はそれぞれ同一人物が兼務し、研究科委員会と学部教授会とは合同で開催している。研究面では、これまでのCOE申請で2件がヒヤリング審査に届いただけで終わったのは、本学の研究組織の未整備にも原因があるという痛切な総括から、大学院長を通して総合研究機構の樹立を提案し、実現を強く要請している。それと同時に、現在、全学に先駆けて特定課題研究所を設置し、各種の研究費のかなりの部分を学部集中管理とし、競争原理に基づく配分を断行している。また、都心型総合大学としての利点を生かし、駿河台地区に理工系を核とする文理融合型の大学院を設置しようとか、秋葉原CF(クロスフィールド)進出の構想もあり、検討を開始した。このような多岐にわたるI―MAST構想の着実な実現のため、理工戦略会議を新たに設置したところである。
時代の荒波は、まず理工系が被る。理工系は研究設備等の面で国内国公立大学との間の著しい不平等競争に晒されるだけではなく、グローバル化の奔流の中にあって、世界基準のものさしで直接的に評価される運命にあるからである。勇猛果敢に道を切り開こうとする大学院理工学研究科と理工学部の先駆的な活動と試みに対し、ご理解とご支援を頂くと共に、その試行錯誤の中から、本学全体の改革に繋がる何かが見出されれば真に幸いである。
(注)I―MASTとは、Meiji Institute of Advanced Science and Technologyの頭文字のちょっとした転綴語句(アナグラム)である。
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