10月9日、駿河台校舎リバティタワー1012教室で、文学部特別企画シンポジウム「東洋史からアジア史へ―変わる世界史、広がるアジア―」が開催された。当日は台風22号が東京を直撃するという最悪の天候だったが、他大学教員、高校教員、高校生、一般市民などを含む多数の聴衆が集まり、盛会であった。
このシンポジウムは、文学部史学地理学科東洋史学専攻が、2005年度から「アジア史専攻」に名称変更し、カリキュラムをアジア全域に目配りした内容に改編するのに際し、なぜ改編が必要であったのか、広く理解してもらうために企画されたものである。
基調講演において、大阪大学大学院文学研究科の森安孝夫教授は、中央アジアの遊牧諸民族がヨーロッパ史および中国史に大きな影響を与えたことを指摘し、新しい世界史像を提示した。ついで明治大学文学部の永田雄三教授が、15・16世紀を中心に西アジア・イスラム世界と地中海世界が有機的連関のなかにあったとして、ヨーロッパ中心主義を見直し、東洋史と西洋史の境界を取り去る必要性を指摘した。
また今回は、基調講演をもとに、山田朗(日本史)・三宅立(西洋史)両明治大学文学部教授を加えたパネルディスカッションを予定していたが、台風の影響で中止せざるを得なくなった。白熱した討論が予想されただけに、返す返すも残念であった。
しかし、従来のような中国史中心の東洋史の枠組みを取り払い、ヨーロッパ中心史観に基づくアジア認識から脱却しなければ、発展を続けるアジア諸地域の歴史を正しく読み解くことは難しいという当該専攻の考え方、およびアジア史研究の大きな可能性については、十分に伝えることができたといってよい。アトラクションとして行われたスシュマ小俣氏と逆瀬川健治氏よるインドの民族楽器シタールとタブラの演奏も、聴衆を魅了した。
(寺内威太郎・文学部教授) |