「明治大学広報」
 
第554号(2005年4月15日発行)
◆体育会ローバースカウト部 新潟県中越地震奉仕について
  部の存在意義を再確認
 2004年10月23日夕刻、大地が揺れた。「新潟県中越地震」の発生である。この時誰がこの未曾有の大惨事を予想したであろうか―。
 その時、明大ローバースカウト部が立ち上がった。急遽被災地へ奉仕に行く方針を決定したのである。当然である。なぜなら当部は、関東大震災の反省と対策のために創部され、言うなれば地震災害救援こそがカタルシスであり、存在意義だからだ。しかも運命の悪戯か、災害発生当日その時は、創部80周年記念式典の最中の事。「これは宿命だ」。このように現役部員、OB方々は少なからず因縁を感じたはずである。すぐさま監督・主将を中心としたプロジェクトを立ち上げ、20日後には震度7を記録した新潟県北魚沼郡川口町に赴いた。1カ月に渡る奉仕のはじまりである。
 「活動班(本部スタッフ)に従事し、被災者がお互い支えあっている姿を目の当たりにして『人』という言葉の意味をはじめて理解した」(政経3・坂本)。当部は継続的奉仕が最も効率的と判断し、大きく4つのチームに分け絶え間なく奉仕できる体制をとった。したがって各個人が行う奉仕は極めて多様であり、“感じるもの”も人それぞれであった。「家の中の瓦礫撤去を手伝ったら家の人が泣いて喜んでくれた」(理工3・福島)。「対岸の火事だと同情するだけではなく、実際に何かをすることが大切だと感じた。被災者の一刻も早い“心”の復興を願う」(政経1・岡本)。「冬国特有の雪囲いや壊れた石垣の撤去の仕事をして、川口町がどれだけ大きな被害を受けたか身をもって体験した」(理工1・岡)。「被災者の方が笑顔で元気だったことに驚いた。人間の強さ、助け合いの大切さを実感した」(文1・加藤)―。
 全く未知の土地で過酷な作業。しかし、部員たち一人ひとりは確実に掴んだものがあった。それは彼ら自身を成長させる貴重な財産である。何の見返りも求めずに、無償で相手に尽くす―この奉仕の精神の体現が今回のプロジェクトの意味・意義であった。まさに『人を繋ぐ本質は金ではなく“心”だ』。この学長の言葉の意味を、部員たちは体験をもって垣間見ることができたと言えよう。この奉仕は、明大ローバーの存在意義を再認識する意味で、きわめて重要で希少な体験だったと言えるのではないだろうか。
 最後に地震により被災した方の一刻も早い復帰を切に願う。
(ローバースカウト部主将・長谷川晴彦=経営4)
 
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