「明治大学広報」
 
第556号(2005年6月1日発行)
 博物館長に就任して
博物館長   杉原 重夫
 明治大学博物館は、生涯教育の拠点であるアカデミーコモンの竣工に伴い昨年4月にオープン、1年が経過した。この間、小疇尚・前館長の下で、考古・刑事・商品の各部門の常設展のほか、特別展「韓国スヤンゲ遺跡と日本の旧石器時代」などの開催、博物館入門講座、専門的な公開講座の開設などの積極的な博物館活動により、オープンから8カ月で入館者は3万人を超えた。着任して日の浅い私にとって、博物館組織や博物館行事のすべてを把握したわけではないが、本学博物館のあるべき姿または将来像について述べてみたい。

 まず大学に所属する博物館は、学内の教員・学生の教育研究の場であるとともに広く社会に開かれた生涯教育の場でなくてはならない。学内外研究者のためには研究資料を提供するための収蔵品目録の整備・充実(データベース化)が急がれる。博物館における収蔵品目録は、図書館における図書目録と同様に存在基盤をなす大切なものである。教員・院生には収蔵品(現物資料)に可能な限り接せられるようにして、研究の場(スペース)を提供すべきと考える。またリバティ・アカデミーと提携した博物館講座、博物館入門講座のほか、昨年度スタートした「白雲なびく駿河台地域子ども教室」のように小中学生など幅広い年齢層を対象とした博物館活動を推進する必要がある。

 次に博物館学芸員の専門職としての位置づけである。博物館法には「博物館に専門的職員として学芸員を置く(第4条3項)」とある。この「専門的」の語句には、「専門職の様な者」という解釈もあるが、これは博物館法そのものが、主に県・市・町立などの博物館を対象にしたもので、学芸員が専門分野だけに専念することに、組織的にも財政的にも抵抗があったためであろう。ちなみに国立の博物館(国立博物館、歴史民族博物館など)の研究者は、まったく博物館法の適用外である。博物館における展示や普及活動も博物館としての一定の目標を持った調査・研究を土台にしたものでなければ魅力的でないし、博物館自体の個性も生まれない(千地万造著『博物館の楽しみ方』)。まったく同感だ。大学における学芸員は資料の収集、保管、展示はもとより調査研究を行う専門職として、科学研究費の申請、学術フロンティア推進事業への参加など研究活動への参加を積極的に認めるべきと考える。

 最後に博物館は、国際的な相互理解を深めお互いの文化を理解する絶好の場である。これからは海外の博物館と提携し、海外現地調査、研究者の招聘、共同シンポジウムの開催などを積極的に進めることが必要である。まず博物館の展示内容の説明についても英語の解説文だけでなく近隣諸国とくに中国語、韓国語、ロシア語のパンフレットも置くことも考えてよい。(文学部教授)
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