文部科学省の学術フロンティア推進事業に選定されたプロジェクト「日本古代文化における文字・図像・伝承と宗教の総合的研究」の研究活動を進めている古代学研究所(所長=吉村武彦文学部教授)の公開シンポジウムが7月2日、リバティタワーで行われ、研究者や学生、市民など満員の参加者でにぎわった。
この日のテーマは「源氏物語 重層する歴史の諸相」。古くは中世に遡る源氏物語の研究テーマ「准拠」(物語が史実に拠るとする論説)をキーワードに、その研究史やつぶさに調査された結果に基づく論説などが発表された。
発表の後は、質疑応答や討論が行われ、「史実が当時の読者にどれくらいの共通理解があったのか」「准拠という言葉に捕らわれてしまうと源氏を語る上で足かせになるのではないか」「源氏が歴史とどう対応するかを考える上で准拠という言葉を使った。しかしこだわりすぎるとかえって自分の手足を縛ることになるので、自戒の意味でも、若い人は若い人なりに研究を進めてほしい」など活発な意見が交わされた。
訪れた参加者らは「こういう研究アプローチもあるのかと新鮮だった」(他大学源氏ゼミ生4年)、「源氏は専門外だが源氏研究の基本的なところと先端的なところの概略がわかった」(明大院生)、「大鏡等を読み解く勉強会をしている。源氏も関連があるので理解が深まった。こうした話が無料で聞くことができとてもうれしい」(リバティ・アカデミー会員)と語っていた。
本プロジェクトは、日本文学・考古学・史学・文化人類学等といった研究分野の枠を越えて日本古代文化を横断的に捉え、多角的に掘り下げていくもの。
所長を務める吉村教授は「5年間にわたる本プロジェクトも2年目を迎え、各チームの精力的な研究活動によりデータベースもかなり充実してきている。これらを広く市民に公開し、研究の成果について共に考えていきたい。来年は国際的なシンポジウムも予定している。今後の活動に期待してほしい」と語る。
後期にもシンポジウムが予定されている。詳しくは明大古代学研究所ホームページ(http://www.isc.meiji.ac.jp/~yoshimu/kodaigakukenkyujo.html)で公開。 |