「明治大学広報」
 
第563号(2005年10月15日発行)
論 壇: 地域コラボレーション
和泉委員会委員長 山泉 進
 11月2日、杉並区のセシオン杉並ホールにおいて「地域へ、地域から―団塊世代のライフスタイル」と題するシンポジウムを開催する。杉並区と区内高等教育機関による連携協働推進についての「包括協定書」の締結一周年を記念しての企画のひとつである。基調講演は古屋和雄氏(NHKアナウンサー)の「女のこだわり、男のわすれもの」、シンポジウムには杉並区教育長、それに女子美術・高千穂・東京立正・立教女学院短期・明治の5大学から各1名の講師が参加する。

 少子化傾向が従来の大学の「かたち」を変えざるをえなくなるのは眼前のことである。他方では2007年、団塊世代が還暦を迎え地域へと還流しはじめる。大学や行政はかれらのパワーをどう活かすことができるのか。シンポジウムでは、人生・生活・参加をキーワードにして、生きがい(楽しさ)、安心な暮らし(ゆとり)、共に働くこと(思いやり)について考えてみたい。

 杉並区との連携事業は、生涯学習についてのネットワークの構築、「人づくり大学」への協力、「杉並学会」の設立、学校・幼稚園教育支援、図書館の開放と連携、災害ボランティア活動への参加など多岐にわたる。また、和泉委員会では、世田谷区の明大前商店街振興組合との連携事業についても協議を開始している。「安全・安心」を標語にして、地域活性化をはかる振興組合とのあいだの商・学連携プログラムを検討中である。もちろん、地域との連携は、和泉キャンパスばかりではなく、生田や駿河台キャンパスでも事業が進められている。

 「社会貢献」が、教育と研究にならぶ、大学の第3の役割であることの認識は本学においても浸透してきている。研究・知財戦略機構会議の設置、あるいはリバティ・アカデミーの組織整備などは着実に進んできている。しかし、「社会貢献」といえば、どうしても大学を中心に考えてその知的資産を社会へと還元し、それによって大学の財政基盤にも寄与ができる、そんな認識に集約されるとしたら、私は違和感を覚えざるをえない。大学の経営は重要である、しかしビジネス・モデルとして大学が存在しているわけではない。

 私は、大学の「社会貢献」を考えるとき、同時に大学の「使命」について考えなくてはならないと思っている。ちょっと大袈裟にきこえるかもしれないが、大学は地域にあって、もちろん地球地域にあって、人々の「生きている意味」について諸学問を通じて教育・研究する場である。自殺者が急増し、生の意味が希薄化している現代にあって、大学、行政、企業、各種の団体との協働(コラボレーション)こそが、回り道であるようにみえても、選ばれる大学の条件である―私はそう確信している。

(法学部教授)
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