第593号(2008年3月1日発行)
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「企業論の史的展開」
高橋俊夫 著 (中央経済社、3600円) |
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著者は近年コーポレート・ガバナンス(企業統治)研究に精力的に取り組み、関連学会等ですでに高い評価を受けている。
本書は株式会社の歴史的発展過程から生まれてきた諸研究を「企業論」として読み解くことによって巨大株式会社の社会性を論じている。すなわち、20世紀初頭から中葉にかけて展開された企業論として、ヴェブレン、ヒルファーディング、シュンペーター等の研究を取り上げ、これをその研究の背景にある当時の歴史的・経済的現実と結び付けて論じている。
こうして、本来私的な性格を持つ企業が株式会社形態をとって次第に巨大化し、ビッグ・ビジネスへと発展していく過程で極めて社会的性格を強く帯び、それゆえ「企業それ自体」、すなわち「法人実在説」を主張するに値する存在となってきたものと捉えている。本書は、「社会の公器」としての企業統治のあり方に理論的根拠付けを与える研究であり、また株式会社の史的展開過程に企業統治研究を位置付け、新たな研究視座を提示した研究として高く評価されねばならない。
風間信隆・商学部教授(著者は経営学部教授)
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