聖悠紀「超人ロック」生誕50周年展
第3期アーカイブ


No.00

 「超人ロック」は1967年、手描きの原稿をそのまま綴じ郵送でメンバーに送る同人誌「肉筆回覧誌」の世界から登場した。発表されたのは後に1000人ものメンバーを擁することになる伝説的同人サークル「作画グループ」である。
 当時のマンガ家は一般に、同人誌時代の作品は修業時代のものとして表に出さないことが多いのだが、聖の場合「超人ロック」があまりに評判を呼んだこともあり、その作品リストに同人誌時代の作品名があたりまえのように並ぶ。
 1971年に商業誌デビューした聖が仕事に忙殺され、自然に「超人ロック」から離れかけていたころ、「聖悠紀を弾圧して超人ロックを守ろう会」が突如発足、その応援(?)をもとに描かれたのが第4作「コズミック・ゲーム」(74年)である。
 「超人ロック」はその後50年描き続けられ、多くのマンガファン、また、SFファンが思い浮かべる大半の作品より長く続く、未曽有の超長期シリーズ連載となった。シリーズ単行本は、各エピソードを収録した最初のものを数えあげるだけでも軽く100冊を超える。
 ここに展示した「SFファンと そうでない人に」と入った青い紙は、「超人ロック」第1作に添えられた聖の手による表書きである。ロックファンなら一度は目にしたことのある言葉であり、これからロックを知る人にも心に留めてほしい言葉である。


聖悠紀コメント

「超人ロック」の第1作の表書きには、OP11と入っています。これはラテン語でオーパス11、つまり11作目という意味です。これまでの私の作品リストでは、所属していた同人サークル「作画グループ」(ケース26参照)に発表したものがまず4作並んでいて5作目が「超人ロック」になっていますが、それ以外に6作描いていたということです。3作分は高校時代に友人と作った同人誌(ケース28)に描いたもの。1作分は作画グループ初の女性会員・深沢みどりさんの同人誌に描いたもの。残りの2作は…ちょっと覚えてない。たぶん完成していないものを混ぜていたのじゃないかな(笑)。
赤い表紙の東考社の単行本は、ロックがはじめて印刷出版されたもの。タイトルが鏡文字で入ったイラストは、確かその単行本扉用に描いたイラストです。

No.01
カラーイラスト・ギャラリー

No.02
カラーイラスト・ギャラリー

 

No.03
カラーイラスト・ギャラリー

 

No.04
カラーイラスト・ギャラリー

 

No.05
カラーイラスト・ギャラリー

No.06
カラーイラスト・ギャラリー

 

No.07
カラーイラスト・ギャラリー

 

No.08
カラーイラスト・ギャラリー

 

 

No.09
「新世界戦隊」(オリジナル版)

 「新世界戦隊」は二種類ある。オリジナルは東考社を発行元とするSGシリーズ版『超人ロック』5巻(短編集)に収録されたものであり、執筆自体は1970年だとされる。作画グループ代表・ばばよしあきによれば、この作品は「出版社の持ち込み用に描かれた」もので「(これ以前に持ち込んだロック・シリーズ同様)この作品も大手出版社では受け入れられることはなかった」という(『超人ロックの真実』、「スーパーヒーローの光と影」、ばばよしあき、1989年)。ストーリー面ではロックたちに関するプロットはリメイク版とほぼ同様だが、「ラン」とコンピューター「エレナ」は登場しない。


聖悠紀コメント

このオリジナル版でのロックの髪は原稿上は黒ベタですが、実際には濃い緑というイメージです。
『OUT』でのロックの特集のあとに、みのり書房から「別冊を出すから連載してみないか」というオファーをいただいて、自分で「なにを描こうかな」と考えたとき、当時作画で出ていた(東考社SGシリーズ5)この短編をリメイクしてみようと思いました。

No.10

1977年「超人ロック」は、創刊まもない『月刊OUT』(みのり書房/12月号)で、一度も商業誌に発表されたことの無い状態で特集を組まれ大きな反響を呼んだ。『月刊OUT』は、のちにアニメのファンカルチャー誌として独自のスタンスをとることになるが、「宇宙戦艦ヤマト」特集やこの「超人ロック」特集の成功がその路線を決定づけたといえるだろう。
 この特集の反響から『月刊OUT増刊 ランデヴー』にて「超人ロック」初の商業誌掲載作「新世界戦隊」の連載が開始され、「ジュナンの子」「コズミック・ゲーム」が収録された2冊の新書判単行本(東考社版)が復刊。1978年、シリーズ1・2作のカラーページつきB6判単行本が、「超人ロック復刻会」(のちのSG企画)を発行元として発売された。
 また以前出た「超人ロック」文庫版同人誌の海賊版がでまわったりもした。これらを作画グループ代表のばばよしあきは、「OUT超人ロック騒動記」と呼び記している。

No.11
「新世界戦隊」

 初めて商業誌に掲載された「超人ロック」シリーズ。『月刊OUT』での特集の好評を受けて、1978年に『月刊OUT増刊ランデブー』で短編版をリメイクし連載したもの。「超人ロック」における最初のリメイク作品でもある。
 記憶を失った状態で集められた5人のエスパー、「ツアーを殺せ」という暗示(オリジナル版はハルツ)、辺境の惑星で2万人のエスパーを率いて銀河連邦からの独立を図ろうとするエスパー「ツアー」との出会いなど、基本的なプロットは原案短編と同様だが、美貌の天才コンピュータエンジニア「ラン」が登場し、銀河連邦で彼が進める謎めいた「皇帝計画」が並行して描かれる。

No.12
聖悠紀コメント

当時は児童向けのテレビマンガ誌での仕事が多かったので、『OUT』は媒体的に対象年齢が上だからセリフを多くしても大丈夫だろう、という感覚で描きはじめました。
(リメイク版でのランの描写が耽美的なのは)多少当時の少女マンガの影響はあったかもしれませんが、あまり覚えていないですね。じつはもう少女誌で仕事をしていなかったので、当時あまり少女マンガを読んでいなかったんです(笑)。

No.13
「プリムラ」

 ロックが宇宙港でひったくりから助けた少女プリムラは、じつはエスパー専門の賞金稼ぎ「バムパイア」だった。彼女は、失われた銀河連邦時代の技術が記録されたデータキューブを狙うエスパーたちによって、父を殺され、10歳ほどの年齢にまで「若がえり」させられた。そのことでエスパーを憎み、父の残した装甲スーツで賞金稼ぎとなっていたのである。ロックはひそかに彼女を見守り、救おうとする。


聖悠紀コメント

(ロックが最終的にプリムラを育てるのは)彼女を育てるような血縁者がいなかったからで、べつにロード・レオンからアレクセイ部長の時の失敗を意識していたわけではなくて、あくまでなりゆきだと思いますよ。西部劇映画は割りと観ていたので、こういう辺境の惑星の話を描くときにはちょっと影響が出てるかなとは思います。街並みなんかに、西部劇の雰囲気がありますよね。

No.14
「魔術師の鏡」

 星間企業の女性社長ライザ(ロック)は、「ラフノール」の司祭からの訪問を受け、連邦時代の技術が記録されたデータキューブの譲渡を打診される。ライザとして娘を育てていたロックは、エスパーばかりの惑星「ラフノール」の生き残りが入植してつくられた惑星「ネオラフノール」のエスパーたちが、「電子使い」の青年リートを利用して帝国と銀河コンピュータに対して反旗を翻そうとしていることを知る。


聖悠紀コメント

当時ちょうど「ハッカー」という言葉が使われはじめた時期でしたから、「プログラムを自在に扱えるひと」という設定を考えて、それを超能力にするかどうかでちょっと悩みました。結局「電子使い」という超能力にしてしまったんですが。
ネオラフノールは、連邦末期に「ラフノールが破壊される際にラフノールから離れていたエスパーたち」が入植してつくられた植民星というイメージです。それだけではなく、他にも植民者たちをかき集めたんでしょうが、基本はラフノールを再興しようというひとたちの星。その辺はユダヤ人とイスラエルの関係がある程度は投影されている気はします。

No.15
「ソング・オブ・アース」

 三流宇宙海賊の二人組は軍の追跡に追い詰められ、やむなくたどり着いた辺境の惑星「地球」で、失われた技術である「生体コンピュータ」を搭載した宇宙船「マウス」を発見する。いっぽうその近在の村に住む少年モールは、深夜助けを求める謎の声に導かれて村から出たところを狼に襲われ、通りがかったロックに救われる。
 「マウス」で海賊行為を繰り返す海賊たちに、ついに帝国は追討のエスパー部隊を派遣する。帝国軍との戦闘のなか「マウス」と帝国の初代皇帝ナガトの娘・トレスとのかかわりが徐々にあきらかになっていく。


聖悠紀コメント

この時点で、抵抗組織として「ソング・オブ・アース」の位置づけなど、帝国編後半の設定はある程度考えていました。ただ、この作品では直接その辺の事情が描かれているわけではないので、あとから読み直したらこの作品だけどうも浮いていた。それで、その辺の事情を「メヌエット」や「カルダームⅠ世」などで改めて描いてみたんです。
逆にこの話の「先の話」は描かれていないんですが、そこもいちおう考えてはいます。トレスが戻ってくる話は、いつか描きたいです。

No.16
「シャトレーズ」

 各星域で活発化する反帝国独立運動に対し、帝国は惑星単位で住民を虐殺する「浄化」計画をおこなうようになっていた。
 帝国への対抗手段を探るためにオーリック家の記録を探るフリーマン教授から「オーリック家の書」を探すよう依頼されたロックはスリの少女ミルバと出会い、行きがかりから帝国の追手と闘いながらともに旅することになる。


聖悠紀コメント

段々帝国が末期的な状況になってきて、帝国が「浄化」作戦をおこなうようになっているわけですが、この帝国による「浄化」は、二次大戦時のドイツのホロコーストのイメージですね。
この話では珍しく旅のパートナーが女性で、ロックとロマンチックな関係になります。ロックはジェンダー的には基本男性で、緊急避難的になるのが女性。普段は男性でいる、ということです。
帝国編後半の悪役である「眼だけのカルダームⅣ世」は、最近も「あとがきまんが」で出したりしていますが、割りと気に入ってます(笑)。
ちなみに「シャトレーズ」というのは、当時使っていたルマ・カラーインクのロックの髪の色の名前からとりました。

No.17
「アストロレース」

 競技用宇宙船を使った星間レースにさっそうと登場した新人美女パイロット、イライザ。まったく無名の新人だった彼女の好成績を不審に思ったEVN(帝国ビデオニュース)は彼女が超能力を使った不正をおこなっているのではないかとの疑いを持ち、調査を開始する。緊迫するレースの行方と彼女の正体とは?


聖悠紀コメント

ここで登場する星間レースはラリーのような耐久レースの一種として描いています。スタートからゴールまで設定時間があって、スタート地点まではキャリアで運び、設定時間内でゴールした機体同士での合計時間でタイムを競う、という。普通は整備の人間まで含めてチームで競う競技だという設定です。
レースものの主人公はたいてい勝つことを目的にしているものですが、ロックは勝つことを目的にはしていないんです。やはりレースものの「嗤う男」も同じです。そこは変わってるかもしれないですね。

No.18
「超人の死」

 超能力が暴走状態に陥り、外部との接触を断って隠棲していたロックは、ある日マスター・バルカンという人物から遣わされたエスパー・ヒューガの訪問を受ける。暴走する超能力によってヒューガを殺害してしまったロックは、ESP研究者のモリノと出会い、暴走状態の治療のためESP吸収能力を持つという少女ナミーに会おうとするのだが……。


聖悠紀コメント

超能力を描いていると(描写が)どんどんエスカレートしていっちゃうんですよ。普通はある程度のところでセーブするんですが、じゃあそこを「セーブしないで描いたらどうなるんだろう」というのが「超能力の暴走」というアイディアの元じゃないかと思います。
(超能力や生命が循環していくというテーマは)自分であまり意識して描いているわけではないですが、比較的よく出てくるモチーフかもしれないですね。

No.19
「ダークライオン」

 反帝国勢力のひとつ「四惑星連合」の指導者のひとり、ドノヴァン公の養女、ミレーヌが誘拐された。
 ドノヴァン公はミレーヌ救出のために傭兵部隊を雇い、宇宙海賊「ダークライオン」の基地に派遣する。だが、超記憶能力を持つエスパーであり、連合の機密情報の保管庫として幽閉同然の生活を強いられてきたミレーヌは、自分を自由にしてくれたダークライオンにひかれてゆく。


「黄金の牙」

 惑星領主を殺して独裁者となった海賊上がりのトラヴィス侯爵のもとにあらわれたエスパー、リュカ―ンはトラヴィスを倒し、解放された傭兵たちに自分に協力するように説く。だが、兵士たちの心をとらえていくリュカ―ンは、ロックがその正体を追う謎の存在「書を守る者」のひとりだった。


聖悠紀コメント

「ダークライオン」「黄金の牙」といった、「書を守る者」のストーリーというのは、まず「オーリック家の歴史書」というものがあって、それが誰にも読めない書物で、それを伝えていく者たちがいる、というところから発想しています。
この「書を守る者」のクローンは基本的に全員が「ロックのクローン」です。「オメガ」から登場するリメイク版のヤマトだけがナガトのクローンですが、これは試作機だったからで、他はすべてロックのクローンになります。

No.20
「REPLAY」
「メイキング・オブ・ロック・ザ・スーパーマン」

 「REPLAY」は豪華本『To YOU』に描き下ろされたロックの「再生」の秘密を描いたフルカラー短編。
 「メイキング・オブ・ロック・ザ・スーパーマン」は『週刊少年キング』掲載のメイキング仕立てのセルフパロディ。


聖悠紀コメント

『To You』は超人ロック本の決定版を出したいという企画で、限定1万部、定価1万円で、いまでいうクラウド・ファンディングみたいなことをやったんです。最初に買ってくれるひとを募集して、巻末には購買者の名前が全部掲載されている。当時の少年画報社の担当の坂本さんが企画して、作画グループのばばさんが編集してくれています。
「メイキング~」のようなパロディはたまにやりたくなるんですね、息抜きに(笑)。

No.21
「ミラーリング」

 軍から逃走中の元無重力レスリングの選手バーコフと、ハッカーのカサンドラは、偶然「新世界戦隊」事件で失われたコンピュータ「エレナ」のプログラムの断片を発見する。「エレナ」に魅了されたカサンドラは、ネットワークを利用してその修復を試み「皇帝計画」を再始動させてしまう。ラン、ニアとともに連邦から逃亡を続けるロックもそのことを知るが……。


聖悠紀コメント

この作品は「アニメの原作の話を描いてくれ」という要望があって描いたものです。僕の記憶では特に「新世界戦隊の続きを」という要望がアニメ制作サイドからあったわけではなく、「「新世界戦隊」と「光の剣」のあいだの時期がちょうど空いているな」と思って描きました。
たしか先にこちらでネームをすべて切ってからそれをアニメのスタッフに渡して、あとはマンガとアニメをそれぞれ並行して進めたんじゃなかったかな。

No.22
天空の魔法士シリーズ
「WIZARDOM」「天空の魔法士」「公女タニア」

 エスパーを魔法士と呼んで優遇する惑星「ヨルドウ」。魔法士選抜試合に参加し地位を得たロックは、ヨルドウの内情を探っていく。その目的は姿を消したクーガーの行方を追うことだった。
 銀河帝国末期の辺境惑星を舞台に、帝国と独立運動勢力の狭間で苦悩するエスパーたちを描く連作短編。


聖悠紀コメント

この連作は時期的には特定していない、帝国末期の「「赤いサーペント」から「ファイナルクエスト」までのどこか」でのエピソードになります。
作劇的には「コスチュームプレイ」をやろうと思って描いたもので、劇中ではみんな西洋中世風の衣装を着ていてキャラクターの性格もそういう感じのひとばかりが出てくる。連作を通しての主人公は公女のタニアで、彼女の成長譚です。

No.23
「ラフラール」

 惑星「フレンダール」で、「ラフノールの司祭」としての訓練に励む、超能力を持たない少年テトは、ある日自らの超能力の制御に悩む少女メルルと出会った。
 いっぽう、あらゆる快楽を提供すると自称する宇宙ステーション「吹きだまり」を運営するラフノール司祭ゼクス・ロニは、少年たちを見守りながらかつて「ネオ・ラフノール」が「フレンダール」になった頃のことを思い返していた。
 新ラフノールサーガの序章にあたる作品。


聖悠紀コメント

この話は次の「鏡の檻」に続いていますが、そこで完結するわけではなく、そこからしばらく続いていく物語のプロローグ的な位置づけの作品になります。
「魔術師の鏡」以降のラフラールたち、故郷喪失者の物語であると同時に、いままではあまり描いてこなかった「超能力を持たない人間と超能力者の対比や関係」をテーマにした物語がここでは展開されていく予定です。

No.24
「刻の子供達」

 不運と陰謀と執念が偶然に交錯した結果、5歳の幼児にまで若返ってしまった5人の男女。殺し屋に狙われる武器商人カレの事情から、彼らはアミューズメントパーク「ガーランドパーク」へと子供たちを運ぶ宇宙船に乗りこむことになる。いっぽうロックは学会出席のために立ち寄った惑星で、旧知の遺伝子工学研究者からある相談を受けていた。


聖悠紀コメント

「ホリーサークル」が若返りの社会的な影響を扱っている作品であるのに対して、「刻の子供たち」はその個人的な影響を描いた作品だといえます。(意図を超えたかたちで)若返ってしまったときにそのひとがどう反応するか、ということを描いている。
ぱんだリンについては「クアドラⅡ」の単行本裏表紙にパンダを描いたら評判がよかったので、「それでお話がつくれないかな」と思って考えたものです。

No.25
聖悠紀コメント

扉絵風のものは作画グループにロックの1作目を送る前、一番最初に思い浮かんで描いたロックのイメージイラストです。「超人ロック」はここから始まりました。タイトルは、ロック歌手ドノヴァンの「狂人ロック」からです。
 無地のレポート用紙に描かれたロックは、その後のロックらしい顔なので、高校時代のノートに大学時代に描いたのかもしれない。横のは「エネセスの仮面」のエネセスですね。テレパシィとかテレキネシスとか超能力用語も書きだしてますね。自分自身はエスパー用語はヴァン・ヴォクトの『スラン』やハインラインで知りました。

No.26

作画グループは1965年ごろ、ばばよしあき、うわだよしのり、関本おさむの3人のマンガ研究会が融合して生まれたようだ。当初の人数は6名。一時は1000人を超すメンバーが所属した伝説的同人サークルである。2016年会長ばばの死去にともない正式に解散した。
 聖悠紀は、66年に同サークルに参加し、肉筆回覧誌『SSM』(『ショートストーリーマガジン』)に「心臓」を掲載。「超人ロック」の1作目はやはり肉筆回覧誌『ストーリィ作品集』に掲載された。また『超人ロック』の最初の単行本は、作画グループシリーズ第2弾として東考社から出版。作画グループシリーズは他にも何冊も出版されている。SG企画として書店流通する会誌『GROUP』を78年に創刊。会員同士の合作を熱心に行い『週刊少年マガジン』に「アキラ・ミオ漂流記」(72年)、『週刊少女コミック』に「ダリウスの風」(77年)、『週刊少年キング』に「1000万人の2人」(78年)を発表した。
 現在作画グループの3羽ガラスである、ばば・みなもと太郎・聖が直接会ったのは、68年に行われた「ぐら・こん」関西支部の会合であった。「ぐら・こん」は新人育成を重視していた雑誌『COM』(虫プロ商事)からはじまった読者交流の場である。
 会誌として『GROUP』『なかま』『ユニオン』なども出していた。他の主な元会員に、あずみ椋、いくたまき、大塚英志、かぶと虫太郎、北原文野、清原なつの、神坂智子、沢田ユキオ、志水圭、中田雅喜、速水翼、belne、山本航暉、横山えいじなどがいる。


聖悠紀コメント

作画グループには高校2年(1966年)の時、『ボーイズライフ』に載った会員募集がきっかけで入会しました。たまたまはがきが2枚残っていたので、2つの会に送ったのだけど、1つは連絡が来なかった。
 作画グループからはガリ版刷りのわら半紙で4ページくらいの講評の載った発行物(『ニュース版』)が来ました。それで何か描かなきゃ、と思って送ったのが「心臓」という作品。『SSM』に載りました。「ロストコロニー」は『グループ』の100号の記念に描きました。

No.27
聖悠紀コメント

緑のスクラップブックは母親が僕の描いた細かなカットとかを集めて貼って作ってくれていたものです。セロテープが劣化してもう全部取れてしまっていますが。

No.28
聖悠紀コメント

『COMICSTRIPS MAGAZINE』は、自分と高校のなかま二人と作った同人誌です。この本で、聖悠紀の名前が初めて使われています。最初はなかまの一人との合作用のペンネームで、苗字は私が古典の授業の時に決め、下の名前はなかまの名前の「良則」を「由紀」と変え「ひじりゆき」と読むことにしました。その後一人で使うようになって「由」の字を「悠」に変え「聖悠紀」表記にしたんです。

No.29

聖悠紀の商業誌でのデビューは少女誌であった。マンガは網羅的に読んでいたが少年向けが主で、少女向けは読んでいなかったという。おそらく少女誌デビューの見通しが立ったころに描かれたのであろう、多くのかわいらしい少女マンガの習作が残っている(ケース27参照)。
 繊細な巻き毛とシャープなメカ、少女趣味と少年趣味がバランスよく同居しているところが、聖作品のもっとも大きな魅力のひとつである。


聖悠紀コメント

商業誌では少女マンガでデビューしました。「この宇宙に愛を」を読んでくださった小学館の編集者・大西亘さんが声をかけてくださったんです。少女マンガを描くことになってから、模写したりしてずいぶん練習しました。当時練習した少女マンガ家さんは、西谷祥子さん、大和和紀さん、水野英子さん、忠津陽子さんかな。他にもたくさんの方の練習をしましたよ。

宇宙人が出てくる「地球はごきげん」のような、ちょっとSF的な題材の作品でもコメディ色が強いのは、少女マンガだとちょっとシリアスなものは描きづらかったからですね。時代的にまだ「SF」自体があまり雑誌から歓迎されない時期でしたし。
「こんぴゅうたあちゃん」はSFではないですが、天才少女の話です。ただ、才能と社会の相克みたいなテーマは「ジュピター」でも描きましたし、「超人ロック」にもつながる部分かもしれません。

No.30
「ペアペアライサンダー」

 星間輸送業者コズミック運輸社の若手艦長ハルキは、休暇中に社長から呼び出され、不満たらたらで空港へと向かう途中、オートキャブの暴走から美女を救う。社長からのたっての頼みで、イヤイヤ新型高速偵察艇アクロンの副長勤務を引き受けたハルキは、アクロンの艦長として暴走事件で出会った美女ミューズと再会する。ハルキとミューズのカップルが宇宙を舞台に活躍するコメディータッチの作品。


聖悠紀コメント

じつはこの作品は最初は主人公とヒロインが出会って両思いになるまでの読み切り短編として考えたもので、だからその後の展開は全然考えていなかったんですよ。
最後のほうでパックスまで出てきますが、自分では特にスターシステムと考えているわけではありません。世界観的にも銀河連邦が出てきますが、これはロックと共通というわけではなく、似通っていたとしても別な世界、パラレルワールドだと考えています。

No.31
「くるくるパッX」

 ほれっぽくてフラれてばかりのさえない小学生、内人の家に、ある日ペンギンのような生き物が降ってきた。カップラーメンが大好きなこの生物はパックスと名乗り、自分は宇宙人だという。なし崩し的にパックスと彼がつかえるサリア姫を居候させることになった内人は次々に厄介ごとに巻き込まれていく。


聖悠紀コメント

ある日変なヤツがやってきて居候になる、というお話です。「パッX」は宇宙人ですが、原型はドラえもんというよりオバQですね。この作品の連載中に「超人ロック」がはじまったので、早いサイクルでたくさんの作品を描くのに慣れるまでは大変だった記憶があります。
こういうタイプの作品をやっているときに自分でいつも思うのは「コメディはできるけど、ギャグはできないな」ということです。やはり、シチェーションやストーリーで笑わせることはできても、キャラクターのパフォーマンスやギャグだけで笑わせるのは難しいですね。

No.32
「正義のシンボル コンドールマン」
「ザ・カゲスター」

 『コンドールマン』は1975年放映の川内康範原作、東映制作による特撮ヒーロー番組。聖は『テレビランド』(徳間書店)誌でコミカライズを担当。『ザ・カゲスター』は1976年放映、東映制作の特撮ヒーロー番組。聖は同番組のソノシート用絵本(朝日ソノラマ)を描き下ろしている。70年代は児童向けテレビ番組の増加と発展に応じて、『テレビランド』のような「テレビまんが誌」が次々と創刊され、「テレビ絵本」と呼ばれるアニメや特撮番組を題材とした絵本が多数出版されるようになった時期だった。『週刊少年キング』連載以前の聖はそうした新興メディアで多く仕事をしていた。


聖悠紀コメント

コミカライズする際にアニメと特撮で違う点というのは特にないです。だいたい毎月、その月に放映する話数分、三、四冊のシナリオを渡されて、そこから8~10ページくらいのその月の台割に応じたページ数にまとめる。
だから、特撮だから特に気をつけた部分もないし、逆にあまり「アニメだから絵を似せなきゃいけない」とも思っていなかったですね。それはあまりにも別人になってはまずいですけど(笑)。

壁面展示