聖悠紀「超人ロック」生誕50周年展
第4期アーカイブ


No.00

 「超人ロック」は1967年、手描きの原稿をそのまま綴じ郵送でメンバーに送る同人誌「肉筆回覧誌」の世界から登場した。発表されたのは後に1000人ものメンバーを擁することになる伝説的同人サークル「作画グループ」である。
 当時のマンガ家は一般に、同人誌時代の作品は修業時代のものとして表に出さないことが多いのだが、聖の場合「超人ロック」があまりに評判を呼んだこともあり、その作品リストに同人誌時代の作品名があたりまえのように並ぶ。
 1971年に商業誌デビューした聖が仕事に忙殺され、自然に「超人ロック」から離れかけていたころ、「聖悠紀を弾圧して超人ロックを守ろう会」が突如発足、その応援(?)をもとに描かれたのが第4作「コズミック・ゲーム」(74年)である。
 「超人ロック」はその後50年描き続けられ、多くのマンガファン、また、SFファンが思い浮かべる大半の作品より長く続く、未曽有の超長期シリーズ連載となった。シリーズ単行本は、各エピソードを収録した最初のものを数えあげるだけでも軽く100冊を超える。
 ここに展示した「SFファンと そうでない人に」と入った青い紙は、「超人ロック」第1作に添えられた聖の手による表書きである。ロックファンなら一度は目にしたことのある言葉であり、これからロックを知る人にも心に留めてほしい言葉である。


聖悠紀コメント

「超人ロック」の第1作の表書きには、OP11と入っています。これはラテン語でオーパス11、つまり11作目という意味です。これまでの私の作品リストでは、所属していた同人サークル「作画グループ」(ケース26参照)に発表したものがまず4作並んでいて5作目が「超人ロック」になっていますが、それ以外に6作描いていたということです。3作分は高校時代に友人と作った同人誌(ケース28)に描いたもの。1作分は作画グループ初の女性会員・深沢みどりさんの同人誌に描いたもの。残りの2作は…ちょっと覚えてない。たぶん完成していないものを混ぜていたのじゃないかな(笑)。
赤い表紙の東考社の単行本は、ロックがはじめて印刷出版されたもの。タイトルが鏡文字で入ったイラストは、確かその単行本扉用に描いたイラストです。

No.01
カラーイラスト・ギャラリー

No.02
カラーイラスト・ギャラリー

 

No.03
カラーイラスト・ギャラリー

 

No.04
カラーイラスト・ギャラリー

 

No.05
カラーイラスト・ギャラリー

No.06
カラーイラスト・ギャラリー

 

No.07
カラーイラスト・ギャラリー

 

No.08
カラーイラスト・ギャラリー

 

 

No.09
「コズミック・ゲーム」

 銀河連邦(第一)内でも強大な武力と経済力を持つ地球(太陽系連合)に対し、植民惑星ディナールが反乱を起こした。当初、地球側が一方的に勝利するかと思われたこの戦争で、地球側はなぜか敗北を重ね、一見豊かに見える地球社会に徐々に戦争の不安が広まりはじめていた。この謎めいたディナールの戦闘力を、強力なエスパーの存在によるものだと考えた地球軍情報部部長バレンシュタインはそれに対抗できるエスパーを探しはじめる。
 そんなとき、地球軍高官ミゴール将軍の娘リアンナは自然主義者のコロニーから逃げ出してきたという少年、ロックと出会う……。
『少年キング』(少年画報社)連載最初のストーリーライン「炎の虎」の前日譚にあたり、「新世界戦隊」とともに同人誌版から商業連載版へのブリッジのような役割を持つ作品。

No.10
聖悠紀コメント

『週刊少年キング』での連載が決まって「炎の虎」を描くときに「多少は前の作品を読んでくれている読者がいるかもしれない」と思ってこの作品とのつながりを入れてみました。「炎の虎」ではこの作品に登場するリアンナはすでに亡くなっていて、だからその代わりにそっくりなマリアンが出てくる、という設定です。
(前三作と違ってロックが弱々しい少年として登場するのは)僕自身がすでに商業誌でも描いていたし、この作品は最初から印刷した単行本を出すことになっていたので、だったらそれまでとは違ったロックを描いてみようと思ったんですね。

No.11
「ライザ」

 連邦軍情報局局長ダンディは麻薬製造業者アーメッド・サルを追うなかでアーメッドの部下に「超人ロック」がいるとの情報をつかむ。ロックのような強力な存在への、組織による対処に限界を感じたダンディは独力で麻薬組織へ接触を図ろうとするが、彼の独断専行を知る秘書のライザが密かに同行していた。
 「ライザ」には1979年『GROUP』2(SG企画)に掲載されたオリジナル版と2006年に発表されたリメイク版の二作があり、ダンディとライザを巡る基本的なプロットは共通するが、キャラクターや細部の設定はかなり異なる。特にオリジナル版では冒頭「ニア」という「ロックの友人」が登場しており、「新世界戦隊」、「光の剣」との関連を感じさせるが、2006年版の発表によりこの部分の設定はパラレルワールド扱いになった。
 また、この作品はオリジナル、リメイクともに中断を経て完結したという共通点があり、オリジナルは作画グループへの前半部分の投稿から一年の中断を経て同じく作画グループの同人誌にて完結。リメイク版は『超人ロックSpecial』Vol.14(最終号/ビブロス)に第一回掲載、ダウンロード販売での第二回発表後、版元のビブロスが倒産、最終的に『ヤングキングアワーズプラス』(少年画報社)での連載で完結するという数奇な運命を辿っている。


聖悠紀コメント

この作品の大きなモチーフは「マトリクス変換」なんですが、これは第一作(「ニンバスと負の世界」)の冒頭でロックが女性から男に変身してみせる、あの設定をもうちょっと掘り下げてみたらどうなるか、というところから発想しています。
それと、この作品で出てくる「ダンディ」は「スカイホークダンディ」とは別な人です。

No.12

1977年「超人ロック」は、創刊まもない『月刊OUT』(みのり書房/12月号)で、一度も商業誌に発表されたことの無い状態で特集を組まれ大きな反響を呼んだ。『月刊OUT』は、のちにアニメのファンカルチャー誌として独自のスタンスをとることになるが、「宇宙戦艦ヤマト」特集やこの「超人ロック」特集の成功がその路線を決定づけたといえるだろう。
 この特集の反響から『月刊OUT増刊 ランデヴー』にて「超人ロック」初の商業誌掲載作「新世界戦隊」の連載が開始され、「ジュナンの子」「コズミック・ゲーム」が収録された2冊の新書判単行本(東考社版)が復刊。1978年、シリーズ1・2作のカラーページつきB6判単行本が、「超人ロック復刻会」(のちのSG企画)を発行元として発売された。
 また以前出た「超人ロック」文庫版同人誌の海賊版がでまわったりもした。これらを作画グループ代表のばばよしあきは、「OUT超人ロック騒動記」と呼び記している。

No.13
「赤いサーペント」

 モンスターハンターのジョアンとシンは砂竜狩りの最中、少年「クーガー」を拾うが、そのことをきっかけに帝国から取り調べを求められる。帝国の介入を嫌った二人は強引に脱出を図り、じつは強力なエスパーであった少年が巻き起こす「事態」に巻き込まれていく。
 いっぽう、謎の存在「書を守る者」を追うロックはリュカーンの記憶から得た次のクローンエスパーだと思われる「赤い太陽のサーペント」を探していた。その捜索の過程で出会ったエスパーの少女リオラがリュカーンと面識があることがわかり……。


聖悠紀コメント

クローンが次々と生まれて役割をリレーしていくという帝国編後半の構成はA・E・ヴァン・ヴォークトの『非Aの世界』に出てくるアイディアから想を得ています。
「書を守る者」のクローンたちは前任者の記憶は引き継がないけれど、任務はプログラムされていて、そのためにアイデンティティに悩んだり、任務に齟齬をきたしたりする。誰もやったことのないシステムを動かすわけだから、そういう「失敗」を是正する仕組みも事前に組み込まれているんじゃないか、というのがこの話のメインアイディアですね。

No.14
「書を守る者」

 「赤いサーペント」の事件でクーガーと旅することになったロックは、自分には読むことのできなかったオーリック家の「書」をクーガーが読むことができることを知る。クーガーが語るオーリック家の秘められた歴史が、ついに「書を守る者」の正体を解き明かしていく。


聖悠紀コメント

この「オーリック家の書」というのは山田風太郎の忍法帳に出てくる巻物みたいなものですね。ロックが読めなかった「オーリック家の書」をクーガーが読めた、というところから「書を守る者」の正体がわかることになるわけです。

No.15
「ファイナル・クエスト」

 ついに明かされた「書を守る者」の計画と「帝国を陰で操ってきた者」との全面対決がはじまる。暴走するふたつの銀河コンピュータが巻き起こす破壊を、ロックとクーガーは「電子使い」ミーシャの協力を得て止めようとする。
 銀河帝国の崩壊を描く、銀河帝国編最終エピソード。ある意味で「マインド・バスター」以来のライガー教授との確執にひとつの決着がつけられたエピソードだといえる。


聖悠紀コメント

この作品のクライマックスは当時のSF映画などで描かれていた宇宙空間での機械同士の戦闘などのビジュアル的な部分から発想しています。
設定的な部分としては機械が人間のような「意志」を持つかどうかには疑問もありますが、物語の構成上、「超人ロック」に対抗する存在としてはじゅうぶん強力な相手ではないかとも思います。

No.16
「闇の王」

 新銀河連邦成立間もない時期、辺境を荒らす凶悪な海賊「闇の王」に対し、連邦軍情報部は調査のため歴戦のエスパーであるクーガー大尉を派遣する。しかし、「闇の王」の力はクーガーをも凌駕していた。いったい「闇の王」とは何ものなのか? その正体にまつわるロックの関与とはなんだったのか? 物語はある科学者に降りかかった悲劇を語りだす。


「デスペラード」

 ある辺境惑星で盗賊に襲われた少女ヴィニを助けたロックは、彼女が生き別れた兄を探して旅をしていることを知り、彼女に協力しようとする。いっぽうで、彼らが滞在する街の周囲では地下資源を巡り、ふたりの有力者が私兵を集め、武力抗争を激化させていた。そして、集められた私兵の中に伝説的な傭兵「死神」ジャック=ハルの姿もあった。


聖悠紀コメント

「闇の王」
あまり詳しくは描いていないですが、帝国の崩壊から新連邦の成立までは、旧連邦崩壊時ほどの混乱はなかったという設定です。すでにゆるやかなつながりとして「SOE(ソング・オブ・アース)」があったためにそれをベースに新連邦が立ち上がった。それでも混乱期はあるので、そういう時には海賊が暴れるようになる。これはそのころの話ですね。


「デスペラード」
この作品も「西部劇」ではあるんですが、じつは最後に決闘になったのは最初から考えていたわけではなく、描いていたら結果的に決闘になっちゃったんですね(笑)。西部劇のラストといえば決闘ですから。

No.17
「邪神降臨」

 邪神ヌームを崇めるウダク教団が、強力な催眠暗示と自爆テロによって辺境星域で狂的な破壊と殺戮を巻き起こしていた。銀河連邦からの依頼で、連邦軍情報局の支局からの連絡が途絶えた惑星パドマへの調査に同行することになったロックだったが、そこには教団の罠が待ちかまえていた。


聖悠紀コメント

ロックがサクサクと活躍するのではなく、重い話だったので、ネームにすごく苦労した記憶がありますね。

No.18
「プリンス・オブ・ファントム」

 なかば道楽で7人の美女「ファントム・レディース」とともに「何でも屋」として活動する天才科学者プリンス・オブ・ファントムは「革命屋」アイザック・モーフから「超人ロック」殺害を依頼される。超能力を無効化する鎧をまとい伝説のエスパーに挑む彼は、ロックとの対決のさなか、自分の内部で「なにか」が目覚めようとしているのを感じる。


聖悠紀コメント

「邪神降臨」が重かったので、キャラクターの設定はじめ、少し軽い感じにしようとしたんですよね。でも最終的には重い感じになってしまいました。何を描いても、最後はわりと深刻になってしまうんですよね。

No.19
「神童」

 連邦軍情報部の作戦行動中、死亡した同僚ハッシュから息子オトのことを託されたロックは、同年代の少年になりすまし、軍の教育機関アカデミーの受験に向かうオトを見守ることにする。だが、アカデミーのある惑星「ソート」に向かうオトは殺された男から鍵となるデータを託されてしまい、かつて強奪された高性能高速輸送船「ゼリメド」とその財宝を巡る争いに巻き込まれていく。


「ソリティア」

 辺境の惑星で開発された宇宙船の動力炉を地上でのエネルギー設備に転用する技術「エリック・コンバーター」が宇宙海賊ケルベロスに強奪された。祖父とともに襲撃から逃れたコンバーター開発者ムトウ博士の息子イアンは、息子夫婦の仇への復讐を誓った祖父から超能力増幅器「サイ・エクスパンダ―」を託される。祖父の死後、その遺志を果たすべく放浪するイアンはギャンブラーを自称するルーファスという男に拾われ、ともにカジノで働くことになるが……。


聖悠紀コメント

「神童」
「邪神降臨」、「プリンス・オブ・ファントム」といろいろ重い話が続いたので、このままだと話が複雑になりすぎて、誰もついてこれなくなると思って、次の「ソリティア」とともにこの話だけ読んでもわかる作品にしようと思って描いた話です。
物語の持つ「軍人と音楽」というテーマはオースン・スコット・カードの『ソングマスター』から発想したものだったと思います。


「ソリティア」
この話で出てくる「サイ・エクスパンダー」は、ここまでは「超能力を阻害する機械」ばかり出てきたので逆に「超能力を増幅する機械」も当然あるはずだろう、と考えて描いたものです。
これは『少年KING』がなくなってから描いたものですが、どうしてヒットコミックスの38巻として一冊だけ描き下ろしで出版されたんだったかは、正直よく覚えていないんです。すでにこういう話を描こうということで話を進めていたから出すことになったんだったかな。

No.20
「妖精の森」

 敵の襲撃によりESP共鳴現象を引き起こす植物が自生する森に追い込まれたロックは、その森でロボットと二人きりで暮らす不思議な少女に助けられる。激化する襲撃のなか明かされる少女の秘密とは?


「夢使い」

 吹雪のなかシェルターに避難した二人の男、救難信号を出したことを告げるひとりに対し「超人ロック」の姿をしたもうひとりの男が「ラウア」と名乗り、「ドリームマスター」という能力について語りはじめる……。


「愛しのグィネヴィア」

 アダムス経済専門学園に通うユーリは学園創立以来の秀才と誉れも高い美少女グィネヴィアに恋していた。友人のロックは彼に告白するよう発破をかけるが、グィネヴィアがロックに興味を持っていることを知ったユーリは……。


聖悠紀コメント

「妖精の森」
「クランベールの月」とも共通する要素を持った短編ですが、この作品も発想のもとになった海外SFがあります。ラリー・ニーヴンだったかな? たしか子供のときはヒューマノイドで、大人になると植物になってしまう異星種族との交流の話なんですが。


「夢使い」
これは作画グループで発表した短編ですが、自分の中では「夢使い」モノはひとつのジャンルになっているかもしれません。


「愛しのグィネヴィア」
これはロックが出てこなくてもいいような話ではあるんですが、短編で描くならこういう話もいいかなあと。超能力ラブコメを描こうと。

No.21
「メヌエット」シリーズ

 単行本『メヌエット』に収録されている、のちの銀河帝国皇帝カルダームⅠ世の若き日を描いた連作「円舞曲」、「メヌエット」、「狂死曲」、「フィナーレ」を、ここではひとつのシリーズとして紹介する。
 皇帝として後継者の擁立に悩むトレスはかつてクーデターを企んだロドルフ・オーリックの息子カールと面会し、彼に次期皇帝としての資格を証明してみせるように告げる。カールは彼女の言葉に戸惑うが、その直後、トレスが「若返り」の失敗から意識不明状態に陥る。カールは「証明」のために行動を始めるが、一連の事態の背後には複雑な陰謀が渦巻いていた。


聖悠紀コメント

トレスとオーリック一族のその後の話ですね。まだ成立当初なので、帝国が高邁な理念を持っているころがどうなったかという。
『少年キング』の連載では帝国建国後の内部事情をあまり描いていなかったので、以前から気になっていたその部分をもう少し掘り下げて描こうと思ってはじめたシリーズです。トレスが皇帝を継いだあとは(「ソング・オブ・アース」で)宇宙船になって出てくるまで、どういうことがあったか劇中で全然触れていなかったですからね。
この一連の話の直接の続編として、「カル・ダームⅠ世」があります。のちの帝国の内情やカルダームⅠ世がどういう人物だったんだろう、ということを考えながら描いたお話です。このあとは「エピタフ」につながっていきます。

No.22
「カデット」

 試験運用中のマイクロゲート宇宙航路で独立星間コマンド(ISC)の輸送船が消失する事件が起きる。事件の捜査に協力を求められたロックは、捜査のためISCの輸送船に乗り込み士官候補生ミラと出会う。彼女自身も気づいていなかったが、彼女は「第三波動」を操る特殊な能力を持っていた。


「星辰の門」

 「カデット」の事件でミラを拉致し、ISCに捕縛された宇宙海賊カナーンが脱走した。連邦軍からフリゲート艦を盗み出したカナーンはたまたま接触したISCのフリゲートにミラが乗船していることを知り、彼女を再び連れ去る。口封じのために追われるカナーンの真意はなんなのか。


聖悠紀コメント

この頃からデジタル作画を少しずつ導入しはじめています。まだ部分的で、宇宙船だけがデジタル作画といった程度ですが。「荒野の騎士」あたりから四色イラストは全部デジタルでやっています。
カラーリングについては、デジタルを使うようになってからはだいぶ自分で思ったような色彩が出せるようになりました。それまではカラーインクの発色頼りみたいなところがあって、印刷では再現できないようなものを描いていたんですが、デジタルにしてからはほぼ自分の思った通りの色が印刷で再現できるようになった。それでも光や反射に関してはやはりモニターとは見た感じが違うんで、じつはデジタル原画は全部LEDパネルで展示してほしいと思っています。
この作品(「カデット」)はミラの初登場作品で、彼女はロックのヒロインとしてはこれまであまりいなかったようなタイプの女性として考えました。

No.23
「鏡の檻」

 オンラインゲームのナンバー1チームのリーダー、デイモンは対ESP兵器のコレクターでもあった。そんな彼に軍需産業「ターガス・インダストリィ」が接触する。いっぽう流刑星というかたちでラフラールを復活させようとするテトはついに新ラフノールへと旅立つ。
 「ラフラール」に続く新生ラフノールサーガ第二弾。


聖悠紀コメント

この作品は「ラフラール」の続編です。この話はしばらく続くのであまり詳しく話せないんですが。冒頭オンラインゲームからはじまるのは、そろそろああいうゲームもポピュラーになってきたので、劇中で出してもわかってもらえるかなと思ってのことです。いま自分ではオンラインゲームはやってないんですが、MMORPGが出てきたころはけっこうやっていました。

No.24
「ドラゴンズブラッド」

 盗賊レモンは依頼を受け「飛竜の血」が封印されているという伝説を持つラフノールの宝石、ドラゴンズブラッドを盗もうとしていた。その依頼は、ロックが追う超能力者ばかりで構成されるという犯罪組織「テンペスト・クラン」からのもので……。「ラフラール」からの系列とは別の視点から描かれた新連邦時代のラフノールの物語。


「ガイアの牙」

 帝国との戦いで傷ついたエスパーの軍人ナーブは、忘れ去られた辺境惑星となった地球へと漂着する。時代に取り残されたその地で傷を癒した彼は故郷に戻ろうとするが、彼の故郷はすでに戦争により消滅していた。いっぽうロックは違法VRキューブをつくる「ドリームウィーバー」の捜査への協力を依頼されるが……。


聖悠紀コメント

「ドラゴンズブラッド」
これも「ラフノール」関係の話ではあるんですが、いまのところ「ラフラール」の系統からは独立しています。時期的にはこの話のほうが「ラフラール」よりもたぶん早い。


「ガイアの牙」
まだ話がはじまったばかりなので、あまりいえないんですが、「新連邦時代の地球がどうなっているか」がテーマのひとつになっています。それがタイトルの「ガイア」の由来です。

No.25
聖悠紀コメント

扉絵風のものは作画グループにロックの1作目を送る前、一番最初に思い浮かんで描いたロックのイメージイラストです。「超人ロック」はここから始まりました。タイトルは、ロック歌手ドノヴァンの「狂人ロック」からです。
 無地のレポート用紙に描かれたロックは、その後のロックらしい顔なので、高校時代のノートに大学時代に描いたのかもしれない。横のは「エネセスの仮面」のエネセスですね。テレパシィとかテレキネシスとか超能力用語も書きだしてますね。自分自身はエスパー用語はA・E・ヴァン・ヴォークトの『スラン』やハインラインで知りました。

No.26

作画グループは1965年ごろ、ばばよしあき、うわだよしのり、関本おさむの3人のマンガ研究会が融合して生まれたようだ。当初の人数は6名。一時は1000人を超すメンバーが所属した伝説的同人サークルである。2016年会長ばばの死去にともない正式に解散した。
 聖悠紀は、66年に同サークルに参加し、肉筆回覧誌『SSM』(『ショートストーリーマガジン』)に「心臓」を掲載。「超人ロック」の1作目はやはり肉筆回覧誌『ストーリィ作品集』に掲載された。また『超人ロック』の最初の単行本は、作画グループシリーズ第2弾として東考社から出版。作画グループシリーズは他にも何冊も出版されている。SG企画として書店流通する会誌『GROUP』を78年に創刊。会員同士の合作を熱心に行い『週刊少年マガジン』に「アキラ・ミオ漂流記」(72年)、『週刊少女コミック』に「ダリウスの風」(77年)、『週刊少年キング』に「1000万人の2人」(78年)を発表した。
 現在作画グループの3羽ガラスである、ばば・みなもと太郎・聖が直接会ったのは、68年に行われた「ぐら・こん」関西支部の会合であった。「ぐら・こん」は新人育成を重視していた雑誌『COM』(虫プロ商事)からはじまった読者交流の場である。
 会誌として『GROUP』『なかま』『ユニオン』なども出していた。他の主な元会員に、あずみ椋、いくたまき、大塚英志、かぶと虫太郎、北原文野、清原なつの、神坂智子、沢田ユキオ、志水圭、中田雅喜、速水翼、belne、山本航暉、横山えいじなどがいる。


聖悠紀コメント

作画グループには高校2年(1966年)の時、『ボーイズライフ』に載った会員募集がきっかけで入会しました。たまたまはがきが2枚残っていたので、2つの会に送ったのだけど、1つは連絡が来なかった。
 作画グループからはガリ版刷りのわら半紙で4ページくらいの講評の載った発行物(『ニュース版』)が来ました。それで何か描かなきゃ、と思って送ったのが「心臓」という作品。『SSM』に載りました。「ロストコロニー」は『グループ』の100号の記念に描きました。

No.27
聖悠紀コメント

緑のスクラップブックは母親が僕の描いた細かなカットとかを集めて貼って作ってくれていたものです。セロテープが劣化してもう全部取れてしまっていますが。

No.28
聖悠紀コメント

『COMICSTRIPS MAGAZINE』は、自分と高校のなかま二人と作った同人誌です。この本で、聖悠紀の名前が初めて使われています。最初はなかまの一人との合作用のペンネームで、苗字は私が古典の授業の時に決め、下の名前はなかまの名前の「良則」を「由紀」と変え「ひじりゆき」と読むことにしました。その後一人で使うようになって「由」の字を「悠」に変え「聖悠紀」表記にしたんです。

No.29

聖悠紀の商業誌でのデビューは少女誌であった。マンガは網羅的に読んでいたが少年向けが主で、少女向けは読んでいなかったという。おそらく少女誌デビューの見通しが立ったころに描かれたのであろう、多くのかわいらしい少女マンガの習作が残っている(ケース27参照)。
 繊細な巻き毛とシャープなメカ、少女趣味と少年趣味がバランスよく同居しているところが、聖作品のもっとも大きな魅力のひとつである。


聖悠紀コメント

商業誌では少女マンガでデビューしました。「この宇宙に愛を」を読んでくださった小学館の編集者・大西亘さんが声をかけてくださったんです。少女マンガを描くことになってから、模写したりしてずいぶん練習しました。当時練習した少女マンガ家さんは、西谷祥子さん、大和和紀さん、水野英子さん、忠津陽子さんかな。他にもたくさんの方の練習をしましたよ。

「アナベル」は「鏡の中のマリィ」のリメイクなんですが、なぜリメイクしようと思ったのかはよく覚えていないんです。たぶんこの変身前の「さえない女の子」が「さえない」という割りにじゅうぶんかわいいじゃないか、みたいなことを誰かにいわれたんじゃなかったかな。それで、だったら今度はちゃんと「さえない」感じに描いてみようと(笑)。

No.30
「スカイホークダンディ」

 銀河連邦軍情報局のエージェント(自称「探偵」)で「宇宙一の女たらし」と称されるダンディと秘書レダの活躍を描く、アクション・コメディ・シリーズ。
 この作品には複数のバリエーションが存在し、現在までに
1)作画グループ投稿版(1972)とその続編(1976、大友出版からの同人単行本刊行時の描き下ろし)
2)『セブンコミック』(小学館)掲載版(1980)
3)『少年KING』増刊(少年画報社)掲載版(1984~87)
の三種が発表されている。これらの作品が厳密に同じ世界観、キャラクターで展開されているのかはあまりはっきりしておらず、特にオリジンストーリーにあたる2)でのダンディは「情報局の任務のために訓練によって「女たらし」にさせられた」という設定になっており、他のバージョンとはかなり印象が異なる。


聖悠紀コメント

この作品を描いたときに「007」は意識してたかもしれないですね。(ダンディが軍の命令で無理矢理「女たらし」にされたという設定に関しては)やっぱり軍人なんで(作戦の目的に合わせて)見た目がいちばんいい奴を選んだら性格的にまったくの堅物で使い物にならない、というのがおもしろいだろうと。この世界の中では、女性の犯罪者が非常に強くなってしまった。それ専門のエージェントがダンディだということですね。

No.31
「サウンド?ラブ 組み合わせ教えます」

 80年前後におけるオーディオの初歩的な配線の仕方を教えるマニュアルマンガ。主人公とヒロインに「くるくるパッX」(小学館)の主人公とヒロインが充てられている。


聖悠紀コメント

この作品の初出はたしか『FMレコパル』(小学館)の別冊だったと思います。(作品リストの)「つなぎかたおしえます」と同じものじゃないかな。
「オーディオ機器のつなぎかた」という実用的な情報がメインの話なので、もちろんそこは間違ったことを描かないよう気を付けました。

No.32
「アグネスの雪物語」
「すすめフィンガー5」
「郷ひろみのジャニーズジュニア特訓」
「桜田淳子の初恋物語」

 『テレビランド』(徳間書店)に掲載された実在アイドルもののマンガ短編群。70~80年代の「テレビまんが誌」は、特撮・アニメをはじめトイなどの児童向けホビー全般を扱う、幼年向け情報誌のような雑誌だった。このため、時期によってはアイドルやバラエティ番組なども誌面に掲載されていた。


聖悠紀コメント

これは『テレビランド』(徳間書店)からの依頼で描いたもので、それぞれ担当さんから聞いた情報をもとに自分で話をつくって描いたんじゃなかったかな。当時編集部サイドではやりとりをしていたのかもしれませんが、少なくとも僕のほうには事務所からのチェックによる変更要請なんかはなかったですね。実際に事務所や本人からのチェックがあったかどうかもわかりません。

壁面展示