作品解説 1

「GUNSLINGER GIRL」の10年に渡る連載は、1か月32ページ1話完結の短編連作という形式で始まった。2巻までにそれぞれの義体のエピソードが描かれ、しだいに組織の職員や、敵方の人物などが登場し、作品世界が広がっていく。
3巻になるとトリエラの宿敵となるピノッキオが登場し中編構成がとられる。彼は暗殺者として育てられた少年で、改造によって暗殺者となった義体たちと対照を成している。
5巻までの表紙は各フラテッロを軸にした短編を象徴するように、白地に義体が一人づつ描かれている。

◇相田裕コメント
「GUNSLINGER GIRL」の初期は一話完結で義体の身の回りのこと、日常を中心に描写しました。これは「FLOWERS」からの流れですね。回を重ねていくと組織のことや敵のことといった、作品世界を拡げていきたい気持ちが生まれ、ピノッキオ編へと繋がっていきます。
自分には"少女の日常"を描くこととは別に、"大きな物語"を描きたいという欲求もありました。初期のスタイルで続けていくことも可能だったと思いますし、それはそれでどんな形で完結するのか見てみたかった気もしますが、私は変化と挑戦の方を選びました。そのことでこれだけの長編を描くことができましたし、作家として成長できたと思っています。


作品解説 2

6巻から8巻までは、ペトルーシュカ、アレッサンドロの新しいペアが主役となる。 ペトルーシュカの"改造"前や"改造"の過程について、また戦いの背景についてが語られ、作品世界の流れが変わっていく。描写面でもコマ割りの工夫や、モノローグの導入などが行われ、義体と担当官の恋を始め、人物の感情がより豊かに描かれるようになる。 9巻と10巻では初期の義体の話に戻り、義体の死の運命と、新たに生きる決意が描かれる。義体の表情が詳しく描かれ、感情がよく伝わる大きく丸い目が印象的だ。

◇相田裕コメント
5巻までで中編的なシリーズが終わり、組織や敵の描写、主要キャラクターの掘り下げが進みました。この先を描くにあたり、新しい空気を作品に取り入れようとして導入したのがサンドロとペトルーシュカです。それまでの「GUNSLINGER GIRL」は悲劇をいかに悲しく描くか、といった描き方をしていました。彼らの登場によりその重さから開放され、新たな視点を物語に導入できたと思います。この試みは大きな挑戦でした。


作品解説 3

11巻から最終15巻は、ヴェネツィアの鐘楼占拠事件から、担当官ジャン・ジョゼ兄弟の過去、建設中の原子力発電所での決戦と、大きな戦闘を交えながら完結へと向かっていく。
12巻で担当官のジャンとジョゼの過去が描かれたことは重要であり、ここで兄弟の戦いの動機が改めて描かれている。
終盤になって現れたジャコモ=ダンテは、これまでの思想的な背景をもったテロリストとは異なる"悪役的な"怪物である。
決戦終了後の組織の解体も最終巻で丁寧に描かれ、登場人物の行動が改めて意味づけされる。単行本で加筆された「エピローグ」もある。

◇相田裕コメント
10巻までのエピソードで義体がもつ短命の宿命について描きました。「GUNSLINGER GIRL」のヒロインは義体たちですが、もう一方の主役である担当官のことも描かなければ、この物語の幕引きはできません。11巻以降はジャコモ=ダンテを登場させ、兄弟の過去を明らかにするなど、終幕をかなり意識して執筆しました。
終盤は、クローチェ兄弟、各フラテッロ、様々な登場人物たちの行動と意思を、大きな流れの中に織り込んでいく構成をとりました。難しい作業でしたが、描きたいと思っていた"大きな物語"をやり遂げることができたと感じています。