第1期:2017年9月29日(金) - 10月23日(月)



ー 現代チェコ・コミックを代表する4人の作家たち ー
このコーナーでは、現代チェコ・コミックを代表する作家たちを特集し紹介した。会期ごとにひとりの作家をピックアップし、壁で原画展示を行い、中央の覗き込みケースでは残り3人の現代作家を書籍とともに紹介した。

■ パヴェル・チェフ Pavel Čech

 1968年ブルノに生まれ現在も在住。元々は鍵職人の修業をしていたが、芸術・コミック・そしてイラストへの愛が勝り、 1990年に最初のコミックスを自費出版、4年後には初めての個展を開いた。
 2000年以降は、コミックスと絵本を融合した新しい方向性を切り開いた。現在は両方のジャンルの専門性を認められ、広く現代の巨匠として評価されている。長年にわたるコミックスや絵本のプロジェクト、例えば、おそらく最も野心的なコミックスである200ページの長編などによって、いくつかの賞を受賞している。
 その長編「ペピーク・ストシェハの大冒険」(The Great Adventure of Pepík Střecha / 2012年)は、2013年にチェコにおいて重要な賞であるMagnesia Litera賞の児童書部門を受賞した。
 伝統的な冒険物語とイラストレーションをこよなく愛し、生涯にわたるウッドクラフトリーグ(※)のメンバーであり、そして2人の息子の良き父である彼は、ノスタルジックなトーンと日々のはかない美しさでその作品を彩っている。
 彼の作品には、北アメリカ人であるインディアンへの愛と、思春期の物語、そして過ぎ去った今も忘れ難い無垢な幼年期が生き生きと描かれている。
 これまでに20以上の個展が開催され、その絵本は英語、フランス語、イタリア語、クロアチア語、ロシア語、スロベニア語に翻訳されている。またコミックスはルーマニアとウクライナで出版されている。

※ウッドクラフトリーグ=本展による追加注。アメリカで1902年に設立され、ボーイスカウト運動の原型になった青少年教育運動「Woodcraft Indians」の流れを汲む自然共生運動。チェコでは1921年に高校の生物教師ミロシュ・サイフルト(Miloš Seifert)が著書『Životem a přírodou k čistému lidství』発表後ボーイスカウトと分化し、独自の発展をしている。




紙飛行機 Vlaštovka

 「紙飛行機」は2004年に描かれた1ページのコミックスで、パヴェル・チェフの初期作品。技法的にはやや粗く、モノクロの画面は(特にフルカラーのページと並ぶと)いくぶんスケッチのように見えるかもしれないが、すでに、説明不要の夢のような雰囲気がある。彼は今、文字通りコミックスを紙に載せて世界中に送っている。それが、今まさに日本にも届いたのである。


Vlaštovka
紙飛行機
Pavel Čech パヴェル・チェフ
2004




星 Hvězda

 2011年の短編コミック集『おじいちゃんたち』(Dědečkové)で、パヴェル・チェフは、老人の生活に対して、詩的でノスタルジックな見方を提示する。体力は落ちたとしても、小さな喜びを見出し楽しむ彼らの意志が尊重される。展示されたページは、真夜中に老人が リンゴ畑に星を拾いに行くストーリー、「星」(Hvězda)より。


Hvězda

Pavel Čech パヴェル・チェフ
2011




ペピーク・ストシェハの大冒険 The Great Adventure of Pepík Střecha

 200ページを超える描きおろしのコミック単行本『ペピーク・ストシェハの大冒険』は、いい子だが少し内気な天然パーマの少年・ペピークの成長物語。彼は、恐れを克服し、能動的に生きる道をみつけなければならない。現実と夢の世界とのあいだで自分を見失わないために。夢をみているうちはまちがうことは何もないけれど、世界に受け入れられるためには、旅に出なければならない。時に暗雲が立ち込め、危険な目にあうことがあっても。


The Great Adventure of Pepík Střecha
ペピーク・ストシェハの大冒険
Pavel Čech パヴェル・チェフ
2012




ペピーク・ストシェハの大冒険 The Great Adventure of Pepík Střecha

 「もし夢なら 今すぐ目よ覚めろ!」と、見開き左下の吹きだしを通して、木製の洗面器に乗ったペピーク・ストシェハは思っている。北斎風の波、激しい嵐。ほとんどすべてが失われたかと思ったとき、遠くに光を見出し、イルカに救われ海岸に導かれる。島へ、安全に。彼は旅を続けることができることとなった。


The Great Adventure of Pepík Střecha
ペピーク・ストシェハの大冒険
Pavel Čech パヴェル・チェフ
2012




ペピーク・ストシェハの大冒険 The Great Adventure of Pepík Střecha

 旅の終わり、ペピークは庭にうち捨てられた小さな家を見つける。気づかないうちに彼の心は無気力では無くなり、ぼんやりした灰色や青、緑から、明るく輝く金色に塗りかえられた。
“まばゆい太陽の光が木々の間から差し込み、不思議な琥珀色で森を覆う。ハエがブンブン飛び回り、鳥は茂みでうたう。”
 新しい同級生(たぶん彼の初恋の相手となる少女)に導かれて、彼は自分に与えられた天分を全うしていく。


The Great Adventure of Pepík Střecha
ペピーク・ストシェハの大冒険
Pavel Čech パヴェル・チェフ
2012




すばらしきブックミステリー Velká knižní záhada

 パヴェル・チェフの近年の絵本の1つに2014年、ペトロコフより出版された「すばらしきブックミステリー」(Velká knižní záhada)がある。
 猫(アルフレッド)とネズミ(キビド)の競争についての古くからの民話をモチーフに、興味深いひねりを加えた近年の絵本。古典的な冒険物語やマンガがいっぱい収蔵されている図書館で、二匹が争うのがこの本の魅力の一つ。このイラストの活き活きしていること! これは、アルフレッドが誇らしげに自分の獲物コレクションを飾っているところである。 キビドの頭は次の尊い獲物になってしまうのだろうか?


Velká knižní záhada
すばらしきブックミステリー
Pavel Čech パヴェル・チェフ
2014




↑中央覗き込みケースのようす。




■ チェコ・コミックの現在(2000年以降)
  ─ チェコ・コミックの現状と魅力 ─

 チェコ共和国のコミックスは、今、黄金期にあるといえるかもしれない。すべてのイデオロギー的抑圧がなくなり、世界と相互交流できるようになったため、世界中の代表的なコミックスにチェコ語で目を通すことができ(日本のマンガ含む)、翻訳前のおもしろい作品もほぼ手に入れることができる。また現代のコミックスだけでなく、20世紀チェコの有名なコミック作家のコレクションなども編纂され、若い読者も先駆者の仕事を知ることができる。しかし最も重要なのは、コミックスが、低俗で馬鹿げたものであるというレッテルがなくなったことだ。コミックスの評価が、「コミックスが発展した」国々と同様、肯定的なものになったのである。
 一方、チェコ・コミック史の転換点となった、チェコ・コミックならではの出来事もある。そのうちの重要な3つの出来事はまるで魔法のように2000年に起こった。
 まず、パヴェル・チェフ(1968-)の初出版作品『ルディ』の刊行。そして、自費出版のコミック雑誌『AARGH!』の創刊。3つ目は、現代コミックスのコンベンションが初めて開催されたこと。現在も定例化されているコミックス関係のイベントが2000年に始まったのである。パヴェル・チェフと『AARGH!』登場の重要性は、壁の原画および、ケースで紹介しているので参照してほしい。
 2000年以降は、出版の形態が根本的に変化した。若い世代にとってはインターネットが、コミックスを発表する際のもっともアクセスし易く、独立性も高いプラットフォームとなった。自費出版が盛んな時代は終わったが、少数のコピー本のアンソロジーや雑誌はまだ存在し、時にはシルクスクリーンで印刷された凝ったものも出されている。また、新聞等の伝統的なメディアでも、時にはコミックスを掲載している。だが、主流は単行本での出版である。書店や図書館で、コミックスが自動的に児童文学に分類される時代は終わりを迎えた。
 パヴェル・チェフのほかにも、現在のチェコ・コミックシーンで活躍するアーティストのグループがいくつかある。
 まず、2000年以前は雑誌で描いていたが、近年、単行本として出版されるグラフィックノベルの作家へと移行しているグループ。中央の机型ケースで紹介しており、3期に原画を展示するルチエ・ロモヴァー(1964-)はその中でも最も注目すべきアーティストである。
 もう一つは、2000年以降、自費出版でデビューした、主に作者自身が著作権を管理しつつ活動する作家たちである。おそらく最も成功したのは、プラハの美術アカデミーを卒業したイジー・グルス(1978-)である。彼の習得した絵画技術は、いくつかのグラフィックノベルに表れ、目を見張るものがある。ブランコ・イェリネック(1977-)、ホンザ・バジャント(1979-)、トイボックス(1978-)などもここに属している。
 従来の商業的コミックスの作風で描き続けているアーティストの中で最も人気があるのは、19世紀の古典的冒険小説を現代風にコミカライズしたぺトル・コプル(1976-)だろう。かつて主流だった児童向けコミックスを描く作家は、トマーシュ・フルト(1976-)やダン・チェルニー(1982-)のような著名なアーティストが登場してはいるが、全体に少なくなっている。
 他の芸術分野で主に活躍しているアーティストが、コミックス制作に参加している場合もある。例えば、著名な作家であるヤロスラフ・ルディシュ(1972-)は、グラフィックノベルの三部作、「アロイス・ネーベル」(ドイツ語、フランス語訳あり)の原作者だ。映画制作に関わっているヴォイチェフ・マシェクとジャン・ババン(ともに1977-)は、同時に最もオリジナリティあふれるコミックス原作者の代表でもある。ダヴィッド・ベーム(1982-)とイジー・フランタ(1978-)は、美術業界とコミックス業界を行き来することに成功している。
 チェコ・コミックは(国が何度も変動することによって)伝統が十分に根付いていないことや、市場規模の小ささなどの問題を抱えてはいるが、20年以上にわたって継続し、発展している。その未来は明るいだろう。



アロイス・ネーベル Alois Nebel

 車掌、アロイス・ネーベルについての三部作は今世紀に入ってもっとも大きな影響力を持ったチェコ・コミックだろう。この物語は国家的なトラウマについて描き、一般社会に対してコミックスがもう子どものためだけのものではないことを印象付けた。原作者のルディッシュは著名な文学者。ドイツ語、フランス語に翻訳され、アニメ化もされている。


Alois Nebel-Bílý potok
アロイス・ネーベル 1巻
Jaroslav Rudiš, Jaromír 99
ヤロスラフ・ルディシュ、ヤロミール99
2003

Alois Nebel-Na trti
アロイス・ネーベル 3巻
Jaroslav Rudiš, Jaromír 100
ヤロスラフ・ルディシュ、ヤロミール100
2008



ヴォルマン Voleman

 Voleman(ヴォルマン)シリーズは2007年に始まった。名前に「マン」がつくので正義の味方っぽく感じるかもしれないが、ヴォルマンはスーパーヒーローではない。ここで語られる物語には日常と都会のファンタジーがミックスされ、若干の自伝的(または少なくとも個人的)なモチーフも織り交ぜられている。描き下ろし単行本4冊と、大判のものは雑誌に連載されたものを集約したバージョン。


Voleman 1 ヴォルマン1
Voleman 2 ヴォルマン2
Voleman 3 ヴォルマン3
Voleman 4 ヴォルマン4
Jiří Grus イェジィ・グルス
2007,2007,2008,2009

Voleman ヴォルマン完全版
Jiří Grus イェジィ・グルス
2010



カバの沈黙 Ticho hrocha

 ダヴィッド・ベームはチェコ美術界で尊敬すべきアーティストとして知られる。彼はいまのところ唯一のコミックスアルバムであるこの本においてアフリカの民話(正確には学校のプロジェクトとしてアフリカの子供たちが文字化したアフリカの民話)を描いている。


Ticho hrocha
カバの沈黙
David Böhm
ダヴィッド・ベーム
2009



ジェネレーション・ゼロ různí: Generace Nula

 21世紀に入ってコミックス制作をはじめたクリエイターたちはチェコでは「ジェネレーション・ゼロ」と呼ばれることがある。彼らは出版可能性「ゼロ」の状態から活動をはじめ、収入の見込みも「ゼロ」、そして三つの「ゼロ」がついた2000年に活動をはじめたからだ。


různí: Generace Nula
ジェネレーション・ゼロ
various 共著
2010



私たちはまだ戦火の中にいる různí: Generace Nula

 このアンソロジーは、20世紀の全体主義体制についての様々な目撃者へのインタビューに基づき、異なるアーティストたちによって描かれた13の短いコミックを集めたものだ。開いたページは今チェコで注目のコミック作家、ヴァーツラフ・シュライヒ(Václav Šlajch)のページ。


různí: Ještě jsme ve válce
私たちはまだ戦火の中にいる
various 共著
2011



タイムマスター:スペクトラル・フォース Pán času-Přízračná tvář

 時間が止まったらあなたはなにをするだろうか? このファンタスティックな物語の主人公にとって、それは奇妙な現代の都市景観をさまよい、驚嘆しつつもただ生きることだ。


Pán času-Přízračná tvář
タイムマスター:スペクトラル・フェイス
Branko Jelinek
ブランコ・イェリネク
2012



アントニン・ドヴォルザーク Antonín Dvořák

 伝記コミックスは現代チェコ・コミックにおいては非常に大きなサブジャンルを形成している。この著名な作曲家についてのレナータ・フチコヴァの作品はその最良のサンプルのひとつだ。こうしたコミックスでは読者に教養とメッセージ、娯楽を同時に提供することができる。


Antonín Dvořák
アントニン・ドヴォルザーク
Renáta Fučíková
レナータ・フチコヴァ
2012



ザトペック Zátopek

 エミール・ザトペックはチェコスポーツ界の伝説である。彼は1948年のロンドンオリンピック、1952年のヘルシンキオリンピックにおいて合計三枚の金メダルを獲得した。この伝記コミックスは彼の物語に潜む政治的文脈を紐解き、2016年発売のグラフィックノベル最大のベストセラーになった。


Zátopek
ザトペック
Jan Novák, Jaromír 99
ヤン・ノヴァーク、ヤロミール99
2015



オスカー・エド 第1部 Oskar Ed 1díl

 2003年から05年にかけて出版された、この奇妙なタイトルキャラクターについてのシュールレアルな三部作は、幻想的な心理と父と子の感動的な物語とを結びつけている。


オスカー・エド:眼Oskar Ed - Oči

 ブランコ・イェリネクにとってオスカー・エドは一種の「役者」である。彼はすべての物語でオスカーを使い続けているが、その度に異なった役柄を演じている。


Oskar Ed 1díl
オスカー・エド第1部
Branko Jelinek
ブランコ・イェリネク
2003

Oskar Ed - Oči
オスカー・エド:眼
Branko Jelinek
ブランコ・イェリネク
2014



私の本・ウィネトウ Moje kniha Vinnetou

 死についての個人的な物語。開かれた心をもったアナーキストの肖像と死に打ち克つためのファンタジーという夢が語られている。


Moje kniha Vinnetou
私の本・ウィネトウ
ToyBox
トイボックス
2014



ドラゴンは眠らない Drak nikdy nespí

 トルトノフ市の創立伝説に材を採ったグラフィックノベル。龍との戦いの物語を個人的な責任、誘惑、人格についての思索的な物語へと再構築している。


Drak nikdy nespí
ドラゴンは眠らない
Vojtěch Mašek,Džian Baban,Jiří Grus
ヴォイテク・マセック、ジアン・ババン、イェジィ・グルス
2015



ファノーシュ:悪魔の工場 Fanouš - Továrna zkázy

 ファノーシュは少年ゴーストバスターだ。彼は超自然的な怪物をやっつける!願わくばとびっきりのご褒美もいただいて!  ダン・チェルニーはこの「超シリアスな」キャラクターについての愉快な物語を数多く描いてきている。


ファノーシュ:リンバーガーチーズの恐怖 Fanouš - Romadurový teror

 ファノーシュの物語のほとんどは、ブラック&ホワイトで描かれている。このリンバーガーチーズの幽霊に関する短編は珍しくカラーの作品。展示は同作が表紙を飾る『AARGH!』11。


Fanouš - Továrna zkázy
ファノーシュ:悪魔の工場
※手前・右奥の2冊
Dan Černý
ダン・チェルニー
2012

Fanouš - Romadurový teror
ファノーシュ:リンバーガーチーズの恐怖
Dan Černý
ダン・チェルニー
2012



ファノーシュ:クリトラの3つの試練 Fanouš - Tři Úkoly Pro Klytoru

 ファノーシュが宇宙人につかまった友だちの女の子クリトラを救出しに行く話。


スーパーかたつむりくん Tryskošnek

 ファノーシュのダン・チェルニーによる昆虫の世界を舞台にしたスーパーヒーローパロディ。伝統的な児童向けコミック誌『Čtyřlístek』に連載。


Fanouš - Tři Úkoly Pro Klytoru
ファノーシュ:クリトラの3つの試練
Dan Černý
ダン・チェルニー
2012

Tryskošnek
スーパーかたつむりくん
Dan Černý
ダン・チェルニー
2017



チェコ人1948 :共産党はいかにして権力を掌握したか
Češi 1948 -Jak se KSČ chopila moci

 非常に高い評価を受けている、最近出版されたチェコスロヴァキアの現代史におけるターニングポイントを描く、全9巻のシリーズ。この巻は1948年2月の共産党による権力掌握に焦点を当てている。


Češi 1948 -Jak se KSČ chopila moci
チェコ人1948:共産党はいかにして権力を掌握したか
Pavel Kosatík, Karel Osoha
パヴェル・コサティーック、カレル・オソハ
2016



様々なチェコ・コミック(雑誌や自費出版書籍)

 2000年以降のチェコのコミックスカルチャーは『AARGH!』誌だけでなく、さまざまな自費出版プロジェクトを生み出している。こうしたプロジェクトの多くは営利目的ではなく、発行部数も少ない。


様々なチェコ・コミック本(雑誌や自費出版など)
Various Czech comics magazines and fanzines
2000-2016



フレッド・ブルノールドのモンスターキャバレー
Monstrkabaret Freda Brunolda

 2003年から09年にかけて発表された、モンスターキャバレー三部作は、中央ユーロッパの歴史について、シュールレアルな筆致と幻想的で皮肉なテーマとを織り交ぜて描いている。


パンデモニアム Pandemonium

 モンスターキャバレーのクリエーターたちが描いた別の作品。彼らの架空世界を拡張し続けている。彼らは当初この特別で奇妙な隣人たちの物語を週刊のニュース雑誌で連載していた。


Monstrkabaret Freda Brunolda 3.díl Poslední chobotango
フレッド・ブルノールドのモンスターキャバレー 3巻
ラスト・ゾウの鼻・タンゴ
Vojtěch Mašek, Džian Baban
ヴォイテク・マセック、ジアン・ババン
2008

Pandemonium
パンデモニアム
Vojtěch Mašek, Džian Baban
ヴォイテク・マセック、ジアン・ババン
2008



スフレフトロイド屋敷からの会話 Hovory z rezidence Schlechtfreund

 モンスターキャバレーの架空世界はコミックに限られていない。モンスターキャバレーの物語は演劇やショートムービーというメディアでも発表されている。また、隔週刊カルチャー誌『A2』に連載されているこの作品のようにコミックストリップとして雑誌連載される場合もある。


Hovory z rezidence Schlechtfreund
スフレフトロイド屋敷からの会話
Vojtěch Mašek, Džian Baban
ヴォイテク・マセック、ジアン・ババン
2005-現在



ネゴシエイテッド・ストーリーズ:ケヴァ O přibjehi: Keva

 全3冊の「ネゴシエイテッド・ストーリーズ」プロジェクトの一冊。ジプシーの少女ケヴァを語り手に、チェコ人の人種的偏見や思春期の悩みを描く作品、チェコでは珍しいドキュメンタリーコミックスであり、オピニオンを提示することを恐れないスタイルをもっている。


O přibjehi: Keva
ネゴシエイテッド・ストーリーズ:ケヴァ
Máša Bořkovcová,Markéta Hajská,Vojtěch Mašek
マーシャ・ヴォジコフツヴァー、マルケータ・ハーイスカー、
ヴォイテク・マシェック
2010



カヤとフィリップ Kája a Filip

 1989年のビロード革命以来、多くの作家は以前は禁じられていた大人向けの作品を手掛けるようになり、チェコの子ども向けコミックスは後景に追いやられた。トマーシュ・フルトはいまも年少児童向けの作品を描き続けている数少ない作家のひとりである。


Kája a Filip
カヤとフィリップ
Tomáš Chlud
トマーシュ・フルト
2008



ツィリルとミクラ―シュ Cyril a Mikuláš

 未来から来た兄弟の冒険を描いているトマーシュ・フルトの作品。2012年に始まり現在も続いている。友だちのロボットの助けを借りて彼らは時を遡り、チェコや世界におけるさまざまな文化的、政治的事件に立ち会うことになる。


Cyril a Mikuláš
ツィリルとミクラーシュ
Tomáš Chlud
トマーシュ・フルト
2012

Cyril a Mikuláš
ツィリルとミクラーシュ
Tomáš Chlud
トマーシュ・フルト
2013



ヴルチャプカ警視 Komisař Vrťapka

 チェコの子供向けコミックスには伝統的に「犬探偵」のキャラクターが存在している。擬人化された犬の探偵たちはしばしば鹿撃ち帽をかぶりシャーロック・ホームズにオマージュを捧げている。


Komisař Vrťapka (hračka)
ヴルチャプカ警視(玩具)
Pavla a Tomáš Etrychovi,Petr Morkes
パヴラ&トマーシュ・エトリッヒ、ペトル・モルケス
2011

Komisař Vrťapka -Sebrané spisy 3
ヴルチャプカ警視 選集3
Pavla a Tomáš Etrychovi,Petr Morkes
パヴラ&トマーシュ・エトリッヒ、ペトル・モルケス
2011



三銃士 Tři mušketýři

 文学のコミカライズは、チェコのコミックス界では20世紀には盛んだったが、21世紀になるとあまり一般的でなくなった。そのうちの珍しい例がこの本。このアレクサンドル・デュマの古典的冒険活劇のコミックス版は季刊の子ども向けコミック誌に連載されている。著者のぺテル・コプルは、以前からある伝統的な描き方のコミック作家の中では、最も人気がある作家のひとりである。


Tři mušketýři
三銃士
Petr Kopl
ぺテル・コプル
2015,2017




特集1:Pavel Čech パヴェル・チェフ




ルディ Ruddy

 パヴェル・チェフのデビュー作。勇壮なスクーターレースの物語。


Ruddy
ルディ
Pavel Čech
パヴェル・チェフ
2000



おじいちゃんたち Dědečkové

 老人たちの冒険や夢を詩的な筆致で語った短編集。タイトル以外はセリフの入らないサイレントコミックスである。


Dědečkové
おじいちゃんたち
Pavel Čech
パヴェル・チェフ
2011



ペピーク・ストシェハの大冒険 Velké dobrodružství Pepíka Střechy

 200ページを超える長編グラフィックノベル。いい子だが、少し孤独な少年ペピークがコンプレックスに打ち克ち、自らの心の動揺と闘いながら、より積極的な人生を切り拓いていこうとする成長物語。


Velké dobrodružství Pepíka Střechy
ペピーク・ストシェハの大冒険
Pavel Čech
パヴェル・チェフ
2012



クイック・スクォーレルの冒険2 宝物 Dobrodružství Rychlé Veverky 2 - Poklad

 200ページを超える長編グラフィックノベル。いい子だが、少し孤独な少年ペピークがコンプレックスに打ち克ち、自らの心の動揺と闘いながら、より積極的な人生を切り拓いていこうとする成長物語。


ズーム2 ZOOOM 2

 パヴェル・チェフはコミックス・クリエイターとしてだけではなく、イラストレーターとしても知られている。このささやかな画集はその証拠のひとつである。


Dobrodružství Rychlé Veverky 2 - Poklad
クイック・スクォーレルの冒険2 宝物
Pavel Čech
パヴェル・チェフ
2013

ZOOOM 2 ズーム 2
Pavel Čech パヴェル・チェフ
2013



すばらしきブックミステリー Velká knižní záhada

 猫(アルフレッド)とネズミ(キビド)の競争についての古くから伝わる民話をモチーフに興味深いひねりを加えた、近年発表された絵本。古典的な冒険物語やコミックスがいっぱい収蔵されている図書館を舞台に二匹が争うことがこの本の魅力の一つである。
 展示のページでは、2匹が有名な「リフレー・シーペ」(「速い矢」)の中を駆けめぐっている。


Velká knižní záhada
すばらしきブックミステリー
Pavel Čech
パヴェル・チェフ
2014




特集2:雑誌『AARGH!』




『AARGH!』

 雑誌『AARGH!』は「新しいチェコ・コミック」の代表的な出版形式のプラットフォームとなった雑誌である。同誌は一種の自費出版として2000年にスタートしたが、後に年刊の定期刊行物へと発展していった。


『AARGH!』1
『ア゛ア゛ー!』1
2000



『AARGH!』 アニバーサリー・スペシャル

 2010年、『AARGH!』誌はこの豪華なハードカバーの記念号を発刊し、10周年を祝った。


『AARGH! Výroční speciál』
『ア゛ア゛ー! アニバーサリー・スペシャル』
2010



『AARGH!』10

 『AARGH!』誌は若手とベテランに対し隔てなく誌面を提供している。また、その誌面の重要な要素のひとつとして、チェコ周辺のヨーロッパ諸国のコミックシーンのマッピングをおこなっている。


『AARGH!』10
『ア゛ア゛ー!』10
2011



『AARGH!』15

 近年になって『AARGH!』誌は40~50ページのより長い作品を掲載するようになってきた。この長さの作品は現在のチェコ・コミック市場には適した掲載媒体がないため、これまでは出版機会を得られなかったものである。


『AARGH!』15
『ア゛ア゛ー!』15
2016



『AARGH!』16

 現在『AARGH!』誌は、その号に寄稿しているアーティストが別途作成したバリアントカバー版(中は同じでカバーだけバリエーションがある版)も発行している。展示左側はカテジナ・チュポヴァー(Kateřina Čupová)、右側はズザナ・チュポヴァー(Zuzana Čupová)による表紙。


『AARGH!』16
『ア゛ア゛ー!』16
※上下とも
2017