商品部門 Commodity

商品とは、市場において貨幣との交換により売買される経済財であり、消費者にとっての有用性(使用価値)と製造・販売者にとっての収益性(交換価値)のバランスの上に成立しています。この展示は、我が国における優れた文化的所産でもある、伝統的な手工業製品(伝統的工芸品)を具体例に、文化的背景、原材料、製法、デザイン、新旧商品の対比などを通して、支払う対価に見合う商品の有用性(使用価値)とは何か? を考えることをテーマとしています。

陶磁器



成形した粘土素地を焼成・硬化させて、表面をガラス質の被膜(釉)で覆っている。さまざまな色に釉を発色させたもの、土味を生かすため無釉としたもの、白い素地に絵の具で絵柄を施したものなど、各地に個性的な産地が分布する。碗・皿・鉢などの食器類、茶華道具などが生産されてきたが、生活様式の変化に応じて器種構成も変わりつつある。

漆器



器物にウルシの木の樹液を塗っている。適正な取扱いによって高い耐久性を示す。固化後の美しい“つや”、金や貝片を用いた装飾技法により、日本を代表する工芸として世界的な評価を受ける。椀・膳・盆・重箱などの食卓用品、花器などの調度が製作されてきたが、高い製造コストに見合う高付加価値商品としてのマーケティングが課題となっている。

竹木工品



豊かな森林資源を擁する日本列島においては、木・竹・蔓・茎といった身近な自然の中から採取される植物を加工し、さまざまな生活用品が作られてきた。機械工程による省力化が難しく、国産品としては実用品・日常雑貨類が姿を消し、美術工芸的付加価値の高い装飾調度が主流となっているが、素朴ながらも非常に精緻な技術が今日に継承されている。

染織品



自然環境や生活習俗との関わりから多様な織り技法、染め技法が生み出され、さまざまな絵柄・文様が表現されてきた。晴れ着から普段着まで、和装の着尺地・帯地が生産の中心だったが、洋装化が進んだ今日において需要は大きく変化した。近年では、洋服生地はもちろん、様々な生活用品の素材としてデザイン性を生かした応用が試みられている。

金工品



用途に応じて材質・製法が合理的に選択され、銅像や梵鐘など大型のものから彫金や象嵌など精緻な装飾が施された装身具、包丁や食器などの実用品からインテリア類まで、さまざまな製品がある。元来、原材料の希少性が高かったことから高付加価値商品として受容され、技術・性能も付加価値としてふさわしい世界的な競争力を備えている。

和紙と筆



植物性の長繊維を漉き上げて作られる手漉き和紙は強靭で耐久性に優れ、素材としての特性が洋紙とは異なる。襖・障子紙などの建材、書写用紙としての需要は減ったが、独特の風合いを持つ素材としてさまざまに応用されている。筆は材料を吟味する職人(筆司)の経験に培われた眼力と触覚が品質を決定付ける。毛の硬軟の組み合わせによってさまざまな書き味となる。
動画(5分49秒)