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ゲストスピーカーによる特別授業(7月3日実施)

実施日:2015年7月3日(金)
実施場所:駿河台キャンパス 1021教室
科目名:観光事業論A
ゲストスピーカー:三浦 左千夫(北里大学 医療衛生学部 健康科学科 非常勤講師)

実施内容:
 「海外旅行における感染症対策—世界を駆け巡る寄生虫疾患—」をテーマに、三浦左千夫先生にご講義をお願いした。三浦先生は、慶応義塾大学医学部や日本赤十字社などに勤務された後、現在はNPO法人-MAIKEN副代表の他に、北里大学医療衛生学部健康科学科などで教鞭をとられている。三浦先生のご専門は、感染症の病原体のうち、サシガメ(吸血性カメムシ)を原因とするシャーガス病である。
 感染とは、微生物が体内で増殖することである。その際、身体の一部や全身に異常反応を生じた状態が感染症と呼ばれている。感染症が成立するためには、①感染症の原因となる感染源(微生物)が存在すること、②その微生物が人間(標的動物)に辿り着く感染経路が存在すること、③その微生物に感染する個体が存在すること、が必要である。ただし、感染の成立には、微生物の病原性・毒力の強弱、接種菌量と人間の感染抵抗力との力関係が作用する。感染源としての病原体には、細菌、ウィルス、真菌、リケッチア、クラミジア、原虫・寄生虫が挙げられる。特にサシガメのような寄生虫は、人間と同じ動物に分類される。感染ルートには、経口感染、経皮感染、節足動物の吸血に伴なう感染がある(本田武司編『はじめの一歩のイラスト感染症・微生物学』羊土社、2011年、23‐25頁、115-119頁)。
 わが国では忘れ去れていた寄生虫疾患が再び私たちの身の回りに忍び寄りつつある。リゾート地(ブラジルのような熱帯地域周辺の国々)で、例えばサシガメや蚊といった吸血昆虫に刺され、シャーガス病に感染した現地人や外国人旅行者の世界的な移動が増加しているからである。シャーガス病は本人に明確な自覚症状がなく、外見も健常者と変わらないからである。だが、20~30年後、突然に心臓が破裂するという衝撃的な事態となってしまうこともある。そのため、万が一リゾート地でサシガメや蚊に刺されたならば、帰国後ではなく、現地の専門医を受診することが重要とされる。日本よりも現地のほうが、迅速・適切な処置が可能だからである。
 海外旅行に出かける時は、滞在先の衛生環境の確認に加えて、吸血昆虫に刺されないように、忌避剤の使用や素肌を覆い隠す服装などの予防策が肝要である。
                                                       
                                                                                                                                藤井 秀登(科目担当教員)