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学生相談室

「相談室の窓から」~ありのままで~

2014年11月20日
明治大学

『ありのままで』
                            学生相談室 相談員
文学部 准教授  竹松志乃

 
 今年(2014年)、アニメーション映画興行記録第1位ほか、今なお多くの記録を更新し続けるディズニー映画『アナと雪の女王』は、アンデルセン童話を原作とする見事なストーリー展開とともに、その主題歌『レット・イット・ゴー(ありのままで)』も大ヒットしました。上映中の映画館で、ヒロインの歌に合わせ観客が大合唱する光景も話題となりましたね。

 私の専門は臨床心理学で、臨床心理士として、これまでさまざまなクライエントの方にお会いしてきたのですが、この歌を耳にすると、職業病というのでしょうか、いつも思い出されるあるフレーズがあります。児童心理療法家として著名なV,アクスラインが提唱した『アクスラインの8原則』のなかで、彼女は治療者のあるべき姿勢を8つ挙げているのですが、「あるがままの受容」はそのなかでも最も大切なものの一つです。「受容」とは「無条件に寄せる肯定的(積極的)な関心」とも言われるもので、「いろいろな条件をつけずに、まず目の前の相手のありのままに対して肯定的な関心を寄せる」という姿勢です。

 私たちは、他者に対して「・・したら認めてあげましょう」「・・できたら愛してあげましょう」などと、つい相手を受け入れるための条件を付けてしまいがちなのですが、カウンセリングの場面では、「無条件」という原則を意識しながらお話を伺うことになります。そもそも来談者は、何らかの理由で(しばしば自分でも無意識なのですが)いわゆる一般常識から外れた言動をとったり、周囲とトラブルを起こすなどして来談に至った場合が多いわけですから、カウンセラー側がアクスラインの提唱するこの姿勢・関係性を相手方に対して提供することは、大きな意味を持ちます。来談者の大半はこれまでの人生で、個人差はあれ「自分のありのまま(本当の自分)を愛せない、大切にできない、生きてこられなかった」ことが推測されますので、カウンセリング過程を通して、少しずつ自己尊重感を回復し、自己や他者の受容を進め(「I’m OK. You’re OK.」)、その方が本来持つ「自己治癒力」「自己解決力」を引き出すお手伝いをすることが、カウンセラーの大切な役割だと考えています。

 「自分や他者のありのままを認め、受け入れる」ことの大切さと難しさに真剣に向き合うことは、大学時代だけでなく、その後の人生にも必ずや役立つことと思います。その必要性を感じられる時・場面がもしありましたら、ぜひ気軽に学生相談室を利用なさってください。