【共同声明】「大学の国際化推進に向けた政治的決断を」
大学の国際化推進に向けた政治的決断を 国際化拠点整備事業「グローバル30」構想責任者
私たちは、平成21年度に開始された国際化拠点整備事業(「グローバル30」)に採択されている大学です。このたび、行政刷新会議の事業仕分けにより、採択大学において英語のみによって学位のとれるコースを数多く新設し、世界中から能力の高い留学生を日本に集め、海外大学共同利用事務所を開設するなど日本の大学の一層の国際化をはかろうとする同事業の取り扱いが「縮減」となったことに、大きな衝撃を受けています。 「グローバル30」採択大学は、「留学生30万人計画」が国の基本方針であると信じ、留学生や外国人教員の受入れの達成目標の旗印を掲げ、今まさに、激しい国際的大学間競争の荒海に乗り出そうとしておりました。鳩山総理大臣が所信表明演説で以下のように述べられたことは、私たちに対する激励であり鼓舞であると感じました。 今後、さらに国民の間での文化交流事業を活性化させ、特に次世代の若者が、国境を越えて教育・文化・ボランティアなどの面で交流を深めることは、東アジア地域の相互の信頼関係を深化させるためにも極めて有効なものと考えております。このため、留学生の受入れと派遣を大幅に拡充し、域内の各国言語・文化の専門家を飛躍的に増加させること、そして、日中韓で大学どうしの単位の互換制度を拡充することなどにより、30年後の東アジアやアジア太平洋協力を支える人材の育成に長期的な視野で取り組んでまいります。 さらにまた、鳩山総理は、就任以来、海外で開催された主要な首脳級の会議で重ねて「アジアの大学間交流の拡大」の重要性について強調されてきました。私たちもその重要性を改めて強く認識し、そのためにもこの「グローバル30」を活用しつつ、これまで進めてきた取り組みの充実を図るとともに、様々な新しい取り組みを進めていくこととしてきました。今後日本の大学とアジアの大学との交流が発展拡大していくか否かは「グローバル30」採択大学の今後の取り組みにかかっていると言っても過言ではないと思っております。このような決意で計画を進めてきた私たちにとって、現在の日本の国際化にとって最も望まれる政策であろうと思われる「グローバル30」予算を「縮減」せよとの判断は、衝撃以外の何ものでもありません。また、大学がこれまで積み上げてきた海外との交流について信頼関係を損ない、国際的信用を失うことにもつながることが危惧されるところです。 グローバル化が一層進展している今日において、留学生の積極的な受け入れを国家戦略の一つとして位置付け、複雑化・多様化する時代に適応する人材育成につなげていくことの重要性は言うまでもありません。また、留学生をより積極的に受け入れること、研究実績のある外国人教員が英語で専門教育を教えることは、キャンパスを活性化し、日本人学生の国際化を図る上でも非常に重要です。さらに、教育研究活動において英語が世界共通語となっていることは、今や動かしがたい事実であり、英語での学位取得プログラムの提供は日本の高等教育の世界的地位を維持・向上させるために必須のことであります。留学生の獲得で大きくリードする欧米先進諸国の有力大学は、日本の大学と比較し、潤沢な資金を学生の教育に投じている現実があります。 日本の大学の国際的プレゼンスを高めるためにも、今回の施策は必要不可欠と考えます。留学生に向けた奨学金や宿舎への助成措置を欠いた「グローバル30」は、決して十分な規模の事業ではありませんが、採択大学は、国民からの負託に応えるべく、日本の高等教育の国際的プレゼンス向上のため、大学独自の資金も活用するなど最善の努力をする覚悟でおります。 さらに、学術研究の側面からも、日本の大学においては、今後さらに進展するグローバル化の中で我が国がこれまでに見せてきたような「強み」を引き続き発揮し、世界の様々な国々との競争に勝利しつつ、科学技術の一層の発展を達成することによって、国力の着実な増進につなげていくことが重要です。そのためにも、速やかに大学の国際化推進について対策を講じるとともに、時宜を失することのないよう直ちに世界から優秀な留学生を獲得するための取り組みに着手し、成果を挙げていくことが求められています。 「『架け橋』としての日本」など、総理所信表明演説に掲げられた高邁な理念を達成するためには、日本の国際戦略の一環として「グローバル30」などの大学国際化政策を改めて確立し、積極的に促進する必要があると信じます。政府におかれては、総理所信表明演説に示される大局的な見地に立ち、行政刷新会議事業仕分けの「グローバル30」予算「縮減」の判断を見直し、積極的な留学生受け入れと日本の大学国際化への具体的戦略を打ち出されることを、強く望みます。 以 上 |
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