アーカイブ 矢口高雄展 夢を見て 描き続けて

《2期》



ごあいさつ / 会期 / 矢口高雄プロフィール / 矢口高雄略年譜

※1期「ごあいさつ・会期・矢口高雄プロフィール・矢口高雄略年譜」と同じ




《2期》ギャラリーコーナー

W-01
クマゲラの森

W-02
正午(ひる)さがり

W-03
香茸(こうたけ)採ったゾ!!

W-04
螢雪時代 ボクの中学生日記

講談社コミックス(ハードカバー版)5巻カバー 1993年10月23日

W-05
幻の怪蛇バチヘビ
第2次探索隊 ロマンを求めて

週刊少年マガジン(講談社)1973年7月1日(28)号

W-06
ニッポン博物誌
第7話 カジカの夏

週刊少年サンデー(小学館)1978年8月2 日(35)号

W-07
野性伝説 羆風(ひぐまかぜ) 第9章

ビッグゴールド(小学館)1997年5月号掲載

W-08
野性伝説 爪王 第6章

ビッグゴールド(小学館)1996年1月号掲載




◆壁ケース展示



《2期》独創の時代

 1973年、それは矢口の作家性を決定づける代表作が誕生した年でした。『週刊少年マガジン』に掲載された「幻の怪蛇 バチヘビ」は、少年時代に遭遇した不気味な蛇に着想を得て描かれたもので、少年誌での手応えを今ひとつ得られないでいた当時、腕試しとして制作した意欲作。その反響は大きなもので、矢口のもとにはかつてない量のファンレターが届き、日本全国で巻き起こる一大ツチノコブームを牽引しました。同年連載が始まった「釣りキチ三平」は、明朗快活な主人公が強敵(=ここでは獲物となる魚)に挑戦し、ライバルとともに成長していくという少年マンガらしい爽快なストーリーを主軸に、釣りの面白さを実践的な知識も含めて描き、子供たちに釣りブームをもたらします。両作品に共通するのは、子供時代の思い出やふるさとの記憶を存分に取り入れたこと、そして雄大な自然や野性への畏敬のまなざしでした。デビュー前後から取り組んでいたテーマが、ここで社会的な影響を与える作品として大きく花開いたのです。

 70年代はマンガの読者人口が増え、また少年誌を読む年齢層にも広がりが出た時期。それにより、少年マンガはこれまで扱われてこなかったジャンルの開拓や、社会問題への言及が試みられるようになり、まさに群雄割拠と呼ぶべき時代を迎えていました。その中で、矢口が「自分にしか描けないもの」を探究したのも自然なことでしょう。かくして、独創性を発揮した彼は、以後「自然と人間」「ふるさと」「生きもの」といったテーマを深めていくのです。

 2期では、「釣りバカたち」や「釣りキチ三平」をはじめとした釣りマンガ、東北で生きる狩猟集団・マタギが登場する作品群、動物たちの生きざまを真摯に、そしてダイナミックに描いた「ニッポン博物誌」や「野性伝説」など、矢口独自の作家性があらわれた作品をご紹介します。物語とキャラクターに説得力を持たせる緻密な筆致と、圧倒的な自然描写をご堪能下さい。


No.01
釣りバカたち

 スポーツとしてレジャーとして多くのマニアを虜にしている「釣り」は特異な魅力を秘めているという。とりわけグググっと竿に伝わる魚信と、躍乱する銀鱗(ぎんりん)をたしかに手にするまでのわずかなプロセスが最高とされている。いったん大物を釣ったが最後、釣りのことがもう頭から離れない。そんな「釣りバカ」たちが登場し、一話完結型で、釣りを通して様々な人間ドラマが描かれている。長年描きたいテーマとして矢口の胸中にあった「釣り」をシリーズとして初めて連載したオリジナルの作品。


《作品情報》
釣りバカたち
連載期間:週刊漫画アクション(双葉社)1972年3月2日号〜1983年7月7日号

《展示品》
釣りバカたち チライ・アパッポ 
原画初出:
アクションデラックス特別増刊(双葉社)1979年1月27日号





No.02
バスボーイQ
《あらすじ》

 ブラックバス釣りの天才少年・坂本永久ことQちゃんは、バス釣りの先生であり、アメリカのバス釣りチャンピオンのビルと、「日本記録更新サイズのバスを陸で釣り上げることができたら、ボートをプレゼントする」という約束をした。ビルはQちゃんをアメリカのバスプロの大会でチャンピオンにすることが目標だと言うが、そんなことを尻目に、Qちゃんは楽しそうに釣りをしている。ある日、Qちゃんは不思議な形をしたおとりを手に入れ、記録更新サイズのバスを狙う。


《作品情報》
バスボーイQ
連載期間:CRAZY BASS(双葉社)
2000年8月10日号~2002年3月22日増刊号

《展示品》
バスボーイQ 第8話 10ポンドバスクラブ
原画初出:
CRAZY BASS Vol.8(双葉社)
2001年10月26日号





No.03
激濤(げきとう) MAGNITUDE(マグニチュード)7.7

 1983年に起きた日本海中部地震と津波から得られた教訓を残すべく描かれた作品。日本海側では津波は起きないとされていた定説をひっくり返す大災害で、大津波により100名以上の尊い命が失われた。
その中には釣り人もいた。自らも釣りを愛する矢口が、被害者の綿密な調査を通し、自然の厳しさと生命の尊さを真正面から描き出した。


《作品情報》
激濤 MAGNITUDE7.7
協力:秋田県つり連合会・川村浩
連載期間:ビッグコミック(小学館)1989年10月25日号~1990年12月23日号

《展示品》
激濤 MAGNITUDE7.7 FILE2 真昼の恐怖
原画初出:
ビッグコミック(小学館)
1989年11月25日号





No.04
幻の怪蛇バチヘビ
《あらすじ》

 それは矢口プロに届いた一通の手紙から始まった。差出人は矢口の地元の同級生・正治。速達で届いた手紙は「またバチヘビがあらわれた」という内容だった。数年前に地元秋田で正治と釣りをしていた時に目撃した胴体の太い蛇のような生き物「バチヘビ」。また目撃したことをきっかけに、大規模な捕獲作戦を行うので参加して欲しいという正治の依頼を受け、矢口プロ一行は秋田へと向かった。


またの名をツチノコと称される怪蛇探索に意欲を燃やす男たちの情熱を、自らの体験をもとに描き、日本中に一大ツチノコブームを巻き起こした作品。


《作品情報》
幻の怪蛇バチヘビ
連載期間:1973 年4月15日(17)号、7月1日(28)号、8月26日(36)号、11月11日(47)号 ※不定期掲載

《展示品》
幻の怪蛇バチヘビ 第1次探索隊 幻を求めて
原画初出:
週刊少年マガジン(講談社)
1973年4月15日(17)号





No.05
ふるさと 怪蛇の騒動

 「ふるさと」は、懐かしい田舎の風景や消えゆく習慣が丁寧に描かれた、矢口にとっての故郷の情景を数多く見ることができる作品。
 「怪蛇の騒動」は、1983年に『週刊漫画アクション』で連載が始まった「ふるさと」で描かれた、バチヘビが登場するエピソードの初回である。「幻の怪蛇バチヘビ」の発表から10年を経た本作からは、重ねられた線で表現されたバチヘビの生々しい質感など技巧の進化を感じることができる。


《作品情報》
ふるさと
連載期間:週刊漫画アクション(双葉社)1983年7月14日号~1985年9月25日号

《展示品》
ふるさと 怪蛇の騒動
原画初出:週刊漫画アクション(双葉社)1983年9月8日号





No.06
はばたけ!太郎丸
《あらすじ》

 主人公は鷹匠を目指す少年・源太郎。鷹匠(たかじょう)である祖父と共に捕獲した鷹を育てるが、その鷹は人間に抵抗し、餌を拒んで衰弱していく。それを見ていられなくなった源太郎は、鷹を「太郎丸」と名付け自然に帰したが、自由の身となったはずの太郎丸が、ある日、源太郎の元へと舞い戻る。絆を感じた源太郎は、太郎丸と共に困難を乗り越え生きていくことを決意する。愛情を注ぎ、信頼することの大切さを描いた物語。


 新聞に掲載された作品。マンガ雑誌の原稿は一般的にB4サイズで制作されるが、新聞は雑誌よりも掲載サイズが小さいため、矢口の場合は専用原稿を半分に切ってB5サイズで使用しているのが原画を見るとわかる。小さい紙面でも読みやすくするため、コマ割りがシンプルに、そしてコマ数自体少なくなっているのも新聞連載ならでは。


《作品情報》
はばたけ!太郎丸
連載期間:しんぶん赤旗日曜版(日本共産党中央委員会)1975年11月2日号~76年12月26日号

《展示品》
はばたけ!太郎丸 トビラ
原画初出:
しんぶん赤旗日曜版(日本共産党中央委員会)1975年12月21日号





No.07
マタギ列伝
《あらすじ》

 「野いちご落とし」の異名をとる青年マタギ・三四郎は、多くの経験を経て鷹匠となる。三四郎はマタギ集団の中でも名うての鉄砲撃ちだが、女マタギの吹雪鬼(ふぶき)が所属している「小玉流マタギ」の考え方に衝撃を受け、今までの経験やこれからマタギと動物はどうあるべきかなど、考えを深めることとなった。鷹匠になるべく鷹と対峙して右目を失い、そのせいで鉄砲を使うことができなくなった三四郎は激しく落胆するが、親代わりだったシカリによって一筋の希望を見出す。


《作品情報》
マタギ列伝
連載期間:トップコミック(秋田書店)
1972年4月12日号~75年2月26日号

《展示品》
マタギ列伝 第一話 野いちご落とし
原画初出:
トップコミック(秋田書店)
1972年4月12日号





No.08
又鬼(マタギ)の命
《あらすじ》

 又鬼の龍(りゅう)こと龍五郎(たつごろう)に助けを求め、手負いの侍が山に逃げ込んできた。息子の龍彦が父の代わりに侍をかくまうが、追ってきた官軍に対し、最初のうちはとぼけていたものの、誘惑に負け、鉄砲と引き換えに居場所を教えてしまう。連行される侍に息子を「裏切者」と呼ばれた父は、山の掟に従い、自らの手によって息子に裁きをくだす。


 原案は、フランス作家・メリメの短編小説「マティオ・ファルコネ」。


《作品情報》
又鬼の命
掲載誌:週刊少年マガジン(講談社)
1972年11月12日(48)号

《展示品》
又鬼の命 講談社コミックス カバー
原画初出:講談社
1975年11月25日





No.09
サスガの三次
《あらすじ》

 鳥海マタギの一人だった三次は、自らの過去により、マタギを辞めることになり、住み慣れた里を離れてたどり着いた牧場で、身分を隠して居候をしていた。牧場では狼の被害が拡大しており、ある晩、三次がいる牧場にも狼の群れが近づいてきた。牧場の親方と娘の百合が鉄砲で対抗する中、三次は火を焚き、狼の群れを追い払ってしまった。ところが、茂みの中から突然飛び出してきた狼に親方が襲われてしまう。親方が自分をかばい狼に襲われたことに責任を感じた三次は2人に自らの身分を明かし、群れの王を倒すべく、鳥海マタギ特有の武器であるサスガを手にし、山へと向かった。


《展示品》
サスガの三次
週刊少年マガジン(講談社)
1973年1月14・21日(3・4)合併号





No.10
父のシロビレ
《あらすじ》

 狩りの最中、シロビレ※の暴発によってマタギの父・源次郎を亡くした源吾の下に、高利貸しの下田という男が訪ねてきた。下田は、源次郎に金を貸していたと言い、金の代わりに父の形見であるシロビレを持ち出そうとする。力ずくでシロビレを取り返した源吾だったが、借金をなかったことにするため、その鉄砲を使って弾傷の無い熊の毛皮をとってくるように命じられた。約束の期限は3年。はたして源吾は熊を無傷で仕留めることができるのか。
※マタギ言葉で「鉄砲」の意味


《展示品》
父のシロビレ
週刊少年マガジン(講談社)
1973年3月11日(12)号





No.11
マタギ
《あらすじ》

 東北地方のど真ん中を背骨状に突っ走る雄大な奥羽の山脈。その山脈の奥深くにマタギと呼ばれる狩りの集団がいる。その集団の一つ、雷レッチュウの中に「野いちご落としの三四郎」と呼ばれる若者がいた。
 ある日、別の村で村人が熊に襲われる事件が起こり、三四郎はその村で熊狩りをすることになった。決定的なチャンスが訪れないまま、季節は冬へと移り、初雪が深々と降る夜、三四郎はついに人食い熊と対峙する。


《作品情報》
マタギ
連載期間:週刊漫画アクション(双葉社)1975年5月1日号~76年3月11日号

《展示品》
マタギ トビラ
原画初出:週刊漫画アクション(双葉社)1975年5月1日号





No.12

《展示品》
マタギ トビラ
原画初出:週刊漫画アクション(双葉社)1975年6月26日号





No.13
シロベ
《あらすじ》

 熊と対峙し怪我を負った母犬・姫は、死の間際に一匹の子犬・シロベを産む。母親を失ったシロベはその後、タヌキに育てられることとなる。その頃、慎吾は姫の仇の熊・コブダワラを撃つべく、マタギの三四郎からシロビレの扱い方を教わっていた。


実の母と育ての母を大熊・コブダワラに殺され、復讐の鬼と化したマタギ犬・シロベと、飼い主である慎吾少年の物語。「シロベ」とはマタギ言葉で「風」という意味の言葉。子犬が母犬・姫のお腹にいた頃から慎吾が決めていた名前である。


《作品情報》
シロベ
連載期間:週刊少年サンデー1984年7月4日(29)号~11月14日(48)号

《展示品》
シロベ 少年サンデーコミックス 第1巻カバー
原画初出:小学館 1984年12月15日





No.14
ニッポン博物誌
《あらすじ》

 限りなく美しい日本の自然。だが、その美しさの陰には、食うものと食われるもの、栄えるものと滅びゆくものの、厳しい大自然の掟があった。
ダワラを撃つべく、マタギの三四郎からシロビレの扱い方を教わっていた。


 ムササビやネコ、キツネ、イタチなどの動物たちが、自然界のルールに従って生きる姿や、まだ人々が鉄砲を担いで山に入り、自然の恵みを受けて暮らしていた頃の様子などが緻密な描き込みによって活き活きと描かれている。山村に生まれ育ち、子どもの頃から山や川や草木、花、鳥、虫などに親しんできた矢口が描くリアルな「自然」の姿が満載の作品。


《作品情報》
ニッポン博物誌
連載期間:
週刊少年サンデー(小学館)
1977年1月29日・2月5日(5・6)合併号~80年7月13日(29)号

《展示品》
ニッポン博物誌 少年サンデーコミックス2巻カバー
原画初出:小学館 1980年9月15日





No.15
野性伝説

 動物文学の第一人者・戸川幸夫(とがわゆきお)の原作を、矢口がリアルな手法で鮮烈に描破(びょうは)し、大自然における動物と人間の存在を浮き彫りにした作品。野性の角鷹(くまたか)と鷹匠の物語である「爪王」、実際に北海道で起こった史上最悪の熊害を元にした「羆風(ひぐまかぜ)」、東京から山形まで帰ってきた高安犬(こうやすいぬ)の物語の「北へ帰る」、マタギとカモシカの駆け引きを描いた「飴色角と三本指」の4つのストーリーで構成されている。


《作品情報》
野性伝説
連載期間:ビッグゴールド(小学館)
1995年8月号~1998年10月号

《展示品》
野性伝説 ビッグゴールドコミックス3巻 カバー
原画初出:小学館 1997年3月1日





No.16

《展示品》
野性伝説 爪王 講談社漫画文庫 上 カバー
原画初出:講談社 2003年10月10日








釣りマンガの金字塔 釣りキチ三平

1期解説と同じ



No.17,18
1期No.17,18と同じ



No.19

《展示品》
釣りキチ三平 講談社コミックス3巻カバー
原画初出:講談社 1974年5月15日







No.20~24
1期No.20~24と同じ



No.25

《展示品》
釣りキチ三平 講談社コミックス38巻 カバー
人物部分/背景部分
原画初出:講談社 1979年11月20日


釣りキチ三平
講談社コミック ス38巻





《人物部分》

《背景部分》




No.26~27
1期No.26~27と同じ



No.28
釣りキチ三平 最終章 釣りキチ同盟
《あらすじ》

 魚紳が三平とのこれまでを振り返 るシーンで始まる最終章。祖父・一平との別れ、それにより茫然自失となった三平が自分を取り戻すまでを丁寧に描く。
 物語は、全国の釣り人が三平を中心に一団となり、釣りと、自然を守るため活動する「釣りキチ同盟」を結成し大団円を迎えた。


《展示品》
釣りキチ三平 最終章 釣りキチ同盟
週刊少年マガジン(講談社)
1983年1月1・5日(1・2)合併号〜4月27日(19)号
原画初出:
週刊少年マガジン(講談社)
1983年4月20日(18)号







No.29
1期No.30と同じ



No.30

《展示品》
釣りキチ三平 平成版
講談社コミックスDX11巻カバー
原画初出:講談社 2010年4月16日







No.31,32
1期No.31,32と同じ




◆中央・覗き込みケース展示




T-1~Tー3
1期T-1~Tー3と同じ



T-4
バスボーイQ
第2話 度肝を抜く自然流
CRAZY BASS Vol.2(双葉社)2000年10月9日号
釣れづれの四季 画文帖(講談社)1980年11月5日




◆映像展示

1期「◆映像展示」と同じ




◆カウンター横・ケース展示

1期「◆カウンター横・ケース展示」と同じ